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憑依無双 ~何度殺されても身体を乗り換えて復活する~  作者: 十一屋 翠
リタリア国編

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開店

 暫くポナリの町で暮らす事にした俺達は、この町で店を開く事にした。

 幸い、開業資金ならたんまりあるので、メリネアの食欲に全額溶かされる前に必要な物を買い揃える事にする。


「何のお店を開くのですか?」


 メリネアがのんびりと干物を齧りながら俺の方針を求めてくる。


「やっぱり料理ですね。商材は多くありますが、アレを本業にするには知識が足りません」


 商材とはバードナから奪った彼の財産だ。勿論その中にはエルダードラゴンの素材一式もある。

 この町に来るまでに多少売ったが、途中からメリネアに乗っての移動だったのであまりお金は使わなかった。食費以外な。

 ああ、あとこの町でイキナリ金貨500枚の出費もあった。異世界でもマグロは高いんだなぁ。


「料理はやっぱり魚料理?」


 そこが難しいところだ。

 地元の人間は魚料理なんて飽きているだろうし、されとて外から来る客はその魚を求めている。

 日本人らしく寿司とか刺身とも思ったが、それは既にこの町に来た日本人が広めていったみたいで、なんと海鮮丼まであった。美味かったけどさ。

 尚メリネアは釜で食っていた。言われて本当に釜で出す店主も店主だったが。

 ああ、あと寄生虫が怖いから生はやめよう。

 何かそんな気分だ。

 こうなると後は煮込み系の魚料理になるが、そう言うのは味をしみこませる時間や手間がかかるので個人営業の手作り店舗には向かない。

 あらかじめ大量に作って多少形が崩れても良い食堂か、高めの料金設定の料亭にする必要がある。

 この身体の記憶は高級料理を作るのは得意だが、そういった料理は内陸の高級店舗では当たり前のメニューだ。

 それを考えるとこの土地の人間狙いの普通の値段の内陸料理の方が良いかもしれない。

 もしくは名物料理に飽きた人が入る普通のお店みたいなかんじで。

 ……よし、決めた。普通の料理にしよう。

 目標は地元民の人気を得てリピーターで運営が出来る店だ。

 海辺ならメリネアが元の姿に戻れば外洋に出て好きなだけ魚も食える。

 食費的に海は大変ありがたい。

 

「決めました。ここに普通の料理屋を開きます。魚料理は地元の店の独壇場なので、ここは牛肉などを使った内陸の料理にします」


 その方がこの身体の記憶と技術を活用できるしな。


 ◆


 そうして、俺達の新しい生活が始まった。


「牛丼1つ!」


「ビーフシチュー1つ」


 客がメニューを見ながら注文をしてくる。


「はい牛丼お待ち!」


 俺は牛肉をメインとした、作り溜めの出来る料理で勝負する事にした。

 朝にまとめて作り、材料が切れたら売り切れって売り方だ。

 売れ残りが怖い売り方だが、どうせ余ったらメリネアが喜んで処分してくれるので心配ない。


「メリネア様、一番にコレをお願いします」


「ええ、分かったわ」


 俺からビーフシチューを受け取ったメリネアが、一番テーブルに料理を運んでいく。

 基本何か食べてばかりだが、頼めば仕事をしてくれる。

 本人も客との会話を楽しんで居るので有りだろう。


「ねぇ貴方様。この時期の海にはカジキングと言う美味しい魚が居るそうよ。仕事が終わったら捕りに行って見ない?」


「そうですね」

 

 俺は鍋の中身を確認する。

 最近は店にリピーターも増えてきたので鍋の減りが早い。

 町の住人がもの珍しさにやって来るのだ。

 特に牛丼は労働者に受ける事はナイガラの町で確認済みだ。

 安く味の染みこんだ肉を食べる事が出来るのだから満足度が低い訳が無い。

 恐らく夕方になる前に料理は切れる可能性が高い。


「いいですよ、行きましょうか」


「ありがと、愛しているわ」


 メリネアが俺のほっぺにキスをして、それを見ていた客がはやし立てる。

 すっかり慣れた光景であった。


 ◆


 メリネアと共に港の方へと向かう。

 夕刻が近づいてくる時間に歩く繁華街はにぎわっていた。

 商品を仕入れに来た客、仕事が終わって食事に来た客など様々だ。

 異国情緒溢れる珍しい品を求め、新しい店を開拓する商人達。

 仕事で疲れた身体を癒す為に、美味い食事を求める男達。


「おう兄ちゃん。今日は店じまいかい?」


 見覚えのある顔が声を掛けてくる。

 恐らく店の客だろう。


「ええ、今日はもう材料が無いんで店じまいです」


「そりゃ残念だ。俺はあの牛丼ってのが大好物なんだよ。明日は絶対食いに行くからな」


「御贔屓にありがとうございます」


 男との会話も早々に切り上げ、俺達は港に到着した。

 俺達は慣れた足取りで船着場へと向かう。

 その中にあるネイビーブルーと赤のツートンカラーで構成された船に載る。

 魔法船だ。

 俺はバードナの金を使って中古の魔法船を購入した。

 コイツは魔力で動く船で、沖まで出る為に購入したのだ。

 なにせメリネアは人間と比べると大食いだ。

 いちいち食材を買っていたらバードナの金といえど遠くない内に尽きてしまう。

 そこでこの船の出番だ。

 俺が船を沖に出して人目が無いのを確認すると、メリネアが龍の姿に戻って食事をしてくるのだ。

 そしてその間に俺は釣りをする。

 こうする事で翌日の朝食とメリネアのおやつが確保できるのだ。

 地味に重要な仕事だったりする。


「それじゃあ行ってくるわね」


「行ってらっしゃいませ」


 メリネアが龍の姿に戻って空に舞い上がる。

 そして次の瞬間、矢のような勢いでメリネアが海に向かって飛び込んだ。

 上空からのダイビングに水面が爆発し、海水が雨となって降り注ぐ。


「じゃあ俺も釣りをするかな」


 ●


 メリネアが戻ってくるまでの間、釣りをして暇を潰す。

 だが……


「イマイチだな」


 釣れる魚は小魚ばかりであった。

 俺は魚を掴んで咥えた針を抜いて容器に入れる。

 まかない用の魚なので扱いも乱雑だ。


 だがこの釣果だと、今日はあまり数を揃えられそうに無いな。

 とはいえ、メリネアが戻ってくるまでは留まらなければならない。

 と、その時だった。

 竿に強い力が伝わる。


「お、大物か!?」


 予想外の大物反応に、竿を握る手に力が入る。


「いぬぬぬぬぬっ!」


 そうして数分が経過した頃、竿に感じた魚の逃げる力が無くなった。


「力尽きたか?」


 俺は竿を引っ張り上げて魚を捕獲しようとする。

 コレだけ力が強いのならきっとデカくて活きの良い魚だろう。

 水の中に魚の陰が見える。

 その影は近づくに連れどんどん大きくなっていく。


「な、何かちょっとでかくね?」


 嫌な予感のした俺は、慌てて逃げようと魔法船のエンジンを入れようとした。

 だが、時既に遅し。


 プラーン


 俺の元体に長くて太いモリが突き刺さった。

 否、それはモリではなく生物であった。

 俺の目が自分の身体に突き刺さったモノの正体を教えてくれる。

 それは、、全長ほどの3mの魚だった。 

 しかも珍しい事に鼻の先がとんがっている。

 うん、そうなんだ。カジキが原因なのだ。

 両足が崩れ落ち、意識が飛んでゆく。


 そう、俺はカジキに貫かれて死んでしまったのだった。

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