第二十二話 技術進歩
今回はメルタスが驚きまくる回です。
交渉の後、俺たちはメルタスと共に俺の家の食堂へ向かった。
「ヒロキさん。一つお聞きしたいことが有るのですが良いですかな?」
「あぁ、何でも聞いてくれ。それに、ヒロキで良い」
メルタスと俺は、スズハが夕飯を作っている間暇なので、これからについての話をすることにした。
「それでは、ヒロキ。貴方が言っていた策なのですが、少しお聞かせ願えますかな?」
まぁ、それを聞くだろうな。
「あぁ、まずは上下水道の完備をしようと思っている」
「上下水道?」
メルタスは不思議そうに聞いてくる。あぁ、そうか。この世界には上水と下水の概念が無いのか。
「上水っていうのが、飲み水や水浴びに使う用。まぁ、生活用だな。下水っていうのは、まぁ簡単に言えば排泄物の処理だ」
「なるほど、その両方をこの村で普及させると。ですが、どうやって?」
それを聞き、俺はニヤリと笑う。この質問を待っていたのだよ。
「メルタス。ついてこい」
俺はメルタスを家の奥へ案内する。
「こ、これは?」
メルタスの目の前に広がるのは、俺たちの世界で言う洗面所だ。=迷宮作成=のスキルで、DPを使用すれば自分の考えた物が取得できるということに気付いた俺は洗面台などを取り寄せたのだ。
「これはな、洗面台っていうんだ。ここをひねるときれいな水が出て来る」
試しに俺は蛇口をひねる。すると蛇口からはきれいな水が流れてきた。
「これは!?」
「これを直接飲むこともできるぞ。もちろん、腹を壊す心配はない」
俺が試しに飲んでみる、それを見たメルタスも恐る恐る水を口にする。
「これはすごい」
しっかりとかみしめるように言葉を発する。この上水がもたらす経済効果なども考えているのだろう。
「それに、こっちに来てくれ」
俺はトイレへ案内する。洋式だ。
「これに座って用を足すんだ。そして終わった後はここを押すと流せる」
俺はメルタスにトイレで用を足す方法を説明した。
「これは…こんな技術がこの村では普通なのですか!?」
「いや、今は俺の家だけだ。だが、言ったろ?完備するって」
それを言うとメルタスは目を輝かせた。
「すごいですな!これほどの技術があれば、この村が国になるのも時間の問題ですぞ!」
だろうな。まぁ、俺がこの世界に来た目的を果たすためにも、文化を発展させよう。
「ヒロキ~、ご飯出来たで!」
食堂の方からスズハの声が聞こえてくる。
「では、行こうか」
食堂へ着くと、すでに牙刃、狼鬼、スズハ、ルクスリアの四名が食卓についていた。
「皆、この方はオルトゥス神聖国の使節だ。一応自己紹介をしてくれ」
「私は狼鬼と申します。この村の騎士団の育成隊長をさせて頂いております」
「俺は牙刃だ。騎士団長をしている」
「私はスズハです。村長の秘書をさしてもろてます」
「ルクスリア・ルブルムだ。今は村長に仕えている」
「はい?」
メルタスが驚きの声をあげる。そして首がギギギとロボットのようにこちらを向き、口から震えるような声が漏れる。
「ひ、ヒロキ?も、も、もしかしてこのおきゃたわ」
滑舌なんてあったもんじゃないな。
「あぁ、鮮血の朱だったっけか?まぁ、今は俺の臣下?だ」
俺はそういうと、食卓に着く。
「か、簡単に言うなーっ!!」
さて、メルタスに納得してもらったところで、夕飯だ。DPの交換を悪よ…もとい、有効活用して、醬油や味噌などの調味料を手に入れたので楽しみだ。献立は、油揚げとわかめ、それに豆腐が入った味噌汁に刺身という品数は少ないが、完璧な和食だ。
「頂きます!」
俺は刺身に醤油をつけて口に運ぶ。旨い!醤油が有るかないかでこんなに変わるのか。周りのメンバーもすごくおいしそうに食べている。ルクスリアなんて恍惚の表情を浮かべている。
「旨っっっ!ヒロキ!この黒い水につけたら刺身がメッチャ旨くなったぞ」
牙刃が驚きながら俺に聞いてくる。こんなに皆に喜んでもらえたなら、大満足だ。
「その醤油と味噌汁に入っている白いのは、豆から出来ているんだぜ?信じられないよな」
俺がそういうとその場にいる四人がすごく驚いていた。
「本当にか!?」「信じられんな」「ホンマに!?」「本当か?」
「あぁ、そういえばその味噌汁を作る時に入れた味噌も豆から出来てるんだよ」
「こんなうまいものを作れるなんて…主人に仕えて良かったぞ!」
ルクスリアは、刺身を頬張りながらそう言った。まったく、現金な奴だ。
皆で和食を頬張りながら夕食会は終わった。
「そういえばなのですが長。瑠璃に役職を与えなくてもよろしいのですか?」
食後、皆で茶をすすっていたら狼鬼が俺に問いてきた。
「そうだよな。でも、騎士団長は牙刃だし、俺の護衛はルクス。どんな役職にしようか」
俺が悩んでいると、牙刃が何かひらめいたというように手を叩き、俺に言った。
「それなら自警団の隊長はどうだ?村の周辺を警備する騎士団と、村の中を警備する自警団の二つに騎士団を分けるんだよ。今騎士団の騎士は100人ぐらいいるからな。半分にすりゃ丁度いい。多すぎてもあれだしな」
ナイスアイデア。そうしよう。
こうして皆と談笑しながら、夜は更けていく。




