声がないと不便だなぁ・・・
女の子が、倒れていた。
(・・・・・・・・・・・・・・・え?)
俺は一瞬どころではなく、たっぷり十拍ほど思考が停止した。
(女の子?は?え?なんでこんなところに女の子が?)
髪は染めているのか明るい茶色。顔は可愛く、身体は小柄で、服装は不思議なことに、寒いのに白いワンピース一枚だった。
「・・・お、おい。大丈夫か?」
触れるのはためらわれたので、声だけかける。
しかし、起きない。
あまり温かい格好はしてない。三月とはいえ、まだまだ寒い。このままでは風邪をひいてしまう。
(・・・しょうがない・・・)
「おい!風邪ひくぞ!」
肩を軽くつかみ、揺さぶる。
すると、ゆっくりと目を開けた。
(・・・え?緑・・・?)
日本人ではない。もしかして、髪も地毛なのだろうか。
緑の瞳がさまよい、俺に焦点を合わせた。
目が、あって、彼女が笑った。
心臓がはねた。
誰かと見間違えて笑ったのかもしれない。
でも、俺に向かって微笑まれたような気がした。
可愛い子から微笑まれて舞い上がらない野郎がいるか。いや、いない。
もしいたとしても俺は違う。
思わず、口がきけなくなった。
ぱくぱくと口を開け閉めする俺に、女の子は不思議そうな表情を浮かべた。
その表情に我を取り戻し、咳払いでごまかす。
「・・・と、とりあえず!そんな格好じゃ風邪ひいちゃうよ!これ、貸すよ!あ、でも嫌かな・・・」
自分の上着をぬぎかけ、迷った。
女の子の方を見ると、にっこりと笑った。
了承と思い、上着を渡す。
目を開き驚く。俺の顔と上着を見比べる。
迷っているのかと思い、上着を肩にかけてあげた。
上着を見、俺を見て、また笑う。
「あ、えと、その・・・な、なんでこんな所に寝てたの・・・?」
問いかけるが、不思議そうに首をかしげる。
「え、もしかして耳が聞こえてない?」
首を横にふる。どうやら意思の疎通はできそうだ。
「えぇと、声が出せないの?」
うなずく。
俺は腕組みをした。
「あぁ、じゃあ、大変だな・・・」
そこまで言ってから尻が冷たくなっているのに気づいた。
慌てて立ち上がる。
土に座っているのを忘れていたのだ。
「あ。す、座ろうよ。土の上じゃなんだし・・・」
ベンチに座ると、すぐ横に座ってきた。
慌てて身体を離すと、またくっついてくる。
「・・・え、えーと・・・」
困って周りを見回す。と、手の中のコンビニの袋を思い出した。
「あ、ココアは飲める?まだ暖かいし・・・」
渡すと嬉しそうにあけようとしたが、あかない。
どうやら力が弱いらしい。
形のいい眉が下がり、泣きそうな顔になってきたので慌ててあけると、とても嬉しそうに笑った。
匂いを嗅いでから味を確かめるように少し飲んだ。
おいしかったらしく、表情が明るくなる。
(ホント、可愛いよなぁ・・・)
思わず見とれる。
目があいそうになって、思わずそらした。
(どうやって質問しよう?声が出せないんだから・・・)
「・・・えぇっと、家はこの近くにあるの?」
首を振る。
「遠いの?」
うなずく。
「なんであそこに倒れてたか覚えてる?・・・自分の名前は覚えてる?・・・お腹すいてる?」
NO。YES。YES。
おにぎりは二個とも彼女のお腹の中に納まってしまった。
なんか、やけに彼女いないにしては女の子と話せるし状況に対応できてるような気が・・・w
・・・・・ま、まぁ細かいこと気にしてたらあかんですよね!
次の投稿はかなり遅くなるかもです。
色々とあるので・・・w