いざ大海原へ!
本日は夜にも更新予定です。
なんとスライムである俺は海に入れませんでした。
海水、恐ろしい子!
どうやら塩分が俺の体には猛毒っていうか水分を搾り出されるって言うか、ぶっちゃけ縮んでしまいました。
今の俺は体長たったの10mのか弱いスライム。こんな状況で魔物が襲ってきたら……あ、六足狼だ、頂きまーす。もぐもぐ、うまー。
さて、こんな状況で強力な魔物に襲われたらひとたまりもない。
と言う訳で、俺は二つの選択を強いられる事になった。
一つはこの島で一生生きていく事。もう一つは船を作るなりして島を脱出する事だ。
当然の事ながら前者はありえない。
せっかく面倒事が一段落したのだから、面白おかしく生きていきたいじゃあないか。
なので残るのは無しな。つー訳で脱出する方法を考えよう。
まず今の身体は魔法が使えないので飛行魔法や転移魔法は使用不能。
エルフ、ドワーフの転移装置は魔力不足で使用不能。
魔族の転移装置はナビゲーターが操作しないと転移できないので無理。
何より転移装置は全て俺の魔力吸収能力の所為で使用不能に陥ってしまうので、選択肢から外さざるを得ない。
魔法に対して絶対的な防御力を持ってしまったが故の弱点を得てしまったといえる。
残るは原始的な手段を用いた脱出法のみだ。
具体的に言うと、船、シップである。
という訳で俺は船を作るべく行動を開始した。
◆
船の木材を確保すべく近くの森へとやって来る。
ここはエルフの森と違い普通の大きさの木ばかりだ。
魔物も少なく、住んでいるのも普通の動物が殆ど。
早速ここでいかだを作ろう。
まずこのスライムの身体が乗れるだけの大きさの木が必要なので大木を探す。
それと平行して蔦を集める。この蔦を使って丸太をつなげるのである。
お、早速蔦を発見。採取採取……じゅっ
……溶けた。
近くに生えていた別の蔦を見つけて採取……じゅっ
……また溶けた。
だめじゃん!!!
なんてこった! 俺の体じゃあ蔦が溶けてしまって木を結ぶ事が出来ないじゃないか!!
一体どうすれば……
近くの獣や鳥、それに果物をもぐもぐしながら船の作り方を考える。
蔦が溶けてしまうのでイカダは無理。
エルフやドワーフの船を使おうにも、彼等は転移装置があるので船なんて作らない。
だから彼等の作ったものを利用するのは不可能。
となるとやはり自分で作らねばなるまい。
イカダ以外でどうやって作る?
地球じゃあどうだろうか?
地球にあるイカダ以外の船で俺でも時間をかければ作れそうなもの……そうだ、大きな丸太をくりぬいてカヌーにしよう!!
これは良いアイデアである。
俺はさっそく一番でかい大木を見繕ってコレを削る事にする。
幸い削る物はエルフの町から持ってきた槍があるので、これをナイフ代わりに使う。
触手アームで何本もの槍を構えて全周囲から削っていく。
カッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッ
うーんパワーないわー。
だってスライムなんだもの。腕力なんてないのですよ。
地道に少しずつ削るしかないのかー。
◆
そうして、数日が経過した。
余りにも遅々として進まない作業に業を煮やした俺は、再びエルフの町がある大樹の根元に戻り、適当な刃物をいくつか回収する。
パワーが弱くて作業が進まないのなら手数を増やせばよいのだ。
っつーわけで回収してきた剣や斧をスライムアームで掴んでいっせいに削っていく。
俺が乗るためのコクピットに、丸太がひっくり返らないように地球の船のイメージで側面を細くしていく。けどソレだと何かあった時心配なので。双胴船に改造しようと思う。
細長くした丸太船の上部に穴を開け、そこに穴の径とほぼ同じ太さの木の棒を差し込んでいく。
少しきつめの穴径なので斧の腹で叩いて無理やり押し込める感じだ。蔦で縛れない以上、こうやって分解しない様にしないといけない。
◆
そうして10日が過ぎた頃には、なんとかそれっぽいモノができた。
完成したのは、くりぬいた丸太を細長く削って、水が入らない様に上の方に開けられた穴に木の棒をねじ込んだなんちゃって双胴船だ。多分造船業の人達に見せたら凄く怒られそうだがそこは許してもらおう。
こっちは素人なのだ。
そして長い櫂が10本。コレをスライムアームで握っていっせいにこぐのだ。
それこそカヌーやガレオン船の様に。
結構長いので、浅瀬はこれで海底を押してゆく予定だ。
よーし、早速出航だ!
俺は双胴船に乗り込み早速出発する。
ざぱーん
キュゥゥゥゥゥン!!
もぎゃーーー!! 波が! 波がかかったぁぁぁぁぁぁ!!!
なんという事だ、逆Uの字ポーズになって双胴船のコクピットへまたがせるように乗ったら、真ん中の跨っていた部分に波がかかって大ダメージを受けた。
これは予想もしていなかった大事件である。まさか波があそこまで高い位置から襲い掛かってくるなんて。
またしても身体が小さくなってしまい、遂に7m程になってしまったじゃないか!
このままでは海水を喰らいまくって更に小さくなってしまう。
双胴船ではこの荒れた海を渡ろうとして波を諸に受ける危険がある。
だから俺はやり方を変える事にした。
◆
ただいまー。
俺はエルフの森へと戻ってきていた。
だがそれはエルフの森に戻るためではない。
俺の目的はここの大樹だ。
巨大な大樹を切る事で、俺はソイツをくりぬいてクルーザーを作る事にした。上から降ってくる波を防いでくれる屋根があり、俺の体がらくらく収納できるものといえばこの森の大木以外にないだろう。
エルフに察知されないように町外れの大樹を狙って斧をガンガン振り回す。スライムボディだからすっぽ抜けても安心。当たるのは木か魔物くらいだ。
けどパワーのないスライムボディだから少しずつしか削れないんだよなー、つるつるだから手が痛くなる
事が不幸中の幸いだけど。
ともあれ、これは忍耐力との勝負だ。
パワーのないスライムボディで頑張って削るぞー。
◆
そして1カ月後、遂に俺は大樹を削る事に成功した。とっても大きな音が鳴ったので慌てて大樹を運び出す。
スライムは非力なんじゃないのかって? 安心して欲しい、既に準備は万全だ。
大樹を切るついでに、俺は大樹の枝をカットしていた。
その枝を加工し、転がし棒を作る。
ほら、エジプトとか古代を題材にした映画なんかじゃ、よくピラミッド用の巨大な岩の下に丸太を置いて転がして運んでるじゃん。
アレである。
一生懸命大樹を押しながら、スライムアームで後ろの丸太を前に持っていっては転がすを繰り返す。
そして森からある程度離れた所でエルフの斥候がやって来た。意外に早い。
俺は身体を地面に染みこませ、草むらに少しだけ頭を覗かせて様子を見る。
やって来たエルフは3人、一際筋肉がキツイのをマッスル、背が高いのはノッポ、斧を持っているのをアックスと呼称しよう。
エルフ達は俺が切り倒した大樹を調べている。
「見ろ、既に枝が刈られている。ソレもかなり丁寧な加工だ。恐らく運ぶ前にあらかじめ切っていたみたいだな」
ノッポが枝を切った部分を撫でながら加工具合を調べる。
ええ、転がす為に切りました。
「我等に察知されずに大樹を切るとなるとそれなりの人数が入り込んだようだな」
マッスルさん外れ。一人ですよ。あと結構無防備にカンカン叩いてたけどお前等全然見に来んかったぞ。結界魔法に頼りすぎだ。
「結界魔法があれば侵入者など即座に殲滅するというのに。まったく忌々しいドワーフ共め!」
アックスさんが激昂する。こういう言い方をするって事はエルフの襲撃は失敗に終わったのかなぁ?
まぁ井戸を破壊したから戦略的には勝利だろうけど。
「居なくなった同胞達の事も気になる。この大樹を切った者達と関わりがあるやもしれぬな」
正解ですノッポさん。犯人はここに居ますよー。
「ドワーフか?」
まぁそれが妥当な推測だよな。
「いや、ドワーフは木を切らない。考えられるのは獣人か人間だな。連中には我等の森は資源の宝庫だろう」
「連中か、あのケダモノ共め、結界魔法が無いからって調子に乗りやがって」
アックスさんが忌々しそうに吐き捨てる。
しかし成程、密猟者ならぬ密伐採者って訳か。
もしかして定期的にこの島に来るのだろうか? だとすれば密猟者の船を乗っ取るのもありかもしれない。
今の俺は大分ちぢんでしまった訳だし、ある程度の大きさの船なら乗る事が出来るだろう。
このまま何時回収できるか分からない大樹の傍で待っているよりもそっちの方が現実的だ。
大樹の回収は副案として残しておいて、まずは密伐採者の船の乗っ取りを最優先に行動しよう!!




