第十二話 迷宮攻略 Ⅱ
五日間連続投稿の四日目です。
「この階段…進まなきゃダメか?」
「当たり前だ主人。行くぞ」
ルクスリアは走りながら下り、闇に溶けた。
「もうどうとでもなれ!」
ルクスリアに続くように、ヒロキも走り下りた。
階段を駆け下りると、先ほどまでの暗闇とは一転、明るく広い場所に出た。
「ここは…なんだ?」
先についていたルクスリアが漏らした声に、俺も同意だ。先ほどまでのジメジメとした洞窟と打って変わって、小奇麗な貴族の部屋のような場所なのだ。
『儂の用意した魔物達を滅した勇者たちよ。わしが直々に相手しよう。まいられよ』
頭の中に直接響くような声がする。頭を揺さぶられるようで頭が痛い。
「誰だ!姿を見せろ!」
『先ほどからいるのじゃがのう』
その声が聞こえた刹那。目の前に角の生えた女性が現れた。
「っ―――!?大鬼女王だと!?なんでこんなところに」
「女王はもう娘に譲ったわい。余生を穏やかに過ごそうと森の中にダンジョンを作って暮らしていたのじゃがのう」
「なら、あんたに危害は加えないから返してくれ…と言ったところで、返してはくれないんだろうな」
「当たり前じゃろうて。儂の睡眠を邪魔した罰じゃ、死をもって償え」
そういうと大鬼女王は何もなかった空間から、一本の大太刀を取り出し、こちらへ向けた。
「無事に返してはもらえないみたいだな」
俺は抜刀し、構えた。だがルクスリアは、何かぶつぶつと唱え、最後に叫んだ。
「解放!」
そういうと、ルクスリアの身体は紅蓮の炎に包まれ、炎が消える頃には、ルクスリアは先ほどまでとは違い、紺色のドレスを着ていた。
「本気という事か。いいじゃろう、儂も、たぎってきたわい」
大鬼女王はルクスリアに向かって、大太刀を振り上げ、それを勢いよく振り下ろした。
―――だが、その大太刀がルクスリアに到達することはなく、静止した。
俺の刀に阻まれたのだ。自分の大太刀を止められてあことに驚き、目を見開いた大鬼女王は、すぐに顔を歪ませ嗤った。
「久しいな。儂が本気を出せる相手は。いいな、いいな!体が踊りだすようだよ!」
大鬼女王はすぐに大太刀を引っ込めると、横に薙ぐように俺の脇腹を狙った。2メートルを超すような大太刀なのに、大鬼女王は木の棒を振るかのようなスピードで大太刀を振る。
―――だがまた、その刀身は俺に到達することなく空中で静止した。
「我の主人に傷を負わせるわけにはいかぬのでな」
ルクスリアの魔法のようだ。大鬼女王は体をピクリとも動かすことが出来ない。
「な…に。儂の身体の動きを完全に制止させられるほどの拘束魔法!?そんな馬鹿な!」
「無駄口をたたくなんて、ずいぶん余裕だな」
一瞬のスキを俺は見逃さない。強敵との対峙で命の危険、死の恐怖を味わっている体は、いつもの倍以上俊敏に動いた。
一秒もかからないうちに、大鬼女王の首は体から離れていた。
ゴロン、と足元に転がる首をルクスリアが炎魔法を使って焼き払う。
「終わったな。主人」
「あぁ」
俺は命の賭けから解放された安堵感で、地面にへたり込んでいた。
「こいつに勝ったのだから、この迷宮は主人のものだ。迷宮作成のスキルを持っているのだから、この迷宮の管理ぐらいできると思うぞ」
そういわれて俺は、心の中で=迷宮作成=と呟いてみた。
すると目の前に半透明のウィンドウが現れた。
――――――
=迷宮作成=
NEW『ダンジョンを一つ獲得しました』
大鬼迷宮:Lv25
自動スポーンする魔物: ホブゴブリン
メイジゴブリン
ケイブバット
リトルドラゴン
大鬼
〈ボスモンスター〉 大鬼女王
――――――
おお、なんかすごいな!それに大鬼女王までスポーンさせられるのか!
とりあえず俺は、大鬼女王をスポーンさせてみることにした。心の中で、『大鬼女王、再召喚』と唱えると、急に脱力感が俺を襲うのとほぼ同時に、目の前に先ほどの大鬼女王が現れた。ただしものすごく若返って。
先ほどまではしわくちゃの老婆だったのだが、今はそれに出る所も出ていて、ルクスリアたちとは違う美しさだ。
「お、おぉ!?儂はなぜ生きているんじゃ?」
「俺がお前を再召喚したんだよ。これからは、俺の配下として働いてもらうから。よろしく。」
俺が平然と言ったセリフに大鬼女王は愕然としながらも、直ぐに納得して言った。
「…仕方ない。強いものの下につくのが世の常じゃ。よろしくの」
大鬼女王は、拳を突き出してきた。なので俺も拳をぶつける。
「それで、名前なんだけどお前の名前は何だ?」
「無い」
きっぱりと言い放った。
「なら、俺がつけてもいいか?」
「いいぞ」
なら、名をつける事にしよう。
「じゃあ…瑠璃なんてどうだ?」
蒼くて、透き通るような髪をしているから瑠璃を提案してみた。
「瑠璃…いい名前じゃ!今日から私は瑠璃じゃ」
という事で、瑠璃が仲間になり、迷宮が手に入った。
そろそろ一回キャラ紹介の回を設けます。
僕自身、あまり把握しきれてないので(苦笑)




