第四十三話 修学旅行?
2017/04/11 一部修正
転移が完了し、眼前には見慣れた家具がある。そう、俺の自室に転移したのだ。
「皆。俺が転移を使えるという事は内密に。あ、それと俺は貴族というより冒険者に近いから敬語とかは勘弁してくれ。堅苦しいのは嫌いだ」
俺がそういうと、皆が力強くうなずいてくれた。
「ありがとう。では、これからしばらく君たちに滞在してもらうところに案内しよう」
俺はそういうと全員を先導して家を出る。そう、こんな時の為。…というのは少し語弊があるかもしれないが、この街に来てくれた客人をもてなすための旅館を建てておいたのだ。タツネさんに無理を言って、日本の旅館風の宿にしてもらった。
宿に着くと、ペアを作ってもらい、2人1組のペアに1室を宛がった。
そんな対応だったが、この状況下では破格の対応だったようで皆に驚かれていた。そして、俺が驚いたことは合計で22人いた冒険者のうち、女性がなんと8人もいたという事だ。この世界の常識から言うと、女性が荒事をやっている事に何の違和感もないそうだ。
「というわけで、これから会議を始める。すまないが全員自己紹介をしてくれ。―――あぁ、軽くでいいから」
俺がそういうと、全員が自己紹介を始めてくれた。まずは5人パーティの『戦乙女の宴楽』。パーティ名の通り女性のみのパーティなのだが、如何せんメンバー全員の見た目が良すぎて目を奪われる。パーティメンバー全員が双剣使いであり、その素早さを生かした戦い方が得意なパーティ。次のパーティは『暁の狙撃手』。6人のパーティで、全員が何と銃使い。―――この世界にも銃があるのかと驚いていたら、なんでも魔法杖の変化形のようなもので、形はスナイパーライフルと一緒なのだが、弾を込める場所は無く、代わりに火属性魔法や風属性魔法などを込めて撃つのだそうだ。普通に魔法を使うより敵を狙いやすく、魔法杖の効果で威力が上がる。という何とも良い武器だと思うが、消費魔力量が多いらしく、並みの魔力量の冒険者には使えないらしい。―――っと、説明が長くなってしまったが、要するに遠距離攻撃専門のパーティで、大規模討伐の際には楯役のパーティと組むそうだ。次のパーティは『生命の守り人』という7人パーティ。名前から予想はつくかもしれないが、楯役達の集まりだ。全員が大きな楯と大剣を装備し、重そうな鎧に身を包んでいる。最後のパーティは4人パーティの『英知ある者』。魔法使い4人のパーティで、それぞれが各属性魔法を極めており、各属性の超級魔法を極めている。
っと、パーティ情報はこれで終わりなのだが、俺はここでも1つ驚いたことが有った。
「―――え?全員がSランク冒険者じゃないのか?」
そうなのだ。Sランクのパーティだからと言って全員がSランクなわけではなく、Sランク冒険者1名以上と、他のパーティメンバー全員がAランク。という条件を満たしたパーティのみSランクパーティとして認められるらしい。この22名の冒険者のうち、Sランク冒険者なのは5名らしい。Sランク冒険者が2人いるパーティは『戦乙女の宴楽』だ。
「それにしてもヒロキ。お前すげぇな!」
全員の自己紹介が終わると、一人の冒険者が声をかけてきた。謁見の間で王に声をかけた冒険者だ。名前はザックと言い、彼はパーティ『生命の守り人』の一員であり、又『狂犬』という2つ名を持つSランク冒険者でもある。
「何がだ?」
「いやいや、何がってアワリティアを倒したんだろ?すげぇよ!」
ザックがそういうと全員が俺を尊敬の眼で俺を見て来る。こういうのは何かむずむずする。
「いや、周りの皆の助けがあったから出来たんだよ」
俺がそういうと、皆が口笛を吹いた。
「ヒューウ。いいこと言うじゃねぇか」
そんな雑談を交えながら親睦を深めていると、スズハが飯が出来たことを知らせに来てくれた。そして、そのスズハに、冒険者の男性陣の眼は釘付けになっているのを見て、俺と女性陣は苦笑する。
スズハが部屋から出た後、俺は冒険者から質問される。
「な、なぁヒロキ。今の人お前の彼女か何かか?」
その事言葉で、女性陣がピリピリとした殺気を放ちながら俺の方をじーっと見始める。…うぅ、胃に穴が開きそうだ。
「い、いや、そんなんじゃないよ」
そういうと、女性陣からの殺気のようなものがなくなった。そして男子陣はガッツポーズをした。
俺たちは全員をなだめながら食堂へと向かう。なんだか修学旅行みたいだ。
「では、頂きます」
「「「「「頂きます!」」」」」
俺の掛け声で全員が食事を始める。メニューは刺身等の海産物を始め、猪のステーキなど陸産物もある。
冒険者全員が飯にがっつく。俺は苦笑しながら、凛にお酌をしてもらって熱燗を煽る。以外にもこの中世ヨーロッパのような世界の冒険者でも全員が箸を使って調理を食べていた。
旅館の従業員のような役回りをスズハ、凛、ルクスリアに頼んでいたのだが、いつの間にかミリーナも加わっていた。…いや、君は一国の王女でしょうが。
冒険者の男性陣は見目麗しいスズハと凛。そしてルクスリア、ミリーナの4名をナンパするが、全員「私は心に決めた男性が居ますので」と言って、ちらりとこちらを見る。という事をやらかしたおかげで男性陣から射抜かれるような視線が俺に集まる。…いや、ルクス。君は違うだろ。
晩飯の後、俺たちは風呂へと赴いた。旅館と言えばやっぱり温泉でしょ。という俺の提案から、DPを使用し、温泉を湧かせた。
酒が入っているからか、女性陣の行動が激しくなり、俺が女風呂に引きずり込まれかけたが、何とか逃げ、男風呂に入った。
温泉はもちろん露天だ。俺は風呂につかりながら空を見上げる。日本の都会とは全くかけ離れた綺麗な夜空。人工的な光が無いこの世界ならではの夜空である。
「―――ヒロキ。ありがとうな」
俺が空を見上げていたら、不意に横から声をかけられる。彼は『暁の狙撃手』のリーダーでパニッシュという。
「何がだ?」
「いや、キング種との戦いとなれば、SランクAランクの冒険者達であろうと死ぬ危険性が大きい。そんな仕事の前にこんな楽しい宴会を開いてくれて、最後の晩餐としては丁度いい」
パニッシュはなんとも弱気な事を言って来る。
「おいおい、死ぬ気なのか?」
「いや、そういうつもりは毛頭ない。だがな、今回の敵はキング種2体だ。場合によっちゃ…最悪の事もあり得る。だから、ありがとなって言っときたかったんだ」
パニッシュはそういうとニヒルにほほ笑む。
「あぁ、俺がいる限り、お前らは死なせない。約束する」
俺がそう言い放ったら、女風呂の方から黄色い歓声が聞こえてきた。…聞かれていたようだ。少し恥ずかしい。
「あー、俺もカッコよく決めたつもりなんだけどな~」
パニッシュはそういうと、俺に湯をかけてきた。
「フフフ。おい!みんな!ヒロキに復讐だ!たらし野郎に制裁を!!!」
パニッシュがそう叫ぶと、周りの冒険者が全員俺に湯をかけてきた。
「ぎゃーーーーー!!!」
その日、フォルフ村には俺の悲鳴が響き渡った。
―――だが、その裏で俺の悲鳴とは別の叫び声が響き渡るのだが、この時の俺は知る由もなかった。
ホンマに修学旅行みたいですね~(笑)
次話はバトル回です。乞うご期待。




