第三十一話 己の正義
今話を読む前に
今回のお話で出て来るスキル『奪』ですが、これは相手のスキルをコピーして一時的に行使できるようにするスキルですので、このスキルを使われた相手のスキルがなくなるわけではございません。
それでは本編へ。
修正:アワリティアの名前変更。
「ハァッ、ハァッ。終わった…のか」
俺は今度こそアワリティアの胴を横に薙いだ。
「―――見事だ」
頭上から声がした。俺は顔を上げ、声の主を探した。すると目の前には先ほど俺が倒したアワリティアと同じ顔の男が宙に浮いていた。
「お前は!?」
俺は動揺を隠しきれず、慌てた声で謎の男に問いかけた。
「俺はアワリティア・ラーウス。正真正銘の本物だ」
「―――身代わりか」
先ほど倒した個体はアワリティアの分身体であったのだろう。
「そうだだが、ただの身代わりではなくそいつには俺と同じ『奪』を持たせていた個体だからな。お前のもっていたスキルは奪ったぜ」
そういうとアワリティアは火属性魔法を打ち込んできた。先ほどよりも大きな。
「お前がルクスリアの加護を受けていたとは驚きだよ。まぁ、そのお蔭で楽にお前を殺せるんだがな」
そういうとアワリティアは大きな火球を何発もとばしてきた。この火球は避けられない。そう思った俺は、火球の前に無酸素空間の壁を作った。原理は簡単だ、空気中に魔力を水素のように変換して送り込み爆発を起こす。それによって魔水素と酸素を化合させ水を作り出す。こうして無酸素空間を作り出した。火属性魔法って最強じゃね?
アワリティアは俺が何をしたのかわからないようで一瞬の動揺を見せた。だが、すぐに腰に差していた剣を抜く。黒い刀身をした美しい細剣だった。
「先ほどと言い今と言い面妖な手を使うなお前は。それとも、今の魔法はそこまで進化しているのかな?」
そういうとアワリティアは剣を振る。すると斬撃が綺麗なガラス細工のように俺の方まで飛んできた。それを俺は回避したが、俺の居た所はクレーターのように地面がえぐれていた。
「ほう、今の技も回避するか。見事だ、この黒細剣ディアボロスの斬撃を避けることが出来る人間など俺は見た事がないぞ」
そういうと今度はアワリティア自身がこちらへ飛んできた。それを俺は防ごうと両手で刀を構えるが、衝撃で吹き飛ばされる。
何とか致命傷はないが、左腕は使い物にはならなくなってしまった。左腕に激痛が走る。痛い。痛い。痛い。
その激痛に意識が吹き飛びそうになるが、その意識を何とか保たせたのは死への恐怖だった。―――ここで意識を失えば、確実に死ぬ。その恐怖が俺を現実へと引き戻した。
「ウ、ラァァァァァァアアアア!!!!」
俺は体全身をばねのように使ってアワリティアへ迫る。アワリティアも細剣を構えて俺に向き合う。
刀と細剣がぶつかり合い、火花を散らす。少しこちらが優勢だ。
「グゥ…だが、俺も負けられん!」
そういうとアワリティアの細剣が俺の刀を弾く。
「これで、終わりだ」
そういうと細剣が眼前に迫る。死ぬ。嫌だ。怖い。―――だが、細剣は俺には到達しなかった。
「ふぅ。我が間に合っていなかったら死んでいたぞ主人」
そう、ルクスリアの火属性魔法がアワリティアを襲ったのだ。
「ルクス!ありがとう。でも、どうやってここに?」
「主人の魔力を探したらここに来たんだよ。―――それとリティ。悪ふざけはここまでにしておけ」
ルクスリアはアワリティアの方を向いて言った。
「グッ…ククッ、どうしてだ姉貴。ここで人間どもに復讐できる。そのチャンスをみすみす逃すのか?」
「違う。手段を変えるだけだ」
「手段を変えてもできるものか!手段を変えれば救われるのは一部だ。だが、此処で俺が悪役になり、ヒロキを倒せば俺一人が悪役で済む。―――もう、姉貴たちが苦しむのは嫌なんだよ」
そういうとアワリティアの頬に一筋の涙が流れる。
「それに、俺は強欲だからな。全部が俺の思い通りにならねぇと気が済まねぇ」
そういうと再び俺に細剣向け、襲い掛かってきた。それを俺は防御しない。
「主人!?」
ルクスリアが助けようとするが、間に合わない。俺は死ぬ。―――普通ならば。
アワリティアの細剣は俺の身体を捉えていたが、細剣が俺の身体に到達することはなかった。
「何故だ!?」
「簡単な事だよ。俺のスキルを奪ったんなら知っているだろう?『完全支配』だよ。あれの強制支配を使って強制的にお前を俺の支配下においたんだよ。―――まぁ、魔力は今空っぽだがな」
そう、簡単な事だったのだ。さっきルクスリアとアワリティアが論争を繰り広げている間に俺は『完全支配』を使用してアワリティアを支配下に置いたのだ。実力差は互角程度だったが、俺の魔力量ならぎりぎり足りた。
「嘘…だろ」
そういうとアワリティアは細剣を取り落とした。
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これもひとえに読者様のおかげです。誠にありがとうございます。




