6.~7.
6.
「いや、ちょっと待て!」
「もうすぐ降りるから、手短にな」
「うちの犬が、耳が垂れた中型犬なんて、どこをどーしたら感じられんだよ、どこにそんな情報があったんだよ」
「ああ、本当に耳が垂れた中型犬だったんだ」
「どう説明する気だ?優しい言葉で人を騙そうとしてるな?! 霊感詐欺だな!?」
「本格的に名誉毀損だ…、じゃあ、しっかり聞けよ、それは、たまたま当たった、それだけ」
「はあ?今までやたら理屈をこねて、最後はたまたま?」
「そう」
「そんな偶然なんてあるかよ」
私は少し考える。
「えーと、例えば、40人の教室に同じ誕生日の生徒がいる確率って、どれくらいだと思う?」
「いきなり何だよ、うーん、ちょっと待てよ」
香那実はスマホを取り出し、計算機をポチポチしだした。
「あー、全然分かんない、そーだなあ、0.1パーセントくらいか」
「それだと、1000の教室に、同じ誕生日が1組いる確率だけど、お前が今までいた6、3、2で、11の教室で、同じ誕生日の人達はいなかったか?」
「いや、そんな事無い…、うん、覚えてるだけでも何人か浮かぶ…」
「だろ?、説明と計算が面倒だから、答だけ言うけど、その確率は89.1パーセントあるんだよ」
「そんなに?」
「そう、後で検索してみ、詳しく説明してくれてるから」
「うん、で、それが何?」
「たまたま当たる偶然なんて、意外によくあるって事、じゃあ、またね」
席から立ち上がると、ちょうど、路面電車がガタガタと揺れながら、電停に止まった。
香那実に手を振って電車を降りる。
「ま、私は動物を飼った事無いから、どれが犬の毛か、何が犬の匂いかなんて、知らないんだけどね」
私は呟いた。
7.
隣の県の山中で、死体が見つかった。
死体は腹を裂かれていたらしい。
その死体は、窓際の席の高原さんだった。