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良明はいじめ自殺に関するニュースはある程度見ていたつもりであったが、不覚にも服田から見せられた写真に写る少女のインタビュー映像など見ていなかった。
ここで良明の心の中で疑問がわいてきた。山西徹也のことについて生徒に聞いてみるにしても、この学校の校長や教頭、教諭に了承を得なくても大丈夫なのだろうか。
「服田さん」
「なんだ」
「この子に、徹也くんのことを聞くということですが、学校側に通告なくやってもいいのでしょうか?」
「あー?」という声をあげながら、服田が良明を睨んできた。
「了承を得ようとしたところで、お断りですって言われるのが目に見えている。そんな無駄なことしない」
「でも、僕たちは警察とかじゃないんですよ」
「警察じゃないから尚更だ」
良明はこれ以上の議論を打ち切ることにした。服田はそんなに優しい人間ではない。仕事のためなら、少しくらい傷つける人がいても容赦ない性分である。
高校の校舎からぞろぞろと生徒が外に出てきた。インタビューを受けたとされる少女を1500人の中から見つけ出さなくてはならない。普通に考えて簡単ではないことである。
「服田さん、どうやって探します?この子のこと」と良明は、服田が持っている写真を指差しながら言った。服田はしばらく「そうだな」と気難しい顔をしながら考える。しかし、そうしているうちにも、次々に校舎から生徒が出てきていた。
急に服田が、「よし」と声を上げた。
「良明くん」
「なんでしょうか?」
「真面目そうじゃないやつにこの少女について聞いて回ろう。クラスメイトがいたら、知っているかもしれない」
「はい」
良明は短く返事をして、服田が言ったとおりにしようとその場を立ち去ろうとしたが、服田に呼び止められ、「いいか、真面目そうじゃないやつだぞ」と念を押された。
良明には、服田がその指示を出している理由について見当がついていた。あくまでも、学校には知られないように、インタビューの少女から話を聞き出すのだ。
良明と服田は二手に分かれて、インタビューの少女がどこにいるのか、今何をしているのかを聞いて回った。聞き始めてから5分が経過したときだった。
「まだ教室にいると思うけど」
良明が髪を茶色に染め上げ、耳にピアスを開けている女子生徒に話しかけたとき、このような答えが返ってきたのだ。
「まだ教室にいるんだね?」と良明は、ようやくヒットがあったことに若干興奮しながらその女子生徒に聞いた。
「うん。つか、あの子、好きな子が自殺しちゃったから、花とかそいつの机に挙げて、毎日水替えしてんの」
「そうなの」
「うん、まあさ、うちのクラスの何人かさ、弱い者いじめばっかする野郎が居っからさ。まあ、見てただけんの私も同罪なんだけどね」
女子生徒は、大きくため息をはいて、「まあそういうこと、じゃあねお兄さん」と言ってその場から立ち去った。良明は、「ありがとう」と言い、その女子生徒に手を振った。良明は真面目そうじゃないにしても、性格はかなりいい子だと感じていた。
「服田さん。まだ教室にいるそうです」
良明は、さっそく服田にそのことを報告した。服田は、「よし、やったぞもて男」と言って、良明をからかった。
良明は、もう出てくる生徒も少ないので、インタビューの少女が出てくればすぐに見つかるだろうと考えていた。
少しして、ついに学校の玄関口に、インタビューの少女の姿が現れた。ショートカットで、肌が小麦色した、端正な顔立ちの少女だったので、出てきた時はすぐに気づくことができた。




