喪女の日常と習慣と就活1
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「喪子ちゃあん!」
ふっと呼ばれた名前を、こう変換してしまうあたしは終わっているのだろうか。
彼氏いない歴=年齢、告白されたことはおろかしたこともない、短期女子大に通ういわゆる喪女。それがあたしである。
ついでに言うならちょっぴりオタク風味。繰り返すけど、ちょっぴりである。どっぷりじゃあない。
「はいはい、なんでしょーか?」
とりあえず手元を動かしたまま答える。
学校から帰ったらまずお弁当箱をシンクに出しておかないと。中学からの習慣だからね。
そんなあたしの行動を見て、相手も慌てたようにスポーツバッグからお弁当箱を取り出そうとして…今日は持っていかなかったことに気が付いたらしい。
「ねぇ、聞いてよモコちゃん!」
どこぞのハムスターの飼い主みたいな愛称で呼ぶんじゃない!と、言いたかったけれど諦めた。
あたしの名前は智子であってモコちゃんではないのだけれど、もう今更訂正も修正も不可能だろう。
あたしにとってのお弁当箱と同じで、昔からの習慣とは身体に染み付いてしまっているんだから。
「なーに? おやつなら昨日の鬼まんじゅうならあるけど?」
「うん、ちょーだい。あ、おれ玄米茶がいい!」
「じゃあおじさんの分も入れるから持っていって。ついでにトイレットペーパー買ってきて」
「うん」
キッチンの対面にあるダイニングチェアに座ると、ヤツは肩からスポーツバッグを脇に降ろした。
「ほら、お茶入れるまでに、手を洗って。それから洗濯物も洗面所に出してきなさい」
「はーい」
お母さんかっていうセリフに素直に従う背中を見やりながら、急須と湯呑を3人分セットする。180センチ…は、ないか。でもまぁ、175センチはあるかな?
その髪は暗めの茶色に染められていて、ワックスで遊ばせている。
あたしが高校生だったときは、そんなの不良だと思い込んでやりもしなければ近付きもしなかったのに、ヤツがするのは許せてしまう。うん、似合うんだよ、コレが。
顔だって、なかなかのイケメンであると、身内の欲目を差し引いても十分思う。
ヤツの名前は大輔。
一応言っておくけど、あたしの息子ではない。ヤツはあたしの家の隣にある個人経営の薬剤薬局の一人息子である。
おじさんはまだ大輔が小学生ときに離婚して、以来我が家でよく預かるようになった。
とはいえ我が家は共働きで、中学生だったあたしが大輔の面倒のほとんどをみてやったのだ。
それはおやつ作りに始まり、いつの間にか両家の家事のほとんどになっていた。
今でもそれは継続中で、高校一年生の今でも、大輔は帰ってくるとまずは我が家の玄関を開ける。おやつが目当てなのは言うまでもない。
さて、鬼まんじゅうも温めるか。
育ち盛りの高校生の為に、少し多めにしてやるのはオヤゴコロってやつなのだろう。
6/16、勝手ながら編集しました。