【第二部 4章】政治家との駆け引き
シーン1:与党議員との密談
深夜の議員会館。
知紀は背広姿で個室に呼ばれ、与党の大物議員とテーブルを挟んで座っている。
与党議員
「……白石君、君のやっていることは立派だ。
若さゆえの情熱……嫌いじゃない。」
知紀は黙ってコーヒーを一口すする。
与党議員
「ただね、霞が関にも“流儀”があるんだよ。
君みたいな若造が急に制度を変えようとしても……潰されるだけだ。」
知紀は目を伏せない。
白石 知紀
「脅しですか。」
議員が口角を上げる。
与党議員
「いやいや、助言だよ。
……一つだけ提案しよう。」
議員が懐から封筒を取り出し、テーブルに滑らせる。
与党議員
「君が改革を一時凍結してくれれば……
このポストを君に用意する。
若くして異例の昇進だ。」
封筒を開くと、次期課長補佐昇進と将来の部長候補リストが入っている。
知紀は静かに息を吐いた。
白石 知紀
「つまり……黙ってろと。」
議員が椅子に深く座り、薄い笑いを浮かべる。
与党議員
「君の夢は何だ? 出世だろう? 総裁だろう?
近道を用意してやると言っているんだ。」
知紀の瞳が鋭く光る。
白石 知紀
「……その道じゃ、俺の理想には辿り着けない。」
議員がわずかに眉をひそめた。
与党議員
「若いな……まだ何も知らんのだな。」
知紀は立ち上がり、封筒を議員の前に叩き返す。
白石 知紀
「出世のためじゃない。
俺は、正しい制度を作りたいんです。
たとえ、ここを追い出されても――何度でも戻ってきますから。」
議員の冷たい視線を背に、知紀はドアを開け放って去っていった。
シーン2:ひかりの戦術
翌日、ゼミ部屋。
知紀が机に突っ伏し、頭を抱えている。
ひかりが無言でコーヒーを置く。
緒方 ひかり
「……断ったのね。」
知紀が疲れた笑みを浮かべる。
白石 知紀
「お前にも呆れられるかと思った。」
ひかりは机に資料をトンと置く。
緒方 ひかり
「私はむしろ評価する。
でも、このままだと次は君ごと潰しにくる。」
知紀が顔を上げる。
白石 知紀
「……どうすりゃいい。」
ひかりが冷たい笑みを浮かべる。
緒方 ひかり
「“敵の手の内”を先に世間に晒すのよ。
向こうが先に潰す前に、こちらが先に暴露する。」
知紀が目を見開く。
白石 知紀
「……爆弾を、先に投げるってことか。」
ひかりが頷く。
緒方 ひかり
「正論だけじゃ勝てないのよ、知紀。」
シーン3:公開討論会
数日後。
某テレビ局の公開討論会の特番。
知紀と与党議員が、生放送で向かい合っていた。
司会者が煽る。
司会者
「さて……若手官僚VS与党幹部、改革の行方は!?」
議員が余裕の笑みで口を開く。
与党議員
「白石君は理想を語るのは上手だが、現場を混乱させるだけだ。」
知紀が落ち着いた声で切り返す。
白石 知紀
「混乱の原因は“あなた方の隠蔽”です。」
スタジオにざわめき。
知紀がスクリーンを指すと、裏金リストが映し出される。
白石 知紀
「人事評価と癒着した予算の流れを、私が調べました。
改革を邪魔するのは誰か、国民の皆さんに見てもらいましょう。」
議員が顔色を変え、必死に言い返す。
与党議員
「君! それは違法に取得した情報だろう!」
知紀はきっぱり言い放つ。
白石 知紀
「違法? 正義と秩序、どちらを守るべきか――
それを決めるのは国民です!」
カメラのライトが知紀の横顔を照らし、拍手がスタジオに鳴り響いた。