第十七話 来襲
俺が村長に就任してからまず行ったことは役職づくりだ。スズハに聞くと、この村には村長という役職以外の役目が無いらしいからだ。
まず俺はスズハを副村長に任命し、俺の秘書的な役割をしてもらう事にした。そして俺に決闘を申し込んできた牙刃はこの村を防衛する騎士団の団長をしてもらう事にする。俺には負けたけれども、強さ的には瑠璃にも負けないほどだからね。そして商人たち、まぁ商人と言っても下町の店屋さんみたいな人たちなのだが―――をまとめる役を俺が兼任することにした。
あと、牙刃を押さえていた老狼は人間たちにも一目置かれていたほどの剣の達人らしいので、騎士団の育成隊長という役目を任せた。あ、ちなみに名前は狼鬼だそうだ。
そういう事で、俺、スズハ、牙刃、狼鬼を合わせた四人がこの村―――フォルフ村のリーダー的立ち位置の「四長」という役職に就いた。
ちなみにフォルフ村という名前は俺がつけた。単純に狐と狼が住んでいるからだ。
そんなこんなで、村の改善を進めて数日。いつの間にか狼族が増えていた。最初は牙刃と狼鬼、牙哭の三人しかいなかったのだが、いつの間にか数十人はいる。
「なぁ、スズハ。何でこんなに狼族が増えているんだ?」
俺の家に作った事務室で俺はスズハに尋ねた。
「あぁ、ヒロキが村長になってからこの村が快適になったいうて狼族の若い衆が移住してきたらしいわ。今は全員が騎士団に参加してくれてるから村の警備は大丈夫やー、って牙刃が言うてたし」
そうなのか。まぁ、村の守りを固めることは大事だからな。それにしても牙刃も丸くなったものだ。俺に負けてからは、俺に対して一応の敬意を払っているしな。それに、俺がへし折ってしまった爪も、今はすでに生え変わっている。狼族の再生速度半端ないな。
そう話していると、ちょうどタイミングよく事務室の扉がノックされた。
「入れ」
先ほどまでの雑談のムードとは一転し、仕事モードに入った俺は真剣な声でノックした者を部屋に招き入れる。
「―――村長も板についてきたな主人」
「なんだ、ルクスだったのか。それでどうした?」
「なに、問題は無いと思うのだがな、人間たちが数十人この村に向かって歩いてきてるんだ。全員武装しているし。一応報告しに来た。どうする?」
なんかテンプレが来たよ。
「スズハ。四長を集めてくれ」
「わかった」
そうして四長+ルクスリアのメンバーで緊急会議が行われた。
「もし人間たちが攻めてきたのなら迎撃しなければいけないだろう」
これは牙刃。
「いや、迎撃するよりも話し合いで何とかならんもんかの?」
これは狼鬼。
「でも、一応迎撃準備はしといたら?一応村を守らなあかんし」
これはスズハ。
「「「村長。ご決断を」」」
「う、なら牙刃と狼鬼は迎撃準備をしてくれ。騎士団の初仕事だ。
「「御意」」
「それでスズハは俺と一緒に交渉だ」
「わかった」
そういう事で俺とスズハは人間たちと交渉するため村の外までやってきた。
「スズハは俺の後ろに。もし人間たちが何かしてきたら守るから」
俺は左わきに差した刀を叩きながらスズハに笑いかけた。
数分したら、遠くの方から何人もの馬に乗った騎士の様な人影が見えてきた。
「あなた方は何者だ!」
俺は遠くにいる騎士たちに叫びかける。すると騎士たちは俺たちの前で止まり、馬から降りて答えた。
「我らは誇り高きオルトゥス神聖国の聖騎士である。お前等に我々の奴隷となる機会を与えに来た。喜べ」
…典型的な人間至上主義で、自分達以外を見下している様な奴だな。すげぇイライラする。
「断る。神聖国だか何だか知らないが、お前らの奴隷になることなど望まない」
「なに!?貴様らの様な屑が我らに相対するというのか!良かろう。団員全員に告ぐ!我らの仕事はただいまよりこの村の殲滅へと変わった!」
その叫び声を皮切りに、神聖騎士団が動いた。
「そっちがその気なら―――騎士団!今が働き時だ!武功をあげろ!」
ウォーーーという叫び声と共に村の門が開き、中から武装した騎士団が神聖騎士団を迎え撃とうと走り出てきた。




