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憑依無双 ~何度殺されても身体を乗り換えて復活する~  作者: 十一屋 翠
イドネンジア編

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ばったり こんにちは四天王さん

「…………」


「…………」


 お互いの視線が交錯する。

 一触即発、動けば爆発するニトログリセリンの様な状況。

 そんな危機一髪な中で、俺は魔王四天王マズロズと海のど真ん中で対峙していた。


 ◆


 話せば長くなる。逃げ出したのは良いが、メリネアも一緒に連れ出さないと万が一子供達と遭遇した場合にリナル達が暴走しそうな気がしたのだ。

 しかしメリネアは港町にはいなかった。

 とすれば近隣の海で食事中なのだろうと思い、軽く捜索していたのだ。

 で、魔族とバッタリ。


「えーと、じゃそう言うことで」


 俺はきびすを返し元来た道を戻ろうとする。


「フハハハハハ!!! ここであったが100年目よ! 今度こそ決着を付けてくれよう!!」


 そうなりますよねー。

 マズロズは前回の戦いで負った傷がすっかり治っていた。

 よほど優秀な回復魔法の使い手が居るのだろうか?

 俺は即座にサイドシールドを発動させて守りを固める。

 そして接近戦を考慮して龍魔法で身体能力も強化する。

 

「キサマ等は人間共の町を攻めろ! この男は俺が相手をする!!」


 魔物や魔族達がイドネンジアに向けて移動を開始する。

 だがこの状況は正直ありがたい。

 魔物達がイドネンジアに向かえば俺はマズロズに専念できるし、本気を出しても子供達は魔物との戦いでこちらにこれない。後はコイツを倒してメリネアと合流。そして逃亡が理想的な展開だ。


「ではさっさと終らせるとするか」


「そうつれない事言うなよ。楽しもうぜぇ」


 俺とマズロズが同時に魔法を発動する。


「メルトシャワー!!」


「ハイドリングローラー!!」


 メルトランスに等しい威力の炎の雨が海面に降り注ぐとマズロズは高速回転する複数の水のリングを作りだして炎の雨をしのぐ。


 魔力消費の激しい上級魔法を使ったのに無傷かよ。


「俺の絶対防御魔法をあっという間に蒸発させるか」


 どうやら敵ご自慢の防御魔法だったらしい。

 お互いに前回の戦闘の反省点を考慮しての初手か。

 けど相手は水魔法のエキスパート、海で戦うには明らかに不利だ。


「今度はこちらから攻撃させて貰うぞ!」


 マズロズが攻撃魔法を発動させる。

 

「クラインウエィブ!!」


 突然周囲の水が持ち上がり、大波となって俺に降り注ぐ。


「エアポケット!!」


 俺は空気の玉を作る魔法を発動させて海中に避難する。

 上から凄まじい勢いの水流が襲ってくるが空気の玉は実体でないのが幸いし、何とか耐える事ができた。

 しかしその勢いは相当なものだったらしく、俺の周囲の水は薄暗い色をしていた。


「ようこそ、俺の世界へ。お茶を用意してやれないのが残念だよ」


 マズロズが俺の前まで潜ってくる。

 目の前に下りてくる辺りに自信がうかがえる。


「いやいや、直ぐにお暇しますので御気遣いなく」


 俺は空気の玉を操作して海面に出ようとするが、何故か空気の玉は下へと降りていく。


「遠慮するな。深海の世界を楽しもうぜ!」


 一気に空気の玉が沈んで行き、それと共に周囲の景色も暗くなっていく。

 コレはまずい!

どこまで深く潜れるのか分からないが、このままドンドン深海に潜っていけば水圧でドンドン空気の玉が小さくなってしまう。そうなれば俺の体が深海の水圧でペシャンコだ!


「バーストストーム!!」


 ダウンストリームに等しい威力を放つ風系上級魔法を使って強制的に上へと弾きだ……さない!?

 強烈な魔法を使ったというのに俺の入った空気の玉はピクリとも動かなかった。


「甘いぜ!お前の魔法は上級魔法かもしれんが、ここは光も届かない海の中! 俺の水魔法は何倍にも威力を発揮する舞台だぜ!!」


「ならば、通じる攻撃をすれば良い! ブレイクサンダー!!」


「ピュアウォーター!!」


 俺は雷の上位魔法を発動させ周囲一体を攻撃する。水は電気を通す! これなら回避できまい!!

 マズロズが何か発動させたみたいだが、水魔法では防御する事は不可能だ。 


「やったか!?」


 我ながら言ってはいけない言葉を言った気がするがこの環境では回避は不可能だろう。

 マズロズは自分の味方に裏切られた訳だ。

 周囲には感電した魚達が気絶して水面へと浮き上がっていく様子が見える。

 アレは今夜の晩ご飯にしよう。


「何を勝ち誇っているんだ?」


 聞こえる筈の無い言葉が聞こえてた。

 慌てて視線を戻すと、そこにはピンピンしたマズロズの姿があった。


「馬鹿な!? どうやって!?」


 魔法が無効化された? おや、魚が浮かんでいたんだ。発動はしているはず。


「ふふふ、何故俺が無事なのか知りたそうだな」


 得意そうな顔でマズロズが笑う。


「水魔法にはな、雷を通さない魔法が在るんだよ。その魔法を俺の周囲に発動したのさ。そしてお前は以前の戦いで俺の部下を雷で痺れされて倒したそうじゃねか。だったら、周囲を全て水で囲まれたこの状況で使う魔法は限られてくるよな」


「純水を作る魔法か……」


 水を純化した純水はその成分からイオンを取り除く為電気が通らなくなる。

 実際にはほぼ通らなくなるだが、目の前の状況を見れば完全に無効化されたと言っていいだろう。

 まずい、詰んでる。

 この状況では龍魔法を使っても意味がない。

 俺がよく使うのは移動用の転移魔法だから攻撃にも防御にも使えないし、好きな所に転移出来たとしてもこの水の中じゃ……好きな所?


「あっ……」


「さぁ、コレで終わりにしてやるぜ!」


 マズロズが何か言っているが、こっちはそれどころではない。

 こんな簡単な解決策を見落としていたのだ。

 全く、人間慌てると碌な事にならないな。

 移動した居場所をイメージして、俺は魔法を発動させる。


「ディメンジャンプ!」


 ◆


 ここは俺が借りている宿の中。

 転移魔法で移動してきた俺はここを起点にして転移を行ったのだ。

 太陽の光と肌を撫でる空気に、無事深海から戻ってきた事を実感する。


「さて、このままじゃ終われないな」


 俺は町に出ると武器屋を目指して走った。


 ◆


「店主はいるか!?」


 俺が店に入るとカウンターに居た店主がびっくりした顔つきで俺を見る。


「バーザックさん、何処に行ってたんだ! 魔族が出たから皆バーザックさんを探していたよ!!」


「分かってる、今まで敵の幹部と戦っていたんだ。すまないがそこにある剣と槍、あと斧をありったけ売ってくれ」

 

「は? バーザックさん魔法使いだろう?」


 店主が何でそんな物をと聞いてくるが俺はその質問を無視した。


「いいから売ってくれ!」


「わ、分かったよ」


 腑に落ちない様子で店主が武器を持ってくる。


「運び易い様にヒモで縛るか篭に入れてくれ」


「はいはいっと。金だけで、金貨1枚と銀貨7ま……」


「釣は要らん!!」


 俺は適当に金貨を、三枚置くと、ヒモで縛った武器を持って店を出た。


「ストームウイング!!」


 中級飛行魔法で空に舞い上がる。

 この魔法は術者が常時制御していないといけないが、重い物も運べる上に速度が持続型の飛行魔法よりも段違いに速い。

 この魔法で空高く飛び上がった俺はマズロズと闘った海域を目指す。


 ◆


「居た!」


 高高度から海を見下ろした先には小さな影が長い泳跡を残しながら進んでいくのが見える。間違いなくマズロズだ。

 俺はマズロズの真上より少し前に止まってから魔法を持続型に変えて制御を容易にする。

 その途端手に持った武具の重みが身体を海面へ向けてゆっくりと引き摺り下ろしていく。

 そして腰に下げた短剣で武器を縛っていた紐を切る。

 当然大量の武器が真下に向けて落ちていく。

 狙いはマズロズである。

 だがこのままでは攻撃が外れる恐れがある。

 だから俺はマズロズの前に転移した。


「うぉ!?」


 突然目の前に現れた俺にマズロズが驚きの声を上げる。


「やぁ、続きといこうか」


「お前、どうやって海のそこから逃げ出せた!?」


 こっちのトリックが分からなくて警戒しているみたいだ。 

 俺はマズロズからゆっくり離れて魔法の準備をする。


「ふん、いいだろう。ここで決着をつけてやる ウォーターウェッブ!!」


 マズロズが大量の水のムチで俺に襲い掛かる。

 

「ストームウイング!!」


 対して俺が使ったのは、高速飛行魔法。

 その速さで俺は水のムチを回避していく。


「避けているだけじゃ俺は倒せないぜ!!」


「そうだな、こちらも攻撃しないとな!」


 手を前にかざすとマズロズが水のムチを解除して防御魔法を発動しようと動きを止める。


「ハイドリングピャ……」


 動きを止めたマズロズは上空から落ちてきた大量の武器に串刺しにされて水中へと沈められた。


「誘い出し成功」


 俺がストームウイングを使った理由は、マズロズを武器の落下地点に誘い出す為だ。

 そして戦闘前に下がったのも、落ちてくる武器を視界の端で確認できるようにする為。

 マズロズは俺が飛行魔法で高速で動くのを回避するためだと思っていたみたいだが、実際には高速で動いて姿勢を頻繁に変える事で上空の武器の落下位置をそのつど確認していたからである。

 結果、マズロズは上空から落ちてくる魔力を一切感じない落ちてくるはずの無い鉄の塊に殺されて死んだ。

 晴れ時々武器だ。


「さーて、めっちゃ疲れたし、どこか陸地に上がって身体を休めるかな」


 上級魔法を何発も使ったし、転移だってそんな何度も連続して使えるような魔法じゃない。

 どこかで休んで魔力を回復させないと。

 そう思って空に上がろうとした瞬間、鈍い痛みと共に身体が空中に縫い付けられた。

 何が起きたかと下を見れば、自分の身体から三叉槍が生えている。

 うん、コレは刺されたな。


「ぐふふふ、マズロズ様を殺した人間を倒したとなれば俺が四天王の後釜になる事も夢では無い!」


 俺の後ろには青い肌の魔族が水中から浮き上がっていた。

 俺の体を貫く三叉槍はソイツの手に握られている。

 コレは油断していた。

 マズロズの命令を聞かずに近くに残っていたヤツがいたのか。


「マズロズ様に大怪我を負わせた人間だったから、マズロズ様と戦えばきっとまた大怪我を負わせてくれると思っていたぞ。それを利用してマズロズ様のお命を狙おうと思っていたが、まさかマズロズ様を殺してしまうとはな。お陰で楽にお前を殺せるぜ」


 ああ、成程、漁夫の利でマズロズを暗殺しようとしていたのか。

 でも残念でした。お前の野望はここで終わりだ。


「なにせこの身体は俺が貰うからな」

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