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十二話


『トドメだぁぁぁぁァァァッ!!』



 おれの フライパンこうげき!

 かいしんの いちげき!!

 サキュバスに 99999ポイントの

 ダメージを あたえた!

 サキュバスを たおした!


『むちぃ……あ、アタシが負けるなんてムチ……』


 パタリ。


『わーい勝ったー!』

『やりましたねーっ!』


 喜ぶロリ。

 彼女を抱っこして高い高いする俺。

 そんな俺たち二人を見つめる無表情な少女。

 なにより、床に突っ伏して動かなくなったムチムチ女。


 そう。

 激しい死闘の末、俺たちは無傷でサキュバスに勝利したのだった。



 はい、回想終わり。







 といった感じで、サキュバスとの戦いは割とあっさり終結し、あれから既に数週間が経過している。

 現在は七月の中旬。あと数回登校をすれば、学園は夏季の長期休暇に入るといったところだ。


 ゲームクリアのバレンタインデーまではまだ半年以上あるが、サキュバスの件を通してまた一回り成長したNLSの面々ならば、サキュバス事件初日のあのようなヘマをやらかすことはないだろう。

 一度窮地を乗り越えたからこそ、俺たちの絆はより一層強いモノへと進化しているのだ。


「よーし、寝るか」


 時刻は零時を回り、心地よい眠気で瞼も重くなってきた。

 部屋の冷房をリモコンで設定しつつ、俺は布団の中へ入った。


 明日と明後日の二日間の学園生活を終えれば、その翌日からは夏休みだ。

 無論、いままで生きていた元の世界のように、平和で暇なだけの夏休みというわけにはいかないだろう。

 この世界は抜きゲー染みている。

 たとえ夏休み中であろうが、理不尽なエロイベントがたくさん襲ってくるに違いない。


 よって、長期休暇中もNTRの活動は継続する方針だ。

 俺とインの為に、せっかくの夏休みだというのに協力してくれる式上先輩には、もう頭が上がらない。


「足向けて寝られねぇなあ……」


 そんなことを呟きながら布団でゴロゴロしていれば、次第に意識が明滅し始めてきた。

 このままジッとしていれば眠りに落ちて、気持ちよく朝を迎えることが出来そうだ。


「……すぅ」


 微睡みの中で、全身の力が抜けていく。

 そして、このまま、意識が落ち──



「みつけたーっ!!」



 眠りに入るその直前。

 何者かが甲高い声と共に体の上にのしかかってきて、俺の意識は強制的に現実へと戻された。


「っ、……ッ!?」


 突然の事で心臓が飛び跳ね、訳が分からず目を開く。

 そうして視界に映り込んできたのは、薄紫色の肌が特徴的な、どこか見覚えのある女だった。


「さっ、サキュバス……っ!?」

「ようやく見つけたわよ! 主陣コウ!」

 

 なにやら怒った表情で俺に跨っているその女は──いや()()は、紛れもなく以前俺たちがとっ捕まえたサキュバスその人であった。

 彼女はなぜか肉体が縮んでおり、インと同じスレンダーな少し背が低い少女の姿へと変貌している。

 むしろインよりも胸が無く、太ももだってかなり細くて、もはやあのムチムチうるさかったナイスバディなスケベ女の面影は残っていない。


 顔つきがそっくりだったから判別ができたものの、体だけで言えばもう別人だ。

 しかし、どうして俺の家に。

 彼女は数週間前、しっかりと警察に引き渡したはずだ。


「頑張って逃げてきたのよ……。おかげで魔力を使いすぎて、こんな姿になっちゃったけどね」


 いや頑張れば警察から逃げられるのやばいだろ。

 俺が知らなかっただけでこのサキュバス、かなりスペックが高い方だったのか。

 ──って、そんなことより。


「……何しにきやがった。言っておくが、もうオマエの催眠ガスとかは効かないぞ」


 このサキュバスの目的は一体何なのか。

 一応今は式上先輩が作った特殊な腕輪をつけているため、エロモンスターたちのエロ攻撃や催眠には耐性がある。

 ベッドの下にも麻酔銃とフライパンを仕込んであるし、襲う素振りを見せたら即座に反撃するつもりだ。


「そんなんじゃないし。ただ警告しに来ただけ」

「警告……?」

「アンタたち、前に戦ったときにアタシの体に直接触れたでしょ」


 そりゃあ戦ったわけだし。ロープで縛るときもバッチリ触りましたね。


「サキュバスの肉体に触れるとね、こっちの意思とかに関係なく催淫の呪いが掛かるの」


 ──えっなにそれは。

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