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天使の微傷~殺人鬼の真実~  作者: 高見 リョウ
悪魔のシナリオ 再び
22/62

3-2

 良明が電話を掛けた刑事の名前は、朝比奈剛助。福岡県警捜査一課の務めるベテラン刑事である。母親の章子とも親交があり、高校時代、友人が容疑者となった事件を調べてくれたのもそのよしみであった。

 良明が電話をかけてから、4コール目で朝比奈は電話に出た。

「良明くんか。久しぶりだな」

 久しぶりに聞く、低く威厳がありそうな声に良明は一瞬だけひるんでしまう。しかし、この男は良明が最も信頼できる警察官であるのだ。

「お久しぶりです。朝比奈刑事」

「どうした、何か用か?」

「はい、少しお聞きしたいことがありまして」

「教えられる範囲のことであったらよいぞ」

 良明は、西沢美夜古の事件の詳細は警察として教えていい範囲であるのかが分からなかったが、とりあえず西沢美夜古のことを聞いてみることにした。

「今、ちょっと西沢美夜古について調べてるんです」

「何…」と朝比奈は低い声で呟き、それから「んー」と唸った。

「西沢美夜古の何が聞きたいんだ?」

「殺人手法についてです。朝比奈刑事は、この事件の捜査をしてましたよね」

「ああ、してたさ。」

「それはよかった」

「よくはないだろ」と朝比奈は急に大きな声を上げた。「西沢美夜古はもう死刑執行もされ、終わった事件かもしれないが、捜査の詳細は教えられない。お前が、久米章子の息子でも同じだ」

 良明はそう言われはしたものの、あきらめるわけにはいかない。ここは、人情深いと母親に言われていた朝比奈には、とっておきの方法を使おうと良明は考えた。

「西沢美夜古の妹は、ずっと姉が犯した事件のことで苦しんでいるんです」

「妹?」

 それから、朝比奈は少し間をおいて、「ちょっと待て、場所を変えよう。一度切るぞ」と言い、一方的に電話を切った。良明は場所を変えると言っていたので、すぐにまた電話がかかってくるだろうと踏んだ。

 もう一度、インターネットで調べたことを書き込んだノートを凝視し、五つの事件の詳細を確認する。やはり、1件目の殺人手法や4件目と5件目の間が長いことなどが気になる。本当に西沢美夜古がすべての殺人を実行しているのだろうか。

 朝比奈からの電話はすぐにかかってきた。

「もしもし」

「良明くん、妹と言ったな」

「はい」

「妹の名前は、野崎文音か?」

 良明はびっくりした。まさか、朝比奈が文音の名前を知っているとは、思わなかったからだ。良明は、「どうして、知っているんですか?」と聞き返した。

「やっぱりそうか。いや、俺がその子を保護していたんだ」

「そうですか。朝比奈刑事が保護を…」

「そっか」と朝比奈が低い声を少し高くして言う。「そうだな、文音ちゃんは福岡産業大学の臨床心理だったか。お前と一緒だな」

「そうです。学科が一緒でして」

「姉に似て、かわいくて綺麗な子だったな。あの子も被害者だ」

 文音がずっと苦しんでいたのは、保護していた朝比奈刑事も知っているようだ。

「今でも、苦しんでいます。彼女は、あの優しい姉が殺人を犯したとは、いまだに信じられないようで…」

 良明がそう言うと、電話越しに朝比奈が大きくため息をついた音が聞こえた。

「それは、俺も同感だ。全部とは言えない。しかし、全部、あの西沢美夜古がやったとは思えないんだ」

「朝比奈刑事…」

 良明は、西沢美夜古の犯行について、疑問に思っている刑事がいることに心強く思った。

「なら、どうして死刑になる前に、もう一度捜査をしなかったのですか?」

「馬鹿野郎。できる雰囲気じゃないんだよ。しかも、うちの同僚には西沢美夜古の取り調べをやった奴もいてな、今も一緒の部署なんだ。死刑囚が冤罪とわかりゃ、免職だぜ」

「そうですか…」

 良明は、警察には縛りがあるらしいと感じていた。この様子からして、朝比奈に協力を求めることは難しそうだ。しかし、朝比奈の次の言葉で、良明のその考えは覆ることになる。

「もうすぐ俺は、定年だ。最後に、疑問に思ったこと調べてみるか」

「朝比奈さん、協力を」

「してやるさ」

 朝比奈は、最後に疑問に残ったことを、綺麗に片づけて終わりたいと言ったのであった。良明は強力な助っ人がついたと思った。良明と朝比奈は、後日1件目の殺人現場で落ち合うことに決めた。


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