iii ――みんなちがって、みんなやっかい。
――なんてことがあって。ミアとロジャーが、二人浮かない顔で仲良くスズシロの前に正座していた。スズシロは竹刀を片手に持って横柄に二人を見下げている。
それを不安げに押し黙って見つめる直人と、対照的に慌てふためく神室。
「あぁあぁあぁッ! ちょっとまずいですよこれ、人権問題ですよッ、国際問題ですよッ!?」
「大丈夫。証人はこれだけだ。口裏合わせを頼むぞ」
「被害者がいる前で工作談義!?」
「その……ミズ・スズシロ、ちょっといいでしょうか?」正座したまま手を上げてるミア。
フンッと偉そうに鼻を鳴らし竹刀片手に威嚇するスズシロ。「口から糞垂れる前と後ろに――」
「それ以上いけないッ!!」怒鳴る神室。
「チッ、同僚がヒス女でチビ女が上司とは、つくづく運がねえぜ」ロジャーが吐き捨てる。
「なかなか立派に日本語を使いこなせているな。偉いもんだ。だが口の利き方に気をつけるんだな。生活態度は立派な査定対象だ。上官への暴言は事と次第によっちゃ生半な懲罰じゃ済まされんぞ。銭が惜しかったら大人しくしてんだな」
スズシロはトントンとロジャーの肩を竹刀で叩きながら、飄々と見下した態度を取る。ロジャーは悔しそうに臍を噛む。そんな姿に、直人は少し感心……したがすぐに思いなおす。
ミアは気付いた様にもう一度手を上げる。
「あ、それそれ。ミズ・スズシロはここでは司令官でいらっしゃる筈。何故白衣など?」
「何だ知らなかったのか。司令官アンド開発研究員だ。文句あッか」
「そ、それはまた……」
ミアの顔に不安の色が浮かぶ。それも無理はないだろうと直人は思う。自分の命を、所謂素人に任せる訳だから。というか今までうまくいっている事自体が奇跡だが。……
「ケッ、ごっこ遊びじゃねえんだぜ。こんな奴の言う事聞けだなんざ堪ったもんじゃねえな」
「そうだ。死にたくなけりゃ必死でやりな。一瞬一瞬を精一杯頑張って、悔いの残さねえようにな。化け物に臓物喰われてる時に後悔したって遅いからな。――ああ後、この事については私もずっと文句を言っている。お前らの方からも本部に文句を言ってくれると助かる」
いちいち負けないスズシロに、直人は何もできなかった自分と対比させて、今度は素直に感心してしまう。ロジャーは悔しそうに、少々子供っぽく顔をそむけた。
ロジャーは二十五歳。長身でがっしりした体躯で、見た目は大人びているが、つまり直人とは六歳しか離れていない。しかし十七歳から〈突偽〉使用者として実戦に出ている為経験は豊富かつ成績優秀で仲間から信頼されていた。
対してミアは二十八歳でロジャーと歳は近い。大学を出た後地球軍に入った為、年齢の割に実戦経験は浅いが、それでも優秀な成績を修めているようである。当然仲間からは信頼されていた。
この二人、ぴったり重なる部分と、正反対な部分が混在している。
……故に厄介だとも言える。




