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ドラゴンでレースしたら王都が滅びた  作者: じじじ
王国編

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11/23

ピットへの帰還、森林区画へ

海上地帯を抜け、競技場が騎士たちの視界に戻る。

ピットへ帰還した騎士とドラゴンたちを迎え、

競技場は再び大歓声に包まれていた。


巨大モニターに映し出される映像。

熱い戦いを繰り広げる竜影に、観客席は沸騰したままだ。


「すごい……! ライナルトとユランって、ほんとにすごいのね!」


セシリアが身を乗り出し、興奮した声を上げる。

両手を胸の前で握りしめ、目は完全にモニターに釘付けだ。


「ああ。なんせ王国の生ける伝説だからな」


隣でキースが気軽に答える。


「……友達か?」


間髪入れずにダンが突っ込む。


へらりと笑うキースを横目に、

ダンはゆっくりと視線を会場全体へ走らせた。


――こういうときこそ、だ。


人々の注意が一点に集中し、

歓声と興奮が空気を満たす瞬間。


警備にとって、最も“死角”が生まれやすい。


観客席。

通路。

上段の影。


先ほど視線が合った黒装束の男の姿は、見当たらない。


(……気のせいであればいいが)


そう考えた、そのとき。


ピッ、と短い電子音。

耳元のインカムに通信が入る。


「こちら東側警備班のウィルソンだ。

 先程の黒装束の人物を確認した」


ダンは即座に意識を切り替える。


「状況は?」


「現時点で不審行動は確認されていない。

 ただし――何かを探している様子だ」


「追跡は?」


「距離を保ちつつ、引き続き監視を継続する」


「了解。幸運を祈る」


通信が切れる。


ダンは小さく息を吐き、足元に伏せる相棒へ目を向けた。


「どう思う、アポロ」


問いかけると、

アポロは低く喉を鳴らし、首を傾げる。


答えはない。

ただ、濃紺の瞳がじっとダンを見返していた。


(まだ、何も起きていない)


(だが――)


再び歓声が爆発する。

モニターには、次の区画へ飛び立つドラゴンたちの姿。


その中心に、ユランとアーク。


「わぁ……次もすごそう!」


セシリアが無邪気に声を弾ませる。


その背中を横目で確認しながら、

ダンは胸の奥に引っかかる違和感を押し込めた。


――このまま、何事も起きなければいい。

そう願いながらも、

彼の目は鋭いままであった。


−−−


白銀の翼をたたみ、アークがピットに着地すると同時に、全クルーが一斉に動いた。


「ウィング消耗率、想定内! 右側交換入るぞ!」 「給油開始! 冷却準備!」


パトリックがノズルを引き抜き、霧状の冷却スプレーをアークの首筋へ吹きかける。

蒸気が立ちのぼり、アークは低く喉を鳴らした。


「体力はどうだ、レイ」


監督が顔を近づける。


「まだまだ余裕! ここからが本番だろ!」


その返事に、監督はにっと笑った。


「よし。存分に楽しんでこい。

 ――お前のレースを見せろ」


最後にアークの肩を叩き、手を上げる。

合図と同時に、レイは足を踏み込み、再び空へ飛び立った。


次なる区画――森林地帯。


「さあ来ました第二セクション!

 鬱蒼とした樹海を縫う、技巧と判断力が試される森林地帯だぁ!!」


巨大モニターに映し出されるのは、

先頭を疾走するライナルトとユラン。


木々の隙間を読むように、

枝と枝の間を“抜ける”のではなく“流れる”。


「見てくださいこのライン取り!

 木々を障害物ではなく、風の一部として扱っている!」


他のドラゴンたちはスピードを落とさざるを得ない。

翼をすぼめ、慎重に高度を調整する。


その中で――


「おっと!? 後方から一気に詰めてくるのはジークフリード!

レイとアークだ!」


他のドラゴンに比べ小柄な体躯が、この地形では武器になる。

枝をかすめるほど低く、無駄のない軌道で進む。


だが、そこへ割り込むように――

赤熱する炎。


「火炎系ドラゴンだ! 巨木を焼き倒したぁ!!」


燃え落ちる大樹。

その直前、ライナルトの進路が一瞬だけ乱れる。


「――!」


ユランが翼を大きく打ち、かわす。

だが、その背後で一騎が逃げ切れず、樹海へ消えた。


「リタイア! 一騎脱落です!」


好機。


レイは迷わなかった。


「行くぞ、アーク!」


直線専用のはずのブースターを、

あえてここで叩き込む。


違反すれすれ――いや、掟破り。


アークが咆哮で応え、

瞬間、視界が流れる。


トップスピード。


枝を跳ね、幹をかわし、

森そのものを踏み台にするように進む。


「速い! 一気に距離を詰めたぁ!!」


前方。

開けた空間。

滝。


白い水煙を切り裂き、

二頭のドラゴンが並んだ。


ユラン。

アーク。


その一瞬、

互いに視線が交わる。


「――おまたせしました!」


レイの声が、風を裂いた。


「ライナルトさん!」


ユランの背で、ライナルトが口元をわずかに緩める。


「やるな」


それだけ。


だが、次の瞬間には視線を前へ戻す。


――ここから先だ。


滝を越え、

次の区画へ。


「だが、ここからついてこれるか――」


言葉にせずとも、

背中がそう語っていた。


レイは笑う。


憧れじゃない。

追いかける背中でもない。


――今は、並ぶ。


ライバルとして。


二頭のドラゴンは、

再び速度を上げ、森林を抜けていった。

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