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第十一話

 「それで、ケガの方は大丈夫なのか?」

 「大したケガはありませんね。

  レフィーユさんは、テスト戻っていいですよ。」

 

 「いや、私はここに残って、彼が気が付くまで介抱しておく事にしよう。」

 「ええっ、それじゃあテストの方はどうするのですか!?」

 「その辺はご心配するな、一人で受け直す事にするさ。」

 

 レフィーユの意外な返答に困惑しているのか、保険医は困った表情であたふたとしているのが寝たフリをしている自分にも感じ取れる。


 「それじゃあ、各位にもそう伝えておいてくれ。」

 そう言って、半ば強引にも感じ取れるが保険医を追い出して。


 「もう行ったぞ。」

 とレフィーユは、ベットで寝たフリをした自分の横に腰掛けて言った。 


 二人は保健室にいる。


 どうしてこうなったかというと、あの100M走だ。

 確かに50Mまで併走が続いていた。

 

 だが周りは二人して、走る事が『とても』気に入らなかったのか、自分の後ろから『色んなモノ』が飛んで来た。


 勝負の結果は…言うまでもない。


 「まあ、そう懸念するな。

 こうでもしないとお前と二人きりで話が出来ないだろう?」


 レフィーユにとって、この事態は計算されていた事だったようだ。


 「お前に話しかけようとすると、何故か邪魔が入るのでな。

 それでお前に勝負を持ちかけたら、必ず邪魔が入ると思ったのさ。」


 「ですけど、そのたびに学園内における東方術、西方術の全てを目の当たりするのは、割りに合いませんよ。」


 「ふっ、そうだな。

 だが、お前の知りたがってた情報を手に入れる事が出来たのでな。

 一刻も早く知らせたかったのさ。」 


 「情報?」


 「埠頭での被害者の組織の名前が判明したのさ。」


 「ああ、アレですか、どんな名前でした?」

 

 「『華中会』だ。名前くらい聞いた事あるだろう?」

 

 「『華中会』…って、自分達の国の2つ隣くらいの国で、最も有名なマフィアじゃないですか、そんな大物だったんですか?」

 

 「さすがに驚いたようだな。

 さらにその大物組織の組員が、夜のこの街の繁華街で、うろついているのがよく目撃されている。どうも、『お前目当て』でな。」


 『何か思い当たる節はあるか?』と彼女は聞いてきたので、多分あの事だろうと理解したので、レフィーユに手下とまだ生きていたボスの事を説明しながら聞いた。


 「ですけど、どうして『自分が目当て』って、分かったんです?」 


 「ああ、それはな。

 実際、その組員に絡まれたと学園の生徒の報告があったのさ。

 やってくるなり『お前は漆黒の魔道士か?』と、聞いたそうだ。」


 「ヤケに無粋な組員ですね。

 それで『はい』なんて答えるヤツはいないでしょう?」


 「そうだな。

 だが答える前に、別の方から他の組員がやってきてな。

 『バカ、こんな学生服着た漆黒の魔道士がいるかっ!?』とその組員を小突いて、『もっと丁重にお迎えする事が出来ないのか?』と言いながら街の中へと消えていったそうだ。」

 

 「あくまで自分が目当ての様ですね。ですがどうして丁重にお迎えしなければならないのか、早く調べてみる価値はありそうですね。」

 

 「お前はまだケガが完治してないのだろう。そんなに急ぐ事はないだろう?」


 「普段ならそうしたいのですけど、貴女に気に入られようとする人がいますからね。

 先走って、一斉検挙なんかされたらシャレにならないでしょう?」


 「…なるほど。」


 レフィーユは『すまないな』と言って立ち上がり、何やら引き出しを開けてごそごそと何かを探し出す。


 「何やってるんですか?」


 「餞別代りに、お前の包帯を巻き直してやろうと思ったのさ。」


 「自分でやりますから、そんな事しなくていいですよ。」


 「手の届かない位置の患部は、お前の能力を使ってでも包帯を巻くつもりか?

 タダでさえ、話の中にお前に気を使って、お前の事を『あだ名』で呼んでないのに、こんな所でお前の能力を使って、誰かに目撃されたら一貫の終わりだぞ?」


 レフィーユの言い分も最もだが、流石に気恥ずかしかった。



 …一方、その頃。


 まったくレフィーユさんも、困ったモノだ。


 今、この私は、学園内で目当ての人物を探していた。


 当然、スポーツテストの内容を彼女に報告して、アイツより優れていると改めて分からせる為だ。

 この私より、劣っているアイツを選ぶ事自体あってはならないのだ。


 絶対勝てる自信と共に意気揚々と探していると、どこからか聞きなれた声がした。


 「何を、いまさら…」


 おお、あの燐とした声、まさしく彼女の声だ。


 だが誰と話しているのだろう?


 ドアにカギも掛かっていて、覗こうにもカーテンも閉まっていてよく見えない。


 「ですけど、照れるモノは照れますよ。」


 またアイツか、どうしてアイツばかりっっ!!


 「遠慮するな。私がしてやる、早く脱げ。」


 頭が真っ白になる。


 「いたっ。」


 「ああ、すまない。

 慣れてなくてな。優しくした方がいいか?」


 「いえ、キツい方がいいです…」


 「…わかった。」


 見えない、お前、レフィーユさんに何させてるっ!!!


 何とかドアの向こうを見ようと足掻くとポケットからペンが落ちた。


 「んっ、誰か来るようだ。早く服を…。」

 「じゃあ貴女も、ベットから降りて…。」


 ベットからだとっっっ!!!


 もうそんな仲だったのか…。


 認めん、認めんぞぉぉぉぉ。


 そう心で叫びながら彼は勝手に敗北して、走り去った。


 その男の名は…ソウジ・ジングウジという。


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