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the Spree of the Naïve Honest  作者: けら をばな
第二章・死にたくなけりゃ、さっさと戻れ
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vii――みんなの強み

「獣攻型〈突偽〉、ミア・ミラーッ! 参るッ!」

 ミアの黒い肌を包む更に黒いタイツには、鳩尾から手足にかけて蜘蛛の巣状に張り巡らされている焦げ茶色の模様が、仄かに静かに光っている。

 肌にぴったりと密着するそのタイツは、ミアの恵まれた体躯(スタイル)を一切隠すことなく、放射状に伸びるその模様は豊満な胸で大きく崩れている。

 ミアは釘付けになっている男性職員の視線を一切気にせず、膝を大きく曲げ胸を大きく揺らし、空に向かって高く飛翔。その先には虚を突かれた〈妖精(スプライト)〉の群。空を安定して飛翔する熊蜂の様なホバリング――〈妖精(スプライト)〉の体の大きさを考慮すると、この翼では飛ぶことは不可能。翼表面を荒くしてレイノルズ数を下げているとか、そもそも飛翔に翼は使われていないとか言われているが、詳しくは分かっていない――で様子見している所に、ミアは突っ込んだ。

 カラテ家のように、臍下丹田に力を込め、全身の力を抜き、手を開くと背中から松の葉の様に細く尖った羽が生えて、同時に指の一本一本から鉤状の爪が伸びた。

〈妖精(スプライト)〉が各々の武器をこちらに向ける隙も見せずに、切り裂く、切り裂く。

 突き刺し臓物を引っ張り出したと思ったら、また切り裂く。

 傍目には無謀な特攻にも見えるこの戦法。だが実際は相手の特性をいち早く察知して攻撃される前に確実に仕留めていて、見る人が見れば安定感すら感じさせる。力の差をまじまじと見せつけられた〈妖精(スプライト)〉は、ミアの獣の様な眼光で凄まれただけで、途端に戦う力を失くしてしまった。……もっともこれは、〈妖精(スプライト)〉が元来戦闘などに向いていないことの証左でもある。

 ミアの前に戦闘意欲を順調に失くしてゆく〈妖精(スプライト)〉。

 そこへ追い打ちをかける様に、下からの『砲撃』。

 海上を素早く走る何か。

 その何かから発射される、高速の何か。ロジャーはその大型(西洋人としては平均より少し上程度)の体躯を〈妖精(スプライト)〉に捕捉させない程の速さで海面を走っている。直人・ミア同様にロジャーを纏う黒いタイツには、縦に横に格子状に青の光が走っていて、明滅を忙しなく繰り返している。体にぴったりと張り付いたタイツは、がっしりとした体格を隠すことなく、直人の細い体を見なれた女性陣には概ね好評で、つい意識してしまい頬を染める者までいる。

 そんな事とは露知らずロジャーは、きゅっと水面に立ち止り全身をしっかりと指令室のモニターの前に顕わにし、空を見て敵の所在を確認し、また黙って走り出した。

 このロジャーの〈突偽〉だが、二人と違う所がある。それはロジャーだけ明確な武器を持っていること。口径三十センチメートル、長さは五十センチメートルにも満たない、片手に持つ小さな大砲の様な『銃』。

 いつもの飄々とした表情ではなくむっつりと口を真一文字に結んだ顔で、淡々と狙いを定め、引き金を引く。面白い様に次々と当たる。しかしそこに喜びだとか達成感だとかを一切見出していない様な表情。

 ただただ狙い、引き金を引き続ける。

「重攻狙撃型〈突偽〉、動きに問題なし、概ね良好」

《了解。〈妖精(スプライト)〉残り百五十体、蓄電率九十二%です。引き続き撃退をお願いします》

 普段の姿とはまったく異なるロジャーの事務的な通信に引っ張られて、ごく事務的に応答する結衣菜。ロジャーは、

《了解(wilco)》

 と機械的に返すと、走り、銃を構え引き金を引いた。

 男女それぞれを魅了しながら、荒々しく切り裂いていくミアと、一体ずつ正確に落としてゆくロジャー。そんな二人の姿に感心しつつも、これまた正反対だなァと呑気に、半ば呆れ気味に見守る直人。

 そこにスズシロからの通信。《直人、一対一の通信だ。調子はどうだ?》

「特に憚りなく」

《いい子だ。序でに言うと、蓄電率は七十二まで回復。〈妖精(スプライト)〉は残り百匹を切った》

「そんな事重要な事、序でに言わないで下さい。……でも、順調なペースですね」

《「じゃあ、もう安心ですね♪」とか言うんじゃないぞ?》

「そんな可愛く言うつもりありません。先輩も歳を考えて下さい」

《よし、帰ったら二発な。謝ったってもう遅い》

「うわ、横暴!……でも、大丈夫じゃないですか? 心配しなくっても、あの調子なら」

《駄目だ。気を張れ、戦闘中だぞ。……「そんな事あなたが言うな」とか言うなよ?》

「思ってもいませんでしたけど。でも、何か気にかかる事でも?」

《他でもない、あの二人の動きだ。何と言うか上手く言えんが……多分隙が出来る、そこを突かれるかもしれん》

「……了解。指示を待ちます」

 不意に直人が立ち上がると、モニターには直人の可愛らしいお尻がいっぱいに映る。タイツによって形がくっきりと分かり、女性陣から「キャッ!」という黄色い歓声が上がり、一部男性陣の視線も釘付けにした。すぐさま結衣菜が通信のスイッチをオン。

《そうです、それです! 自信を持って下さいっ! それが直人さんの強みですからっ!》

「……え、ごめん、ちょっと分かんない。いきなりなんの話?」


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