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the Spree of the Naïve Honest  作者: けら をばな
第二章・死にたくなけりゃ、さっさと戻れ
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xii――一番人気はやっぱり……

 長時間の訓練の後、施設内の大浴場の脱衣所で直人はロジャーにばったり会った。

「何だ? いつもは眼鏡掛けてんのか?」

 シャツを脱ごうとした所、ロジャーの言葉で自分が眼鏡をかけていることに気付いた。黒い縁で、特にお洒落でも何でもない安物である。そっとその眼鏡を外し、籠の中に置く。

「いつもは掛けなくてもですけどね。遠くとか見る時に必要なだけで」

 因みに〈突偽〉は嗅覚・視覚(動体視力も)等の様々な感覚を向上させることが出来る為、多少視力が悪い程度では問題ない。

 が、別にさほど興味が無かったのだろう、ロジャーは適当に相槌を打つと、徐に服を脱ぎだした。直人も服を脱いだ。

 直人とロジャー、二人裸になると矢ッ張り差が目立つ。

 見た目には、およそ百八十。厚い胸板と、引き締ったウエスト。体脂肪は恐らく十%前後だろう。程良く陽に焼けた肌に、割れた腹筋が逞しい。

 対して直人、身長は前述の通り百六十二、肌はロジャー同様陽に焼けて小麦色だが、全体的にほっそりとしていて、腹筋も割れている訳じゃ無く、全体的に筋肉はうっすらとした脂肪の内に隠れてしまっている。ふうっと溜息をつく直人。

「せめて百六十五は欲しかった……」

 かねがね思っていた事が愚痴となって口を衝いて出た。そんなロジャーは直人の体を見て、

「……まあ、需要はあるから安心しなよ」

「え?」

 慰めの言葉に首を傾がせ、頭の上にクエスチョンマークを表示させる。

 どうやら周囲からの、直人への熱心な視線に気付いていないらしい。

 艶めかしいと言うに何ら差し支えない、きめ細かで吸い付きそうな健康な肌、子供っぽさを強調する低い鼻と大きな目、ぷるんぷるんの唇、海パンのお陰で焼けずに済んだ白いお尻、桜色の乳首、同性ばかりで恥ずかしくないのだろう、一切隠す事のない下半身。

 風呂から出たばかりの者はそそくさと折角着たばかりの服を脱ぎだし、今来たものは急いで服を脱ぎだして、結局直人はぞろぞろと職員を引き連れて大浴場の扉を開けた。

「よお直人、あ、何だロジャーも一緒か。……あれ、お前らさっき出ていかなかったか?」

 浴場には神室と来徒がいて、来徒は直人、ロジャーを見ると声をかけ、後ろの幾人かに気付くと、不審の眼差しを向けた。向けられた方は「ああ……」だの「いや……」だの要領の得ない返事を返し、そそくさと散った。呑気に首を傾げる隣の神室。

「直人君が来ると、よくこうなるんだよね。なんでだろうねぇ」

「……直人、よく無事でいられたな」

「え?」

 呆れる様なロジャーの口調とは対照に、何一つ分かっていない直人の顔。

 直人は髪の先から爪の先まで洗い、改めて神室と来徒の許へ行き湯船につかった。直人は肩まで浸かり、濡れた髪をかき上げる。矢張りどうしても色っぽい。男性陣が矢張り直人の許へ来る。ロジャーもやや遅れて直人の許へ来た。

「……なんていうか、人気だな」

「……え?」

「いや、いい。……でも、もし何かされたら言えよ?」

「……え?」

 ロジャーが不審な行動を取る職員をキッと睨むと、いそいそと直人から離れた。神室も来徒も直人も、三人仲良く首を傾げる。

 皆、特に話をするでなく、湯に浸かってただただ疲れを癒していた。

 不図、浴場内に設置されたテレビのニュース番組に、とある老女が現れた。

 老女はスーツ姿で白髪を隠すことなく、朗らかな顔には鋭く輝く碧眼、ふくよかだが隙のない風貌で、マイク前に堂々と立った。

 下の字幕がこの女を〈アメリカ国防省/万国主義同盟総長/アンニ・クラーク〉と説明。英語で喋られる言葉が、同時通訳によって日本語で直人らに届けられる。


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