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ドラゴンでレースしたら王都が滅びた  作者: じじじ
王国編

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8/23

おてんば姫とメガネのエージェント

【王都 西ゲート】


西ゲートは、各国のVIPを招き入れる重要区画だ。

AIDA隊員たちはそれぞれ所定の位置につく。

ダンとキースは、誘導エリアで"要人"の到着を待っていた。


そこへ──黄色のアラビアンドレスを揺らしながら、セシリア一行が現れる。

後ろには数名の従者、そして侍女カトレアがきっちりと歩調を整えていた。


カトレアが丁寧に会釈する。


「AIDAの皆様。本日は姫様の護衛、どうぞよろしくお願いいたします」


ダンもきっちり返礼する。


「AIDAのダン・セイブレンです。

こちらのフェンリルは爆発物不審物探知用のアポロ号。

以後、警備行動にご協力をお願いします」


セシリアが前へ出る。


「セシリアよ。よろしくねー!」


声は明るく、立ち姿は軽い。

王族らしさゼロではないが、堅苦しさは完全に欠片もなかった。


面喰らうダン。

その横でキースが笑みを浮かべながら言う。


「同じくキース・アンダーソン。

お会いできて光栄です、セシリア陛下。今日はしっかりエスコートします」


「よろしくねキース!

かわいいワンちゃんと⋯

えーと、…メガネの人も!」


「姫様……っ!」

カトレアが慌てて袖を引っ張る。


ダンは一瞬だけ瞬きし、淡々と返す。


「ダン・セイブレンです。

あと、フェンリルは犬ではありません

以後お見知りおきを」


キースは後ろで肩を震わせて笑っていた。


ーーー


ダンはスマホの警備マップを開き、説明を開始する。


「陛下、これより移動ルート・警備計画の説明を——」


「ねえ、屋台って行ける?

今日の屋台限定で食べられる

ドラゴンフライドチキン ファイアブレス味

っていうのが本当においしそうで!」


気付けばセシリアの右手には

【満喫!アズラン王国のあるき方】というタイトルの本が握られていた。


「姫様、観光ではございません」


素早く雑誌を取り上げるカトレア。


頬を膨らますセシリア。


「屋台は、セキュリティ上、完全に禁止です。」


「えー……だめなのぉ〜」


「禁止です」


「だって食べてみたいじゃない?

 国王杯だよ?今日はお祭りなんだし!」


ダンは冷静そのもの。


「本日は殿下の安全を最優先します。行動範囲はAIDAが管理します」


「はいはい。わかってるわよ〜。

 ……でも、ちょっとくらいなら」


「ちょっともダメです」


「いじわる!」


「姫様、失礼でございますよ」


ジトッとした目で叱るカトレア。


後ろでキースが吹き出す。


「まあまあ、ダンはこう見えて優しいですよ。

このあとチキンの一つや二つくらい買ってきてくれますよ」


「え、ほんとに!」

目をキラキラと輝かせるセシリア


「……キース、冗談はやめてくれ」


カトレアがぴしゃりと言う。


「姫様、AIDAの方々はお仕事です。あまり振り回してはいけませんよ」


「はいはい、気をつけるってば〜」


だがセシリアの瞳はすでに遠くの賑わう観客席のほうに向いている。

国王杯の空気が、彼女の足を自然とウキウキさせていた。


ダンはその様子を数秒だけ観察し、静かに息をつく。


その時だった。


ペチ、ペチ、ペチ……。


妙な音が後ろから聞こえ、全員が振り返る。


「……アーシャ?」


アーシャのヒゲがアポロの顔を ペチペチ と容赦なく叩いていた。


最初のアポロは冷静だった。

“任務中だから耐えている”という顔だ。


だがアーシャは遠慮という言葉を知らない。


ペチペチペチペチペチ。


ついにアポロの鼻先がピクついた。


「……グルル……」


アーシャは挑発するように目を細め、

ヒゲをぴん、と立てて見せた。


完全にケンカを売っている。


次の瞬間、アポロの自制心が弾け飛んだ。


「グワッ!!」


「やめろアポロ!!」

ダンの静止もむなしく、アポロはアーシャへ突進。


しかし──


アーシャは軽く地面を蹴っただけで、

くるん、とバク宙のように宙を舞い、華麗にアポロを回避する。


「すごい!どこで覚えたのそんな技!?」

セシリアは拍手しながら目を輝かせる。


「姫様!そういう問題ではありません!!

早く止めてください!」

カトレアの悲鳴が響く。


二匹と三人がドタバタとするその光景を見て、

キースは肩を揺らして笑った。


「やれやれ……今日の仕事は楽しそうだな」


ダンはアポロを抑えながらつぶやく

「……いや、今日の仕事は割に合わん……」

彼には珍しくメガネが大きくズレていた。


セシリアはというと──

アーシャとハイタッチしてご満悦だった。


「アーシャすごい!天才!」


しかし、このあとカトレアにみっちり叱られたのは言うまでもない。

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