【第一部 1章】人事異動の罠
シーン1:異動の噂
人事院の狭い休憩室。
昼休み、知紀がカップ麺に湯を注いでいると、背後からヒソヒソ声が聞こえる。
職員A(小声)
「聞いた? 白石君、上層部に睨まれたってさ。」
職員B(小声)
「そりゃそうだよ、総裁になるとか吠えたんだろ?
若さって罪だな〜。」
知紀は聞こえないフリをして、カップ麺の蓋を押さえながら深呼吸する。
白石 知紀(心の声)
(……ま、想定内だ。だが、まだ何もしてないうちから飛ばされるわけにはいかない。)
カップ麺をすすりながら、心の奥で小さく火を灯した。
シーン2:田所の人脈発動
その夜、赤ちょうちんの居酒屋。
田所が職員たちを囲んでジョッキを掲げる。
田所 俊介
「ほらほら〜! 今日は俺のおごりだから飲め飲め〜!
おい白石、ビール追加だ!」
知紀は苦笑いしながら席に座る。
白石 知紀
「呑気だな田所……こんなときに酒か?」
田所が知紀の肩をがしっと掴む。
田所 俊介
「呑気に見えるだろ? でもな、俺がただの体育会だと思ったら大間違いだぞ。」
田所が小声で耳打ちする。
田所 俊介(小声)
「お前の左遷話、誰が流したか当たりつけた。
部長の秘書課長だ。そいつが上に焚きつけてる。」
知紀の目に火が灯る。
白石 知紀
「……上等だ。」
ジョッキを合わせて、2人は無言で飲み干す。
シーン3:ひかりの逆襲資料
深夜のゼミ部屋(会議室を勝手に使っている)。
パソコンの画面が明るく、ひかりが無表情でタイピングを続ける。
緒方 ひかり
「……ふん。やっぱりあったわね。」
画面には「秘書課長 過去の人事評価操作データ」の文字。
背後で知紀と山下が見守っている。
山下 悠真
「……ひかりさん、これ……大丈夫なんですか?」
ひかりは淡々とUSBにデータを移す。
緒方 ひかり
「合法よ。公務員は公文書に正当アクセス権があるから。
それに……正義は我々にある。違う?」
知紀は笑いをこらえ切れない。
白石 知紀
「違わねぇな。お前、やっぱ頼りになるわ。」
シーン4:知紀の直談判
翌朝。
秘書課長室に、知紀が乗り込む。
秘書課長は煙草をくゆらせながら不敵に笑う。
秘書課長
「おや、白石君じゃないか。
何だね、朝から……」
知紀はデスクにUSBを置く。
白石 知紀
「課長の過去の人事操作、俺たち全部持ってます。
俺を左遷したきゃ、どうぞ。ただしこれ、上にもマスコミにも流れますんで。」
課長の顔から笑みが消える。
秘書課長
「……脅迫かね?」
知紀はニヤリと笑って答える。
白石 知紀
「違いますよ。情報開示のお願いです。」
部屋を出た知紀が、廊下で田所とハイタッチする。
田所 俊介
「いやー! お前ほんと馬鹿で最高だわ!」
シーン5:ゼミ結束強化
夜、ゼミ部屋。
コンビニのビール缶がテーブルに散乱し、4人が肩を組んで騒いでいる。
山下 悠真
「いやー、本当に飛ばされなくてよかったっす!」
緒方 ひかり
「フフ……まぁ、論理を通すのが私の役目だから。」
知紀が缶を掲げる。
白石 知紀
「乾杯だ! 俺たちで霞が関を乗りこなしてやろうぜ!!」
4人の缶がぶつかり、小さな音を立てて弾けた。