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おまけ:もしもハイドの母がアリサだったら

『追放令嬢の妹には復讐の才能がない! そして復讐相手は愛が重い』

4章6話 [ハイド] 愛という錯覚は呪いに違いない

より

---

 アリサは言っていた。

 思いというものは、共に歩むことが決まった相手と協力しあって育むものだと。

(貴女は……、それを体現できる人なのですね)

 もし彼女が母だったなら、今も自分のそばにいただろうか。

---

 このハイドの考えのとおり、ハイド母の立場にアリサを放り込んだ「イフ」の、【ハイドの父親視点】の物語+α。

ローゼ編との対比もお楽しみいただけると嬉しいです。


*作者の悪ノリです。若干の本編のネタバレを含むので、ご了承ください。


 アリサ・エマ・トゥーンベリ。

 筆頭公爵家の次女をマクロフィアに迎え入れられることになったのは暁光だ。たとえ鼻持ちならないワガママな令嬢だったとしても、家の立場を盤石にできるメリットは大きい。


 18の彼女は、両家の顔合わせで初めこそ緊張していたようだったが、食事が運ばれてくると目を輝かせて笑みをこぼしていた。

(ちょろそうだな……)

 公爵夫人として悪い取引相手に騙されないかが心配だ。そこはしっかり見る必要があるだろう。


 式を挙げて義務としての初夜を過ごす。

(いや待ってくれ。反応がカワイイんだが?!)

 彼女もまた義務のはずなのに、大事に受け入れられた感じがした。

 好感度が1上がった。


「きみはもうマクロフィアの人間だ。母上について商売を学んでほしい」

 公爵令嬢にそんなことをさせるのかと、目くじらを立てられる可能性もあると思いながら伝えた。


 目をまたたいた彼女は、次の瞬間、おいしいものを前にした時と同じように目を輝かせた。

「まあ! お義母様かあさまはマクロフィアの商売を大きく盛り立てた女傑ですわよね。そんな凄い方のところで学ばせていただけるなんて、光栄ですわ」

 予想外すぎる反応だった。好感度が1上がった。


 母の元につけたけれど、正直、仕事の面では期待していなかった。どう見ても、のほほんとした温室育ちの令嬢だ。大きな失敗さえしなければ十分だろう。

 と思っていたが、1週間もしないうちに、めったに人を褒めない母が手放しで褒めてくるようになった。

(そういえば学舎では首席だと言われていたか)

 意外すぎる。好感度が日々上がる。


 彼女がマクロフィアとして表に出るようになってから、取引上でギスギスした雰囲気になることが減った気がする。いくらか彼女の学びが進んだところで、商談にもなるべく連れ歩くようになった。

 そして気づいたのは、彼女が人たらしだということだ。どんなに気難しい相手でも、相手が喜ぶ言葉を当然のようにさらりと言う。恐ろしいのは、それが打算ではなく本心だというところだ。

(これはむしろ、俺が学ばないといけないな)


 尊敬できる女性は母だけだと思ってきたが、母とはまるで違うタイプなのに、彼女もまた尊敬できる。

 いつしかその細い腕が、とても愛しいものに変わっていた。


 息子が産まれた。ハイドと名づけたその子を、彼女はとても大事にした。

(息子にとられた気がするなんて、俺も大人気ない)

 時々子どもを使用人に任せて、2人の時間をとるくらいは許されたい。


「かあさま、ぼく、おおきくなったらかあさまとけっこんしたい!」

「ダメに決まっているだろう。母様は父様のものなんだからな」

「とうさまにはきいてないもんっ! かあさまはぼくととうさま、どっちがすきなの?!」


「ふふ。主人として父様のことが好きですし、わたくしたちの大事な子どもとして、ハイドが大好きですよ」

「とうさまはすきで、ぼくはだいすきなら、ぼくのかちだね!」

 彼女が幸せそうに笑う。そんな笑顔を見ていると心が洗われる気がする。外でイヤなことがあっても、彼女のそばでは安らげる。


(好き、か)

 貴族家の婚姻は家の問題であって、感情の問題ではない。愛せる相手と共に歩めたのだから、自分は運がいい。


 よちよち歩きの下の子が寄ってくる。

「ま!」

「あら、ふふ。ママですよ?」

「ま! ま!」

「あなた、聞かれまして?」

「ああ。……そろそろ3人目はどうだ?」

「はい、喜んで」





【 本編完結後、アリサ視点 】



「フォン様? 顔色がよろしくないようですが、いかがなさいまして?」


 王都の建国祭に来るのは2回目になる。去年はいろいろあった。ありすぎた。

 フォンたちが学舎を卒業して、週末や長い休みにしか会えなくなったのは正直さみしい。

 けれど、両家公認の婚約者になれた今は、別邸の同じ部屋で過ごせるのが嬉しい。


「……なんか、すごくイヤな夢見た」

「イヤな夢、ですの?」

「うん。なんでか、夢の中だと僕がハイドの父親でね。僕の(・・)エマと夫婦だった」

「あら、ふふ。フォン様が見た夢でしたら、それもまたフォン様ではありませんの?」


「そうなるのかな……?」

 難しい顔をして考えこんだフォンの頭をそっと胸に抱く。

「シオン。わたくしはあなたの元におりますわよ?」

「ん……」

 大切そうに抱きしめられて、情熱的な大人のキスをもらう。


「今年のプロムは僕がエスコートするからね」

「はい。婚約者であれば卒業後であっても参加できますものね」

「エマが卒業して王宮に来てくれるのが楽しみだな」



お読みいただき、ありがとうございました!


ぜひ本編の、アリサとフォンの物語もお楽しみいただけると嬉しいです。

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