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ドラゴンでレースしたら王都が滅びた  作者: じじじ
王国編

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23/23

銀髪の少女

ライナルト達と別れたあと、

セシリアたちは王城前の大通りを走っていた。


その時上空にドラゴンに乗った竜騎士が現れた。

先ほどまでライナルトと一緒にいた男だ。

セシリアたちの前に降り立ち、笑顔で告げる。


「セシリア様。

 ドラゴンにお乗りください。

 私が安全圏までおく⋯り――」


言葉は、途中で断ち切られた。

空気を裂く金属音。

次の瞬間、竜騎士の胴が、糸で断たれた人形のように崩れ落ちた。


「……え?」


頭上から降りてきたのは、蜘蛛のような影。


八本の脚。


人型の上半身。


腹部から伸びる鋼糸が、まだ血を滴らせている。


――アラクネ型。


愛竜が咆哮する間もなかった。

鋼糸が絡みつき、関節を引き裂き、巨体が地に叩きつけられる。


「――っ!」


セシリアの喉が、音を失う。


彼女を庇うように前へ出たのは、カトレアだった。


「姫様には――

指一本、触れさせません!!」


腰に携えたシャムシールを構える。


声は強い。


だが足は、恐怖に震えていた。


アラクネ型が、嘲るように脚を鳴らす。


――その瞬間。


銀の閃光が、横合いから突き刺さった。


蜘蛛の脚が、一本、音もなく切断される。


「……?」


全員の視線が、同時にそちらへ向く。


瓦礫の上にあったのは、

銀髪の少女の後ろ姿だった。


人の姿。


だが、動きが“人間のそれ”ではない。


次の瞬間。


少女は空間を滑るように踏み込み、

肘で関節部を破壊し、

回転しながら踵で腹部装甲を砕く。

火花。


断線音。


アラクネ型は悲鳴すら上げられず、崩れ落ちた。


「……制御干渉、検知」


少女の瞳が淡く発光する。


「外部リンク、遮断。

自己判断モードへ移行――」


一拍。


「――ここからは、私の意思で動く」


完全に沈黙したアラクネ型を背に、少女は振り返った。


「……助けてくれたの?」


セシリアの問いに、少女は短く首を振る。


「まだ終わっていない」


「こんなの⋯間違ってる⋯」


無機質だが、力強さを感じる声だった。


次の瞬間、路地の奥から赤い光がいくつも浮かび上がる。


アンドロイドの群れだ。


数、二十以上。


少女は一瞬だけ、敵の配置を計測する。


(個体性能では問題なし。

だが、同時対応数が閾値を超える)


彼女は、初めて後方を見る。


「あなた達、戦える?」

 

カトレアが何か言おうと口を開いた、その瞬間。


「もちろん!」


セシリアが、一歩前に出た。


「見てるだけなんて、嫌!

ここでやらなきゃ――王家の名がすたるわ!」


そう言って、アーシャの髭を容赦なく引き抜く。


「ニャー!?」


悲鳴を上げるアーシャ。


「文句言わないの!

どうせ明日には生えてくるでしょ!?」


なにか言いたげなアーシャ。


抜かれた髭は瞬時に雷を宿し、鞭へと変わる。


「姫様!危険です!

 おやめください!」


カトレアの叫び。


だがセシリアは引かない。


「どうせ死ぬなら、戦って死ぬわ!」


銀髪の少女は、淡々と告げる。


「来る」


次の瞬間、

戦場が弾けた。


先陣を切ったのは、セシリアとアーシャ。


雷を帯びた鞭が空を裂き、

アンドロイドの装甲を焼き切る。


マキナは、その横を猛スピードで追い越す。


一体、二体、三体。


殴打、破壊、投擲。


セシリアが一瞬、足を取られる。


刃が迫る。


――カトレアの剣が、割って入る。


「姫様!」


その隙を、アーシャが逃さない。


雷撃が叩き込まれ、敵は沈黙する。


気づけば――

最後の一体を、マキナが粉砕していた。


「……制圧完了」


静寂。


「勝った……のね!」


セシリアが息を弾ませる。


「全く!

 無茶は控えてください……!」


カトレアが苦言を呈する。


その会話を、マキナは背に聞きながら――

別の“音”を拾っていた。


人間には届かない距離。


瓦礫の向こう。


(⋯悲鳴⋯二人⋯子供)

静かに分析する銀髪の少女。


「……あなた達は退避して」


それだけを残し、

"彼女"は目にも止まらぬ速度で、闇へと消えた。


人でも、機械でもない存在が、

また誰かを守るために。

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