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非霊感少女の視る世界  作者: くだか南
7/10

9.~10.~//

9.


「ほら、沙咲良、左前の四駆の助手席、吉岡だよ」

香那実が顔を近づけ、小声で言って来た。

「あ…、うん、そうだね」

コーヒーショップでの話が楽しくて、すっかり夕暮れ時になっていた。

私達は路面電車の電停のベンチに座っている。

目の前の道路は、赤信号で、数台の車が止まっている。

左の方に止まっている車の助手席に、吉岡先生が座っていた。

わりと落ち着いた、安心した色をしている。

「運転してるのは奥さんだね、けっこー美人だね」

運転席でハンドルを握っている女性は、晴れやかな色をしている。

まるで、悩み事が解消されたような。

「なあ」

小声で香那実が話しかけてくる。

「本当は、後部座席に高原が座ってて、吉岡の首を絞めてたりするんだろ?」

私はオーバーリアクションで首を振る。

「無い無い、お前の妄想は、そんなに分かりやすい世界なのか」

「じゃあ、誰が高原を殺したんだよ、何で腹を裂かれたんだよ」

独り言のように香那実は呟く。

私は視線を上に向けて囁く。

「物的証拠がそこにあると思った」

「はあ?」

「でも、そこには無かった」

「何言ってんだ?脳みそ全部が狂っちまったのか?」

「お前、障害者差別だぞ」

「まあまあ」

香那実が私の頭を撫でる。

さっき、あの車について、質問のされ方が違ったら、私は、本当の事を答えたのだろうか。

私は頭を撫でられながら、左目を閉じる。



10.


私には、他の人には見えない何かが視える。

それは、私の脳の障害が生み出した幻だ。

初めてそれが視えたのは、病院のベッドの上だった。

黒いモヤのようなモノ。

壁に張り付いた染みのようなモノ。

無言で叫ぶ目玉。

人の形をした空洞。

哀しみで歩くため息。

絡み合う笑いの無表情。

そんな、言葉にしにくい何かが視えていた。

そして、そんなモノ以外にも視えるモノがあった。

人の周りに、色や輝き、陰や濁りが視えるのだ。

俗な言い方をすれば、オーラとか言うのだろうか。

何となく、この事は、誰にも、香那実にも話していない。




//

この後、解答編的なパートになります。

そこにあるのは、沙咲良による彼女なりの合理的な解釈です。

それが真実なのかどうかは、分かりません。

ここまで、沙咲良が視たモノ、喋った事、思った事で、嘘は一つありません。

沙咲良の脳の一部は、誰を犯人だと推理しているのか?

すでに、あなたは合理的に辻褄を合わせられている事でしょう。

さて、誰が犯人っぽいですか?

//




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