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ドラゴンでレースしたら王都が滅びた  作者: じじじ
王国編

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7/23

国王杯、作戦会議

王都アズラのドラゴニクス競技場は、朝から異様な熱気に満ちていた。

空気を震わせるドラゴンの咆哮、観客席のざわめき、整備区画にこもる金属音。

世界が一年でいちばんドラゴンに酔う日——国王杯だ。


国王杯。


王国の誇る国技・ドラゴニクスの最高峰にし て、年に一度だけ行われる夢の舞台。


選ばれた6騎が、305kmのクラシックコースを舞台に、たったひとつの栄光を奪い合う。


レイは所属チーム ジークフリードの作戦ルーム で、監督の説明に耳を傾けていた


「まずコース全体だが……今年は風が強い。

特に北側の海上区間は乱気流が増える。油断するなよ」


監督はホロマップの四分割図を指し示す。


①海上区間:強風で平衡感覚が試される。序盤の振り落とし。

②森林区間:木々のあいだを抜ける技巧勝負。接触は失格。

③山岳区間:突風と高度差で体力を削る。勝負の焦点。

④平野区間:障害なし。トップスピードの殴り合い。


ピットインは最大3回まで。

ドラゴンの肉体とエンジンを守るため、配分がすべてを決める。


「最大の敵は……わかるな?」


「ライナルトさん、だろ」


「そうだ。あいつは序盤からの全開逃げ切りが十八番だ。

 つられて追ったら、お前とアークの体力じゃ山岳区間まで持たん。

 絶対に序盤でブーストを吐くな」


「わかってるよ、おやっさん」


「誰がおやっさんだ。

監督と呼べといつも言ってるだろ」


 監督は鼻で笑いながらも、誇らしげに腕を組む。


「……まあ、楽しめ。

今日はお前がこの空の主役だ」


「よーし次は俺の番!」


油の匂いとともに、パトリックが工具箱を抱え て入ってくる。


「アークのブースター、昨日の夜ぎりぎりまで弄った。


出力持続時間が2秒伸びたぞ。すごくね?」


「二秒!? 本気で!?」


「おうよ! ただし.......使いどころ間違えるなよ? 全出力出せば時速300キロを超える。 ドラゴンにも負荷がやべぇ。 平野区間まで温存するのがベストだ」


「わかったよ、パトリック

ありがとうな」


「おう。今日も騎士とドラゴンの力……見せつけてやれ」


作戦会議を終え、レイが通路を歩く。

胸には緊張と興奮がないまぜになった熱が渦巻いている。


その先に、ゆったりと歩くひとつの背中があった。

白銀のマントが風を受け、黄金の髪が淡く光る。


──伝説の騎士。

ライナルト・グローリー・アークレイグ。


レイの足が自然と止まる。


ライナルトは立ち止まり、こちらへ振り返った。

そして柔らかく目を細める。


「約束を果たしたな、レイ」


「……っ! え、覚えて……くれてたんですか!?」


少年の頃の自分が叫んでいた声が、一瞬で胸によみがえる。


『ライナルトさーん!! 絶対に優勝してね!!』

『約束を守るのが騎士だ。任せておけ』


あの日の言葉。

憧れの背中。

レイが騎士を目指した原点。


まさか覚えているはずがない。

ただのファンの少年の声を。


でもライナルトは、軽く笑って言った。


「君の声はよく通った。忘れようがないさ。

 それに……本当に約束を守ってここに立った者を、忘れる理由がない」


胸が熱くなる。

言葉が震える。


「……俺、もう……あなたに憧れているだけじゃいられません。

 今日はライバルとして飛び、あなたを越える。

約束します」


ライナルトはゆっくり頷いた。


「それでいい。

 誇りを持って飛べ、レイ。

 ──騎士は、約束を守るものだ」


その一言は、少年時代から続く物語を

今日の国王杯へとつなぐ「答え」になった。


ライナルトが歩き去る。

揺れたマントの残り香のように、言葉だけが胸に残る。


レイは拳を握り、アークのいるピットへと走った。

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