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憑依無双 ~何度殺されても身体を乗り換えて復活する~  作者: 十一屋 翠
ディグラード編

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無敵の地下帝国

ドワーフの国の名前を変えました。

 転移装置が起動する。

 一瞬の浮遊感に包まれた俺達だったが、次の瞬間にはその浮遊感はなくなった。

 そして目の前に広がっていた大樹の部屋は無機質な金属の空間へと変わる。

 その光景は、まさしく格納庫であった。


『転移完了』


 盾役が淡々と告げると、周囲に居た細身の鎧、『スミス』が俺達に近づいてくる。

 スミスは整備員が使用する作業用の鎧だ。


『井戸の破壊の余波で鎧が破壊された者がいる、即座に鎧の分離を』


『了解しました』


 整備員が俺の動かなくなったイカヅチにケーブルのようなものを差し込む。


『苦痛はありませんか?』 


「大丈夫だ。戦闘で封魔結界対策の部品が損傷した事が原因と思われる」


『承知しました。今脱鎧装置を起動させます』


「頼む」


 整備員がケーブルに付いたスイッチを押すと一瞬イカヅチが震えた。

 そして整備員がイカヅチを外側から操作すると、プシューっという音と共に外気が流れ込んでくる。


『お疲れ様です。……任務は?』


 整備員が小声で遠慮がちに聞いてくる。気が付けば周囲の整備の音も消えていた。

 どうやら皆成果が気になるようだ。


「多少のトラブルはあったが……任務成功だ。エルフ共の井戸は破壊した」


『『『『『『おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!』』』』』』


 その場に居る整備員達が歓声を上げる。

 無理も無い、ドワーフ達にとって宿敵であるエルフに大打撃を与えるこの作戦は、とても重い意味を持っていた。

 その為、エルフの魔力の源である源泉を破壊した事は彼等を大きく沸き立たせた。

 まぁすぐにお前等の井戸も破壊するけどな。


「俺達は上にこの事を報告する。スマンがイカヅチの修理を頼む」


 俺以外のドワーフ達もイカヅチから降りて鎧を整備員に預ける。

 そこで俺は初めてドワーフ達の生身を眼にする事になる。

 ドワーフ達の姿は、俺がイメージしていたような筋骨隆々の小人などではなかった。

 彼らは背こそ小さいものの、体は非常に貧弱でまるで子供のようだった。

 肌も白く、人間の町へ行ったら子供と言っても疑われないだろう。

 それこそが現代のドワーフ。彼等は高度に発展しすぎたマジックアイテムに作業の大半を行わせてきた為に、その肉体は子供のように貧弱になってしまったのだ。

 正に便利すぎるが故の弊害。

 そしてその弊害に対処する為に、更にマジックアイテムは便利になってドワーフ達は貧弱になっていく。

 悪循環であった。

 もしドワーフが鎧を装備せずに戦おうとすれば、人間の子供にすら敵わないだろう。

 それほどまでにドワーフの肉体は弱体化していた。

 ドワーフ達が全員イカヅチから降りると、移動補助用のマジックアイテム『ポニン』がやってくる。

 ポニンは小型の馬型マジックアイテムで、地球で言う老人用の自動三輪車のようなものだった。

 怠惰ここに極まれり。


 ◆


 金属の壁、金属の床、金属の天井、そしてマジックアイテムによる揺らがない光。

 それこそがドワーフが作り上げた鉄の要塞にて無敵の地下都市国家ディグラードである。

 ディグラードはエルフの国エルファンスと海を隔てた島、ウィンブランド島にそびえるベネビク山内部に作られた要塞都市で、その堅牢な構造があらゆる外敵からドワーフ達を守っている。

 ドワーフにとって唯一安全を確信できる楽園の中。ここでのみドワーフ達は安心して硬い鎧を脱ぐ事が出来た。


 イカヅチから降りた仲間達がポニンに乗って都市部へと戻っていく。

 俺も上司に報告をしに向かおうとポニンに乗った……その時だった。

 突然格納庫に、いやドギリズ全体に警報が鳴り響く。

 俺の中のドワーフの記憶が恐怖に打ち震える。

 この警報が意味するモノは……


『ヤツが来たぞー!!!』


『急いでアレを外に出せ!!』


 周囲のドワーフ達が慌てて何かの入った大型コンテナを輸送台に載せる。

 スミスを纏っている所為で顔が見えなくても、その切羽詰った動きから彼等が恐怖に怯えている事が分かる。


『あんた達、悪いがこいつをヤツの所に運んでくれ!! 俺達はエルフとの決戦の為にイカヅチを修理せにゃならん!!』


 そう言って整備員達は逃げる様にイカヅチの方へ走っていった。

 っつーか本気で逃げた。

 仲間達が絶望に満ちた表情で顔を見合わせる。

 そこに有るのは一蓮托生という諦めの感情だった。


 ◆ 


 コンテナの輸送される先は、ドワーフ達の生死を分ける存在が待ち受ける場所。

 ベネビク山の頂上にそれは待ち構えていた。


 きらめくルビーの鱗を持つドラゴン、その名もルビードラゴンが。

 更に言えば俺の嫁です。


「ド、ドラゴン様……こ、此度のルビーでございます……」


 盾役が死にそうな顔で声を搾り出す。そして視線はメリネアから逸れている。

 ドワーフにとってドラゴンとは、過去に自分達の祖国と同胞を虐殺した相手。

 文字通り恐怖の対象である。

 いずれ反逆する事をもくろんではいても、その姿を見れば恐怖に身体がすくむのだろう。

 だがそれだけではない。ドワーフにとってドラゴンとは、自分達が掘り出したルビーを根こそぎ掻っ攫っていく存在でもあったのだ。


 ……そりゃあ恨まれもしますわ。


 メリネアから小さく唸る音が聞こえる。そしてその音を聞いただけで周囲のドワーフ達が恐怖に震えだす。

 だがメリネアはここで美味しくルビーを頂いてさっさと帰るだけだ。そしてその際に鱗を落として言ってくれれば儲け物。

 それがいつもの流れだった。

 しかし今日に限っては違った。

 メリネアがルビーの入ったコンテナを掴む。

 そしてコンテナを運んでいた俺ごと空へと飛び上がる。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 こうして俺は、恐怖の存在ドラゴンに誘拐されるのだった。 

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