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ドラゴンでレースしたら王都が滅びた  作者: じじじ
王国編

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19/23

初陣

瓦礫の向こうから、金属が地面を削る音が重なって響いた。

赤い光が、闇の中で瞬く。


五体。

距離、約三十メートル。


「……来るぞ」


ダンの声は低く、感情の揺れがない。

銃を構え、視線だけで敵の配置をなぞる。


「了解。じゃ、みなさま張り切ってどうぞ!」


キースは軽い調子で言いながらも、すでにハンドガンを両手で構えていた。

前髪の影に隠れた目だけが、獲物を射抜く色になる。


レイは剣を握り直した。

喉が鳴る。

心臓が、速い。


(……やるしかない)


一歩、踏み出す。

次の瞬間、レイは“走っていた”。


自分でも驚くほど、迷いがなかった。

瓦礫を蹴り、低い姿勢のまま敵陣へ突っ込む。


「おっ……」


キースが思わず声を漏らす。


アンドロイドの一体が反応し、刃を展開する。

レイはそれを真正面から受けなかった。

半身でかわし、すれ違いざまに剣を振る。


――ガキンッ!!


火花。

装甲が裂け、内部のフレームが露出する。


(当たった……!)


驚く暇もない。

次の一体が横から迫る。


レイは踏み込んだ足を軸に、身体をひねった。

ドラゴンの背で覚えた感覚。

重心を預け、風に乗るように――


剣閃が弧を描き、アンドロイドの関節を断つ。


崩れ落ちる金属。


「まじかよ……」


キースが素直に驚いた。


「やるじゃないの!」


ダンは無言。

だが銃口の動きが、わずかにレイを追う。


(三体目……!)


背後から、重量級の個体が突進してくる。

レイは直感で跳んだ。


間一髪。

地面に刃が突き刺さる。


その隙に、レイは剣を振り下ろす――が。


「……っ!」


浅い。

装甲を断ち切れず、刃が弾かれた。


「おっと危ないよー」


軽い声と同時に、銃声。


パンッ!


アンドロイドの頭部が砕け、倒れる。


「後ろ、がら空き」


キースは笑っているが、視線は鋭い。


「今のは完全に死んでたね」


レイは息を荒くしながら、歯を食いしばる。


(……しまった)


四体目。

動きが速い。

レイは迎え撃つが、わずかに踏み込みが遅れる。


剣を振る――

しかし、致命打にならない。


その瞬間。


ダンが前に出た。


無駄のない動き。

一発。

関節部。


アンドロイドが崩れ落ちる。


「……予想以上に動けるな」


ダンは淡々と言う。


「だが、剣の軌道が甘い。

 力任せになり始めてる」


「……すみません」


「謝るな。生きていれば修正できる」


そのとき。


遠くで、かすかに光が反射する。


「……スナイパーか」


ダンが即座に判断する。


瓦礫の影。

赤い光が、こちらを捉えていた。


だが――


影が、音もなく近づく。


低く、速い。


「……」


スナイパーは気づかなかった。

自分の背後に“何か”がいることを。


次の瞬間。


黒い影が跳ぶ。


――アポロ。


喉元に噛みつき、引き倒す。

ダンが二発、正確に撃ち込む。


撃破。


「ナイス連携」


キースが短く言う。


残る一体。

三人で包囲する。


レイが正面。

ダンが右。

キースが左。


「行け」


ダンの一言。


レイは深く息を吸い、踏み込んだ。

剣を振る。

今度は、迷いがない。


刃が、確かに核心を断った。


最後のアンドロイドが崩れ落ちる。


静寂。


レイは、その場に座り込んだ。

膝が震える。

腕が重い。


「初陣でこれは上出来だ」


ダンが言う。


「いやー、ほんと。

 俺たちの初陣より派手だよ」


キースが軽く笑い、肩をすくめる。


「ただし」


ダンが続ける。


「このまま一人で突っ込むな。

 次は助けきれない」


レイは頷いた。


胸の奥で、いろいろな感情が渦巻いていた。

恐怖。

高揚。

そして――使命感。


「……先を急ごう」


ダンが背を向ける。


「待ってるヤツがいるんだろ?」


レイは立ち上がり、剣を握り直した。


(……アーク、みんな

 必ず見つける)


三人は、瓦礫の奥へと歩き出した。

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