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ドラゴンでレースしたら王都が滅びた  作者: じじじ
王国編

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メガネエージェントと笑上戸のエージェント

【ヴェルデ公国 首都セレスティア】

透明な強化ガラス越しに、

都市のネオンがきらめいている。


公国の中心部国際治安庁 《AIDA》の本部は、 巨大な刃のように夜空へ突き刺さっていた。


その最上階会議室では、明日の国王杯警備任務に 向けた最終ブリーフィングが行われていた。


「以上が現地での配置だ。」


淡々と指示を飛ばすのは、

低く通る声が会議室全体を締める。

室長 グラハム・ルードヴィッヒ。

端正な顔立ち、鋭い眼差し、計算され尽くした沈黙。

その存在は、そこにいるだけで他者を律する。


「特に西ゲートは要人用ルートだ。

ダン、キース。

お前たちは首長国の姫君セシリア殿下の護衛を担当してもらう。

重要な任務だ。頼んだぞ。」


小さく、しかし力強く敬礼する2名。


「明日に備えてゆっくり休んでくれ。

解散」

グラハムの一言で人々は散り散りになっていく。


書類を片付けるダン・セイブレン。

その隣でバディの キース・アンダーソン がニヤニヤと笑う。


「俺たちは姫さんの護衛だってよ!

まるで王子様だな!」


無言で透かすことにしたダン。


軽口を叩きながらも、キースの目は鋭い。

ダンと並びAIDAでも指折りの狙撃手。その腕は本物だ。


「おまけに絶世の美女ときたもんだ

今夜は眠れないかもしれん⋯」


「そう言ってたとお前の婚約者には言っておく」


「やめてくれ、怒られる」


少し怯えた表情をし彼女のことを思い出す。


「そういえばあいつも国王杯みたいって言ってたなー」


「お前ももうすぐ人事課へ異動だろ?

来年は一緒に見られるんじゃないか?」


「それもそうだな!今から楽しみになってきたぜ」


それのやりとりを知ってか知らずか

ダンの足元では、神獣フェンリル──アポロが静かに尻尾を振っている。


「アポロも来年一緒に見に行くか??

国王杯」


プイとダンを見つめるアポロ


「アポロは現場が好きみたいだな」


「⋯俺と同じだな」

ダンはアポロの額をそっと撫でた。


ー ー ー ー


ダンが資料を抱え廊下へ向かったその時、背後から声が落ちた。


「ダン」


「……娘は元気か?」


振り返ると、グラハムが無表情のまま立っていた。

夜のライトが眼鏡のレンズに薄い光を乗せ、瞳の色を読ませない。


「ええ……エレナは。問題ありません」


「そうか。良いことだ」


淡々と頷く。

その声音は、ただの業務連絡のように聞こえた。


「……しばらく会えなくなるかもしれんがな」


「……は?」


ダンの足が止まる。


グラハムは肩を軽くすくめた。


「長期任務になり得るという話だ。珍しいことでもない。気にするな」


「室長、それは──」


「ダン。任務に集中しろ。それだけだ」


それ以上の説明はなかった。

必要ない、という無言の圧があった。


踵を返し、グラハムは静かに去っていく。

足音はほとんど響かず、影だけが床に長く伸びていた。


「……なあダン。今のなんなんだ?」


 キースが横からのぞきこむように言う。


 ダンは無言で眼鏡を押し上げた。


「わからん。だが──室長があんな言い方をするのは初めてだ」


「だよな。あの人、言わなくていいことは絶対言わないのに」


 キースですら表情を引き締めるほど、グラハムの言葉は異質だった。


 “しばらく会えなくなるかもしれない”


 それは予言ではなく、確信めいた響きを持っていた。


(……何を知っている、室長)


胸の奥で、不安というより違和感に近いざわつきが広がる。

理由はわからない。ただ、いつもの任務前とは違う空気を感じていた。


アポロが低くうなり、ダンの横顔を見上げる。


「……アポロも感じているのか?」


アポロは答えない。だが沈黙が、肯定のようにも聞こえた。


「ま、考えてても仕方ねえよ。今日はもう上がりだ。コーヒーでも飲もうぜ、相棒」


キースの肩の力の抜けた声が、ほんの少しだけ場の空気を戻す。

ダンは息を吐き、歩き出した。


「……すまない。今日は寄るところがあってな」


「ローズのとこか?」


「ああ、エレナの世話をしてもらってる。

⋯もう少し預かってもらえないか確認しないとな」


何かが起こる。

グラハムの言葉が頭から離れない。


自身の娘にさみしい思いをさせている後ろめたさはある。

今度の土産はエレナの好きな王国のはちみつのクッキーを買って帰ろう。


心に決めるダンであった。

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