ロングスカートは階段を駆ける
昭和のヤンキー女子中高生って、制服のスカートを長くするのがスタイル。でも、うちの高校の女子の制服は、スーツみたいなデザイン。スカートはプリーツ・ギャザーがなく、数センチ、スリットが入ってるだけ。足を広げられないから、歩きづらい、駆けづらい。それでも、ヤンキー娘は、スカートを細く、長く仕立て直して、それらしいスタイルを貫く。
ヤンキー娘 畑野杏は、細長スカートでも爆速階段下りで、見る人を驚かせる。売店ダッシュで男子に引けを取らなかった。
「あの人、よっぽど、運動神経いいんやろな……」
そんな感じで、ヤンキーでもなんでもないクソ真面目な生徒の中にも、杏に憧れの目を向ける男子はいた。
3年生になったら、国公立クラスっていうのができる。ヤンキーもいるけど、たまに、地方の難関国立大に現役で受かる生徒もいる。中堅の県立普通科高校。底辺校でもなければ進学校でもない。だから、生徒はよく遊ぶってイメージがあって、中学生には意外と人気。「パラダイス」なんて言われてた。そんな高校だった。
あるとき、国公立クラスの優等生 南純也が1段とばしの荒技で、杏を階段で抜いた。杏は階段下りにはプライドがあったので、ショック大。ヤンキー女子は細長のスカートだから、1段飛ばしなんてできない。だから足の回転速度で、男子さえも置き去りにしてきたのに……。
(1段飛ばしとか反則やん!)
後ろから声をかけた。
「ズルい!」
南は驚いて振り向いた。
「えっ?」
これがきっかけで、顔見知りになった。話してみると、優等生とヤンキーという、立場違いのとっつきにくさはなかった。それからはパンの購入で協力。お互いが相手の食べたいものを覚えて、早く売店に着いたほうがパンを確保、相手に譲る……みたいな、協力関係になった。
卒業の日。
別れを惜しむ生徒たちは、それぞれのグループで群れて、校庭で話していた。まだ、スマホなんてない時代。インスタントカメラで撮り合ったりしていた。
ヤンキー集団の中から杏の声した。
「南君元気でね!」
南の姿を見つけたのだ。南も杏に気づいた。真っ直ぐに、杏を見て手を振り返した。
杏の隣にいた、ヤンキー男子が目を丸くした。
「国公立クラスに、知り合いがおったんか?」
杏は答えた。
「私 頭いい人好きやもん!」
南はもう校門を出ていた。




