第三話 狐耳モフモフ
目が覚めると、目の前には青空が広がっていた。そして首筋や手の甲にチクチクと草が刺さる。
「なんで外に…?あ、そうだ異世界へ行ったんだっけ」
俺はゆっくりと手をつき起き上がると、あたりを見渡した。見渡す限りの草原、だが遠くの方に村らしき影と海が見える。
「取り敢えず、あの村みたいなとこに向かうかな」
俺は、村へ向かって歩き始めた。だが、すぐに女性の悲鳴が聞こえてきた。
「悲鳴?とにかく行ってみよう」
悲鳴の聞こえた方向へ向かって走っていくと、二体の棍棒を持った魔物に襲われてる女性を発見した。
「人っ!?でも、背に腹は代えられんね…おーい、おにぃさん、助けてぇー」
女性に見つかってしまった。そして、魔物たちにも目をつけられてしまった。
「ギャギッ」
二体のうち一体が棍棒を振り回してこちらへ向かって来る。
「―――っ!冗談じゃねぇよ!」
こちらへ迫って来る魔物を避けようとして俺は飛んだ、そして身体能力強化のスキルのせいか、2m近くも飛び上がれた。
そして、俺がどこへ消えたのかと戸惑っている魔物の脳天めがけて着地した。
「グギャ!?」
情けない断末魔の声をあげながら、魔物は絶命した。
「そんな、アホな…」
女性は目を丸くして驚きの声を漏らした。
「だよなぁ、マリ○かよ…まぁいい、これで武器ゲットだ」
俺が棍棒を拾い上げると同時に、残ったもう一体の魔物は叫び声をあげながらこちらへ向かって走ってきた。
「ギギッ!ギャッ!」
やはり、この魔物たちは知能はあまり高くないらしい。仲間を殺された劇場に任せて襲って来るなんて、バカのやる事だ。
俺は、冷静に魔物の振るう棍棒をよけ、俺の持っている棍棒で魔物の頭を思いっきりたたいた。
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「おにぃさんありがとうなぁ~」
戦闘が終わった俺に向かって、女性は走り寄ってきた。
「狐の耳!?」
女性が近寄って来ると、女性の頭に狐の耳が生えていることに気付く。どうやら狐の尻尾も生えている。
「なんや、おにぃさん狐の獣人見たことなかったん?というかその反応やったら獣人自体見た事なかったみたいやねぇ」
女性は珍しいものを見るように言ってきた。
「あ、あぁ初めてなんだ。というか、最初に背に腹は代えられないって言ってたけど、どういう事?」
異世界にもかかわらず言葉が通じることに喜びながら、木になっていた疑問をぶつける。
「えぇ、おにぃさんなんも知らんのやねぇ。人族は獣人の事を汚らわしいゆうて嫌っとるんよ。そやからおにぃさんも助けてくれへん思うてたのに、人族にもええ人はおるんやねぇ」
女性は感動したように、俺に向かって答えてくれた。
なるほど、この世界の獣人は迫害されている身分という事なのか。
「納得がいかないな…こんな綺麗な人まで嫌っているのか」
俺が何気なくつぶやいたら、女性の顔が一気に赤くなった。
「い、嫌やわぁ。き、綺麗やなんて、照れてまうやないの」
照れたようにうつむきながら、女性は言った。
「そ、それにしても、自己紹介がまだやったね、うちの名前はスズハ。おにぃさんの名前は?」
「あぁ、俺の名前はヒロキだ。スズハさんよろしく」
互いに自己紹介をすますと、スズハさんは不思議そうに尋ねてきた。
「それにしてもお兄さん、どこからきはったん?ここら辺には人の街無いのに」
きた、俺が最も恐れていた質問だ。
「え、えっと遠くの大陸から旅をして来たんだよ」
よし、とにかく乗り越えれたかな?
「あぁ、そうやったん。ほんならおにぃさんのいはったところには獣人がおらんかったんやねぇ」
「あ、あぁ、そうなんだよ、だから見たことなくて」
「でも、ホンマにありがとうね。おにぃさんがこんかったら私ゴブリンに食い殺されてたわぁ」
よくもまぁそんな恐ろしい事を能天気に言えるものだ。
「御礼しなあかんねぇ。そや、おにぃさん今晩泊るところあらはる?ないんやったらうちの村きてぇな。おにぃさんぐらい強いお人やったら大歓迎やわ」
スズハさんは嬉しそうにそういった。
「あ、あと一つ、お願いしたいことが有るんですが…いいですか?」
「ええよええよ、私にできる事やったら何でも言うてぇ」
俺はためらいながらもこういった。
「じゃあ…その狐耳と尻尾モフモフさせてください!」
俺のセリフを聞いた後、スズハさんはしばらく固まった後、ようやくその意味を理解し、顔を赤くさせていった。
「えっ、えぇよ」
心なしか声が上ずっていたが、許可が貰えたからまぁいい、モフらせてもらおう。
モフモフモフモフモフモフモフモフ
スズハさんの顔が赤すぎて心配になってきたからモフモフタイムは終了だ。
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首を長くしてお待ちいただけると幸いです。