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二十七話

 ──まぁ、でも先輩が機嫌を直してくれるならある程度のことはやって然るべきだろう。

 いつもお礼をしてもし足りないくらい世話になっているのだ。この機会にワガママを言ってもらう方がこちらとしてもありがたい。


「……じゃあ、質問に答えて」

「なんなりと」

「ボクってそんなに子供にみえる?」

「っ……」

 

 いきなり答えづらい質問ぶち込んできたな。思わず黙ってしまった。

 しかしここはしっかりと答えねばなるまい。

 俺は断じて先輩をロリだと馬鹿にしているわけではないということを、この場で証明しなければ。


「……確かに先輩は体こそ小さいかもしれませんけど、この場にいる誰よりも大人な人間です。年齢とかの話じゃなくて」

「ふーん……?」

「困ってる俺とインに手を差し伸べてくれたし、見返りを求めず俺たちに協力してくれているあなたは、もはや聖女か何かの類だ」


 後輩君って褒め方が下手だね──と言われてしまった。

 うるさいです。これでも頑張って褒めてるんだからちゃんと聞いてください。


「先輩が子供なワケないじゃないですか。俺たちが一番頼りにしている大人こそが、式上先輩なんです……!」


 正座をしながら真摯な眼差しでそう告げた。

 今述べたすべての言葉に嘘偽りは存在しない。

 これは紛れもなく俺の本心であり、彼女に伝えるべき感謝の意でもあるのだ。

 とどけ、俺の想い──っ!



「…………うん、ありがと」



 あ、あれ。

 反応が薄い……。


「せ、先輩は大人ですよ? 本当ですよ?」

「そんな必死にならなくてもいいよ。……別に、もう怒ってないから」


 そう言いながら、先輩は仕方なさそうな柔らかい笑みを浮かべた。

 よ、よかった。俺の想いはちゃんと届いてくれたようだ。


「ふふっ。まぁ、きみを()()にした張本人がボクなわけだし、そのボクが大人なのは当然だよね」

「はぁ……」


 ん? 大人にした……とは?


「きみってえっちすると爆発して時間が巻き戻るだろう。そうなるとキミと本当にえっちした経験がある人間って──ボクだけでしょ」

「なっ!?」


 なんてこと言いだすんだこの人は。

 あれは事故だし、そもそもお互い忘れたいはずの忌まわしき過去の記憶のはず。

 掘り返さないでくれ……! 俺は体の小さい女の子をオナホ扱いして犯したことなんて……!


「えへへ、ボクと一緒に大人の階段上っちゃったねぇ、後輩君?」

「ち、違う、ちがうぅ……! 俺はまだ童貞を捨ててはいないんだぁ!」

「往生際が悪いなぁ後輩君。きみはボクのこと振り回して四回も射精()したんだぞ~」

「ぐああああぁぁぁっ! やめろおおおおぉぉぉぉッ!!」


 なんだ! 何だこれ!?

 ロリってからかいすぎた俺が悪いのか!?

 これが式上先輩なりの報復なのかァ! こんなエグい精神攻撃をしてきやがるのかこの人はぁぁ!



「──式上先輩。あんまりコウのこといじってないで、そろそろ手伝って」

「ロリっ子ーっ! フライパンが燃えてるんだけどぉーっ!? 助けてぇぇ!!」



 そんな折、俺に助け舟を出したのはインとムチ子。……いや、ムチ子はアレ勝手に事故ってるだけだな。


「はいはい、調整も終わったし今いくよー」


 肩をすくめた式上先輩はガジェットをトランクケースにしまい込み、座椅子から立ち上がった。

 よかった、助かった。あんまりにも強すぎる精神攻撃で死ぬかと思った。

 

 ──と、そんな風にホッと胸を撫で下ろしていると。


 式上先輩はリビングへ赴く前に、俺の耳元へ顔を近づけた。


「せっ、先輩……?」


 先輩は、なぜか怪しく笑っていて。





「──今夜は三人で、サンタのコスプレをしてキミの部屋にお邪魔するね」





「……ふぇ」


 とんでもない爆弾発言に脳天をぶった叩かれて放心する俺をよそに、小悪魔先輩はフフっと笑ってリビングへと向かっていったのだった。

 


 ……なんというか。


 ほんとうに、読めない人だ。


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