13.
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香那実は楽しく話し続けている。
クラスの話題から、芸能界や昨日のテレビ、昔の映画、少年マンガやファッションの話。
豊富な話題。
人を引きつける話し方。
顔だけで無く、声も綺麗だ。
そんな香那実の声を聞きながら、私は香那実の綺麗な横顔を見ている。
目を逸らさず、じっと横顔を見つめている。
意識して見ていないと、つい、香那実の足元を見てしまうからだ。
少しでもその素振りを見せたら、香那実は目ざとく反応するだろう。
そうしたら、私は、嘘をつくかもしれない。
その嘘さえ、香那実は見抜くに違いない。
今朝の登校時、教室に入る香那実の後ろ姿を見つけて、私は口を手で押さえた。
叫び声が出かけた。
そのまま、回れ右をして、トイレに駆け込み、暫く個室で息を整えた。
香那実の足元には、猫がいた。
3匹の子猫。
1匹は、耳と尻尾が切られていた。
1匹は、目がえぐられ、口が裂かれていた。
1匹は、首が途中まで切られ、背中の方にぶら下がっていた。
その3匹の子猫が、香那実の足に、爪を立ててしがみついていた。
私は、香那実の綺麗な横顔を見ている。
「沙咲良、電車来たよ」
香那実が立ち上がって、笑顔でこちらを向いた。
「あ、うん」
私は香那実の顔を見たまま、立ち上がる。
足元の猫の事を、香那実に言う事は無い。
わざわざ2人の関係を壊す事は無い。
私は、香那実の隣にいたいのだ。
だから、あんな、私の脳が勝手に作った益体の無い幻の事なんか、言う必要は無い。
それが、私の、合理的な判断だ。
『非霊感少女の視る世界』
終わり
「あがき」と言う名の「あとがき」、、
数年前、コレを書いた後、テレビで始まった『見える子ちゃん』を観たんですよ。
2話のラストあたりで、「猫もかぁ」と笑ったの覚えています。
片目の視力が悪くて何かが見える、って設定、キャラって、たくさんいるのでしょう。
私わ、大昔に読んだ大槻ケンヂさんのエッセイ、その中の宜保愛子さんのエピソードからいただいてます。
久しぶりにコレを読み返したら、このヒトわ『虚構推理』みたいなコトをしたかったのだと思いました。
そーいや、おひいさまも隻眼だったな。。