第十九話 強敵
今回の話は俺にしては長めです(苦笑)
読みずらいかもしれませんが、ご了承をお願いします。
村の門をくぐり、俺たちはオルトゥス神聖国軍へと向かって進軍する。
先頭は俺、牙刃、瑠璃。ルクスリアには後方で撃ち漏らした敵が村へと行かないか見張ってもらっている。
そして村の護衛はルクスリアが召喚した眷属である上級悪魔たちに任せている。眷属と言っても元のルクスリアが強いので、一体で牙刃に匹敵するほどの攻撃力はもっている。
数分進軍すると、脳内にルクスリアの声が響く。これは、俺が前もって手に入れたスキル≪念話≫だ。設定で、決まった相手とは相手からも念話が届くようにしている。
『主人。もうそろそろ敵の軍とぶつかる。気を付けてくれ』
「あぁ、有り難うルクス」
俺は言葉を返し、身を引き締める。前の襲来とは比べ物にならない数だ。敵の中に俺より強いやつがいないとも限らない。ルクスリアに事前に聞いたところ、オルトゥス神聖国は魔術に力を入れているらしく、物理攻撃が聞かない可能性があると聞いたので―――これも例によってスキルを手に入れたのだが、≪付加魔法≫というスキルを使って、騎士団の武器と防具全部に付加魔法をかけた。
それによってうちの騎士団は魔法は効かず、逆に相手の魔法結界は物理攻撃で破壊するという何ともまぁチートな軍団になったのだ。
そしてルクスリアの忠告通り、しばらくするとオルトゥス神聖国の軍隊が見えた。それとほぼ同時に、一人の白銀の鎧に身を包んだ騎士が短気で俺の所へと向かってきた。
「我らは偉大なるオルトゥス神聖国の神聖騎士である。先に偵察として派遣した神聖騎士副団長がお前らの手により惨殺されたので、神聖騎士団長御自ら出陣された。お前らに勝ち目はない。今降伏するのなら命だけは助けてやる」
「だから、その副団長様にも言ったんだがよ、お前らの奴隷になることなど望まないし、お前らの下に就くぐらいなら俺ら全員は自害する―――まぁ、俺一人でもお前ら全員を根絶やしにすることなど余裕だがな」
神聖騎士の俺らを下に見た発言に対して、俺は挑発で返したのだが、こいつも見事に乗ってくれた。
「なっ!我等を愚弄するか!」
男は馬から飛び降り、腰に差した剣を抜いた。
「剣を抜け!一騎打ちだ」
オルトゥス神聖国にはバカしかいないようだ。
「―――まて、単細胞め。お前は相手の力量を図る事も出来んのか」
「も、申し訳ありません団長殿」
男が剣を抜き、俺に宣言をしたところで後ろから一人の騎士が歩いてきて、男のもつ剣を地面に叩き落とした。
騎士は、単細胞を馬に乗せ後ろへ帰るように促した後、俺に謝った。
「すまんかったな。うちの単細胞が。日頃から差別意識と、他社を見下す考えはやめるように言ってあるのだが―――けれども、最初の方に行っていたことは本当だ。私たちは殺された副団長の敵討ち―――まぁ、復讐をしに来たんだよ」
そう言って、わきに差した細剣を抜く。
「まぁ、そうなるわな」
俺もわきに差した刀に手をかける。
「先ほどうちの単細胞が言っていた決闘は俺が引き継ぐ。ルールは簡単だ―――どちらかが死ぬまで」
そこまで言うと、騎士は自慢のレイピアを構え、駆けた。
コンマ一秒にも満たないほどの時間で俺の前まで接近し、自分の右手の中に納まる細剣を振るう。その姿はまるで一つの美術作品のように洗練された動きだった。
この咄嗟の動きには俺も対応が遅れ、細剣が鼻先を掠める。
着々と自分ににじり寄って来る死の足音を聞きながら、俺は反撃に入る。細剣を俺に向かい振るったことにより、大きくあいた脇腹にめがけて俺は刀を抜刀―――することが出来なかった。
騎士の細剣は既に騎士のわきに収まっていた。
「―――!?」
時間を、奪われた。おぞましい悪寒が体を襲う。俺は自分の鼻をなでるが、先ほどつけられた傷がなくなっている。
その俺に気付いたか、騎士はニヤリと笑う。
「ほう、今の一瞬で見破ったか。そうだ、私は時を操るスキルを持っている。今、一秒奪わせてもらった」
―――勝てない。どんなに力の差があっても、時間を奪われる相手であるのなら勝てるわけがない。
先ほどまでの圧倒的な自信はどこかへ行き、絶望が目の前を覆う。
「なんだ?さっきまでの威勢はどうした?」
笑いながら俺に近づいてくる騎士。
やめろ、来るな。そう思うが、騎士は歩を止めない。
「どうした?そのままへたり込んだままか?」
「ヒロキさん!立ってくれ!」
絶望に覆われている俺の耳に、声が聞こえた。それは今まで共に戦おうと、俺が鼓舞した仲間の一人の獣人だった。
―――そうだ。俺はこんな奴に負けているわけにはいかない。何が剣神だ。だが、皆の期待、それを無駄にすることは許されない。
体の中に再び力が溜まる。
「…勝った」
「ん?」
俺の呟いたセリフに騎士は反応する。
「勝ったって言ってんだよ」
言うが早いか、俺は騎士に向かって抜刀して、騎士の左腕を刎ねた。
「ぐっ」
その声と共に時間が戻る。だが、再び俺は騎士の左腕を刎ねる。
「ぐぅ!あぁっ!」
時が戻る。腕を刎ねる。時が戻る。腕を刎ねる。
いくら時が戻るとはいえ、左腕を失う恐怖と激痛は残る。記憶が消えるわけではないからだ。騎士は毎回必死に防ごうとするが無駄だ。俺の方が圧倒的に早い。
数十回繰り返したところで、時は戻らなくなった。騎士が気絶したのだ。自分たちのリーダーが気絶をしたのを見て、勝てないという恐怖感が騎士たちを襲った。
「おい、お前等。回復魔法が使える奴はいないか?」
俺は神聖騎士に声をかける。神聖騎士たちは目を見開き、口を大きく開けたまま固まっている。
「なんだ?自分たちの団長を助けたくないのか?」
その俺の言葉に、神殿騎士たちは再び動き始めた。
「治療をしてもいいのか…?」
「あぁ、俺は争いたいわけじゃあなかったんでね」
俺は騎士団長の身体を担ぎ、神聖騎士団の本陣へと向かう。
「おい!ヒロキ。殺されたらどうすんだ!」
牙刃が大声で叫ぶが、その心配はない。
「大丈夫だ、もしこいつらが変な真似をしたら容赦なくこの騎士団長とやらの息の根を止めるからな」
俺はわざと神聖騎士たちにも聞こえるように大声で言った。
「ほらよ、お前らの大事な大事な団長様だぞ。そいつを回復させたら一度退け。話し合いには応じるし、もし話し合いをしようとしなければ、俺がお前ら全員を殺す。これは脅しじゃないぞ」
俺はそう言い残し、敵陣営を後にした。




