死の代償
魔力結晶の衝撃は予想外の激しさだった。
王族用にカスタマイズされたイカヅチをもってしても、大量の魔力結晶の爆破の威力はすさまじかった。
なにしろ数か月分の蓄積された魔力を爆発させたのだ。大量のダイナマイトにマッチを放り込むようなものである。しかもガソリンの豪華お得セットで。
だが問題はそれだけでは終わらなかった。
魔力結晶が破壊したのは異世界から無限に魔力を汲み続ける事の出来るマジックアイテムだ。
それは常に異世界への転移ゲートを開き続け、更には魔力だけを流し込む精密機械の塊のようなマジックアイテムだったのだ。
ドワーフ達ですら、エルフの源泉を破壊するときはマジックアイテムを使って無力化してから破壊を試みた。
しかし俺がやった事は、圧倒的な火力で無理やり破壊するという方法だった。
いくら今破壊しなければ二度と破壊できないかもしれなかったとはいえ、あまりにも短慮であった。
もう反省しても反省しきれない。
だがその反省ももう遅い。
何故なら俺を殺した奴は既に死んでいて、更に言えばその行動は俺が原因だったのだから元凶は自分しかいない。
となれば、これはループだ。俺を殺した奴にに憑依したくても、魔力結晶を破壊した奴は既に死んでいて、そいつに命令を下した俺は既に死んでいる。
こうなってはどうしようもない。
俺の冒険もここまでか。
◆
「ボワング副団長! 大丈夫ですか!?」
誰かの声が聞こえた。
目の前に誰かが居る。
「ボワング副団長!」
誰だ? ……そうだ、コイツはこの体の部下をしているコンダークだ。
そして俺は……ええと、ちょっと待っててくれ。
たしかコイツ、コンダークが俺の事をボワング副団長だと言っていたよな。
ボワング副団長……そうだ、たしかコイツはドワーフの騎士団の副官だ。
俺の前の体のお姫様からすれば、この男は……叔父だ。
けどなんで俺はこの男に憑依しているんだ!?
……そうだ、コイツがリドラを、王女を『井戸』の護衛として左遷させた張本人だ。
と、言う事は、スキルが殺害元をさかのぼってこの男に憑依させたって事なのかな?
けどこの不調は一体? なんだか憑依による記憶のフィードバックが上手くいってない感じだ。
どこか【憑依】スキルのパスが不具合でも起こしているのだろうか?
一度再起動をしたい気分だぜ。
「ボワング副団長!」
そこに至ってようやく俺はコンダークの事を思い出した。
「聞こえている。これからどうするかを考えていたのだ」
俺は不機嫌そうな声を出してコンダークを煙に巻こうとする。
「やはりおかしいですよ、いつもと口調が全然違うじゃないですか!」
コンダークにそう指摘されて、俺はようやくボワングの本来の口調を検索する事が出来た。
これはヤバい。明らかにボワングの情報が読めていない。
「今はその様な事で議論している場合ではありません。まずは我らの都市に土足で踏み込んだエルフ達をあぶりだしです。それと平行して井戸の再建と再起動について調べなさい」
かろうじて本来のボワングの言葉を思い出して対応する。
「「「はっ!」」」
俺の指示を聞いた部下達が急いで後処理を行ってる。
俺も……部下たちの手前、姫が死んだ事を悲しんでいるフリをしておく。
そうして、今の内に俺は井戸の再建を遅らせる為の指令を部下達に出していく。
それと同時にボワングがどのような男だったのかもこっそりと調べていく。
それを知る事で、俺は何故この男に憑依する事が出来たのかを理解していったのだった。
●
「さて、そろそろ交代の時間なので私はこれで失礼致します」
「お疲れ様です副団長」
「ええ、お先に失礼します」
さすがに今回は疲れた。
憑依した体の半分くらいの機能が機能不全になっている。
何とかこの不具合をリセットしないといけないな。
ともあれ、今日は本当に疲れた。
少し早いけど今日はもう休もう。
と、いう訳でおやすみー。
◆
「これは一体?」
エルフ達の襲撃が起きたという事を知った私は、部下達に急ぎその情報が正しいのかを確認させようとしました。
だと云うのに、気が付けば私は何故か自分の部屋に戻って眠っていたのです。
これが、私ボワング=ブルイトを心から恐怖させる出来事の始まりだったのです。




