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校門を出て、周りに人が少なくなってから、私は話しだした。
「あの、窓際の一番前の、高原さん」
「うん、頭の良い子だね」
「高原さんにね、黒いモヤみたいなのが重なってて、それに目があって、先生を見てたんだよ」
「社会の?吉岡?」
「そ、まあ、それだけ」
「ほーん、生霊ってヤツ?」
「イキスダマ?」
「生き霊の事、生きてる人間の怨霊」
「何で最初にイキスダマって言ったんだよ、それに霊が無いのに、生き霊なんているかよ」
「それはそれとして、沙咲良、さっきから、何か私の足下見てない?」
「お前は、目ざといなあ、あと、もう高原さんの話はいいのかよ」
「何よ、何が見えてんの?」
「耳が垂れた、白い中型犬が」
ヒッ
香那実の喉から、細い悲鳴のような息がもれた。
「…あんた、私の家に来た事ないよね?」
「そうだね」
「うちで犬を飼ってるなんて、知らないよね?」
「知らない」
「先週、その、白い中型犬が、死んだんだけど…」
「それは、哀しかったね、だから…」
「……」
香那実は泣きそうな顔で、自分の足下を見ている。