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九話



 ……からかうのはここら辺にして。

 表情を切り替え、真面目な雰囲気を戻した。


「でも、先輩はいいんですか? 俺たちと一緒にいると、きっと先輩にも危険が及びます」

「承知の上だよ。なによりアイテムが無いと基本的にクソザコなイン君を放ってはおけないしね」


 ズズーっと温かいお茶をすすっているインを一瞥し、再び俺の方を向いた先輩は、ふわりと柔らかい笑みを浮かべた。

 その表情に少しドキッとしたものの、俺もお茶をすすって誤魔化した。

 ……インが懐いてる理由が、ちょっとだけ分かったような気がする。


「それに後輩君への罪滅ぼしでもあるんだ。ボクは一度、きみを殺しかけてしまったようだし」

「い、いやっ、それは俺のフェロモンのせいで! それに、先輩とシたときは残機も減らなかったですし、罪滅ぼしなんて……」

「外的要因も確かにあったかもしれないけど、結局性欲に負けてきみを襲ったのは事実だ。それって私の罪だろう?」

「ぅ……」


 だからそれはフェロモンのせいで──なんて言ったところで、きっと彼女には通用しないのだろう。

 少しだけだが、目の前にいるこの少女のことが、俺にも理解できた。

 責任感が強いというか、先ほど言った通り本当に”放っておけない”タイプの人なのかもしれない。


「いいから先輩を頼りたまえよ。これでも年上だぞっ」


 椅子を降りて、真っ直ぐ俺に手を伸ばす先輩。

 意図を察して俺も椅子から立ち上がって、彼女の手を握った。


「……はい。よろしくお願いします、先輩」

「うんっ! こっちこそよろしくね!」

 

 朗らかに笑ってくれた彼女を前にして、力が抜けてしまったのか、俺も同様に破顔した。

 先輩の技術力が折り紙付きなのは今回の逃走で理解したし、なによりここまでの話を信じてくれて、真正面から協力を申し出てくれた先輩を頼りたくなってしまった。

 元から親友で同じ世界から来たインとは違って、初めてこの世界で出来た仲間。

 その存在を改めて自覚すると、自分でも驚くほどに心から安心感に包まれた。

 俺の孤独な戦いは、どうやら今日で終わりらしい。

 仲間と安心を与えてくれた先輩だ、そろそろ名乗っておかないと失礼だろう。


「俺は主陣コウです。改めてよろしくです」

「ボクは式上(しきじょう)桃彩(ももいろ)。呼び方は先輩でいいからね、後輩君っ♪」

「はい。頼りにしてます、式上先輩」

「えへへ~。あっ、イン君もこっちおいで」

 

 照れる先輩と握手を交わしていると、彼女はインを手招きした。

 指示通り近づいてきたインは、式上先輩の意図を察して、自分の手を俺たちの手の上に置く。


「ボクとイン君と後輩君、三人寄れば文殊の知恵だ。

 なんとか・トラブルから逃げて・リタイアしないようにがんばる──略してNTR!

 これがボクたちのチーム名だ!

 みんなでがんばろー! おーっ!」

「ぉ、おぉーっ!」

「おー……」


 元気いっぱいな式上先輩。

 感化されてテンションが上がる俺。

 そして変わることなくずっと無表情なインの三人による、なんとか理性的にセックスから逃げるチームこと”NTR”が、いまここに結成されたのだった。



 

「あぁ、それと」

「……?」


 なんですか先輩。


「このチームの目的はもう一つあるんだ」

「初耳」


 俺も初耳だ。いったい何だろう。

 

「この世界の女の子たちを──後輩君の凶悪なイチモツから守ることっ!」

「なるほど」

 

 いやなるほどじゃねぇだろイン。てか急に何言ってんだこのロリは。

 俺が女の子たちを襲うとでも思ってるのか……?


「いやいや、この世界は君たちの世界で言うところの”抜きゲー”なるジャンルのゲームと似ているらしいからね。

 気を抜けばボクみたいに君を催眠で操る輩とかいっぱい出てくるんだ」


 た、例えば?


「サキュバスとか逆レ痴漢魔とか、平気でポンポン出てくるよ。

 彼女らに負けて操られると、君は最低最悪のおちんぽ魔王と化してしまうだろう。

 そうなったら最後、この世界の女の子たちは後輩くんのイチモツで墜ちてしまい、後輩君のイチモツなしでは生きられない体にされてしまう!」


 物騒すぎるだろこの世界。

 ……ていうか俺の股間の聖剣に、そんな人を屈服させるような大層な力なんて無いと思うのだが。


「あるよ? この世界で唯一、直に体験したボクが言うんだから間違いない」


 そういえばこの人とシたことあるんだった。

 できれば忘れていたかった。


「あれは凄かったな……本当にボクの事をオナホみたいに使って、ボクが壊れる直前まで腰を振っていたね。咄嗟に催眠を解除してなかったらヤバかった。

 あんなでっかくて凶悪なイチモツに襲われたら、普通の女の子はひとたまりもないよぉ……ぷるぷる」

「コウ、やばい。近寄らないで。ぷるぷる」

 

 何でそうなるんだよ!? 

 ちょっ、二人ともそんな距離を取らないで!

 心にクるものがあるから! あからさまに怯えないでくれ!


「えっとねぇ……ゴソゴソ。

 ぉ、あった。後輩君にはボクが制作したこの特注オナホをあげるよ。

 オカズに困ったら……まぁ自撮り程度なら送ってあげるから、ムラムラしたら使ってね」

「私もパンツの写真くらいなら」

「い゛ら゛ね゛ぇ゛よ゛ッ゛!!!」


 謂れのない非難を受け、悲しみの叫び声を上げつつ、俺は受け取ったオナホを地面に叩きつけた。




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