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発見された動画ファイル⑤

 ――撮影終了。

 お疲れ様、もう大丈夫だよ。


「やったー! もうヘトヘトっすよ……演技って大変すね」


 まあね。

 特に今回は長回しのシーンが多かったし。

 なるべくNGを出さないように注意したけど、それでも結構時間がかかったね。


「大内さん、普段からこういうの撮ってるんすか?」


 いや、よくあるドラマとか映画の依頼が多いよ。

 今回は趣味を全開にした感じだね。

 ●●君、付き合ってくれてありがとう。

 サイコパス役、迫真の演技ですごく良かった。


「へへっ、昔は役者志望だったんで。お役に立ててよかったす。というか、まだカメラ撮ってません?」


 ああ、これ?

 メイキング動画みたいなものさ。

 せっかくだから残しておこうと思ってね。


「なるほどっす。それにしても面白いアイデアすね。殺人鬼の日常をノンフィクションみたいに撮るなんて」


 モキュメンタリーとかフェイク・ドキュメンタリーと呼ばれるジャンルだね。

 最近は特に人気だよ。

 せっかくだから流行りに便乗したくてさ。


「売れるといいっすね。ちなみに動画はどこのサイトで見れるんすか?」


 実はまだ検討中なんだ。

 色々迷って決め切れなくてね。


 ところで●●君。

 ちょっとこっちに来てくれるかな。

 見せたいものがあるんだ。


「はいはい、何すかね……痛っ!?」


 ほら、動いたら危ないよ。

 ちゃんとまっすぐ立たないと。


「あの……大内さん? ほ、包丁が……刺さってるんすけど……嘘です、よね……」


 どっちだと思う?

 現実逃避するのも結構。

 君は信じたいことを信じればいい。


 私は好きに生きたいだけなんだ。

 窮屈な現代社会が肌に合わなくてさ。

 楽しいから拷問するし、人を殺すし、スナッフフィルムを撮る。


 付き合いの浅い君は知らなかったろうけどね。

 私はずっと、こういう人間だよ。

 とうとう我慢できなくなったから、自分の本性を肯定することにしたんだ。


「うぎゃっ、やめ、てっ! 大内さんっ!? いだだだだだだっ」


 前向きになると心が軽くなる。

 濁り切っていた視界が急に晴れて明るくなるんだ。

 昔、パワハラ上司を始末した時は最高だったな。

 生まれ変わったと言っても過言ではない気分だった。


「だ、だれか……たす、けて……」


 撮影中に登場したエキストラは、道端でスカウトした素人だよ。

 謝礼を渡して顔出しNGの条件だと簡単に承諾するんだ。

 安心して、彼らは殺していないから。

 ニュースで●●君の顔を見たら驚くだろうね。


「うっ、ああぁ……」


 さて。

 もう虫の息だし、終わらせようか。

 ●●君だって楽になりたいよね。


「い……や……だ……しに、た、くな……い……」


 ははは、わがままだね。

 残念だけど君はもう助からない。

 それにこんな状態じゃ、たとえ生き延びても苦しいだけだよ。


 君には本当に感謝している。

 おかげで良い映像を撮ることができた。

 恨むなら己の不運を恨むといい。

 じゃあ、さようなら。




◆◆◆




 以上が被害者の●●さんの最期を記録した映像です。

 大内の自宅には、他にも数十人分の殺人動画が保管されていました。

 現在、大内の行方は分かっていません。

 皆様の情報提供を求めます。

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