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本編

※ご都合設定のファンタジー作品です※


貴族なんて名ばかり。

没落寸前のカーター家の長女として生まれたペルルは、物心ついたときから両親の不本意な顔しか見てこなかった。


「まったく誰に似たのかしら」

母親からよく聞かされたこの言葉の意味を理解したのはつい最近のこと。



ペルルが3歳のときに生まれた妹のロベリアは今年で2歳になった。



「可愛いわ、さすが私たちの子ね」

「あぁ、まるで天使のようだ」


両親の明るい声など聞いたことがなかったが、今ではそんな家庭だったと信じられない。暗い家の中にパッと光が差したように朗らかな声が響き渡る。


その声に気が付いたペルルは刺繍の手を止めた。開かないドアの方に顔を向け、少し思案したあと刺繍を小さなテーブルの上に置く。

今日の課題もある程度終わりが見えてきた。

ペルルはそっと自分の部屋を出て声の聞こえる方へ向かう。リビングでは両親の間で天使のような笑みを浮かべるロベリアが新しいおもちゃで遊んでいた。

ロベリアの一挙手一投足にわぁっと声が上がる。その空間があまりにも幸福に見えて、思わず見入っていると、父親がリビングを覗くペルルの存在に気が付いた。


「おい。こんなところで何をしている」

「あっ」

「今は教養の時間だろう」

「で、でも今日の分は終わりそうだから。私も……」


(私もお父様たちと過ごしたい)

そう言おうとしたのに、父の冷たい目を前にして引きつった喉からは言葉が出てこない。


教養の時間というのは、両親が決めた勉強の時間。

朝から晩まで与えられた小さな部屋で、ひたすら編み物や刺繍そのほかの令嬢教育を受けている。


「今日の分が終わったのなら、昨日の見直しでも明日の予習でもすればいいだろう。お前は言われたことしか出来ないのか。もういい、来なさい。お仕置きだ」

「い、いやっ、ごめんなさい、お父様っ……」


父の言うお仕置きは要領の悪いペルルが何度もされてきたお尻叩きのお仕置き。


無理やり小脇に抱えられたペルルは、部屋の奥においてある机に上半身を乗せられた。小さな体の大半が机に乗っているせいで足がぶらんと宙を舞う。そのまま腰を押さえつけられたら逃げ出すことも叶わず、このままの姿勢で何度もお尻をぶたれた。


「痛い、痛いお父様っ!ごめんなさいっ」

「うるさい。お前が悪い子だから罰を与えているんだ」

「ごめんなさっ、もうお尻ぶたないで……う、わああ、ああんっ」


そんな懇願など聞き入れられるはずもなく泣き喚くペルルの視線の先では、母親とロベリアが遊んでいる。



「おかあさま。おとおさま、おこっているの?」

「お姉ちゃんはとっても悪い子だからお仕置きされているの。ロベリアは良い子だからお父様は怒らないわ。だから気にしなくていいのよ」


今まさに目の前で罰を受けている姉を見つめロベリアは「ふぅん」と返事をした。そのまま次の新しいおもちゃを母親から受け取りそれで遊び始める。妹の意識は完全に姉からおもちゃへと移った。その間もペルルは涙を流して許しを乞う。


母親と楽し気に笑うロベリアの顔は、涙で滲む瞳で見てもそれはそれは可愛かった。




そして2年後、リビングから聞こえる声がまた一つ増えた。



「男の子よっ!」

「よくやった。これでカーターの名は守れるな」

「お父様っ、この子がロベリアの弟?」

「あぁそうだよ。抱いてみるかい?」


弟が生まれたのだろう。

扉の向こう側が騒がしくなったことでそのことに気が付いたペルルは細心の注意を払いながら廊下に顔を出す。音をたてないように廊下を進んでいくと両親のそんな会話が聞こえてきた。そっとリビングを覗くと、そこには赤ちゃんを抱く愛くるしい天使のようなロベリアの姿があった。


その様子を両親は微笑みながら見つめている。


ペルルは彼らに気づかれないようにすぐさま部屋に戻り、やりかけていた刺繍を黙ってみつめる。それを無造作に掴むと思い切り振りかぶった。


ぶるぶると震える腕。

持ったものを床に叩きつけることも出来ず、そのままゆっくりと腕を下ろしたペルルはゆっくりと窓を見た。そこに映る自分の顔を見て身体の力が抜ける。心が冷え切ってしまったのだろうか。ずるずると座り込んだペルルは床の冷たさをやけに感じる。


子どもから見ても美しい両親だと思う。

それなのになぜ。


なぜ最初に生まれた私は両親に似なかったのだろう。


明るい光を携えたまあるい瞳を持つ妹とは違う。上手く笑えず愛想がないと怒られ、肌にはぷつぷつとした赤い出来物が目立ち、爪を噛む癖が治らないせいで爪の形も変形していた。


だから両親は自分をここに閉じ込めるんだ。


ずっとこの部屋で勉強を続け、編み物や刺繍の腕はかなり伸びたがそれでも両親に褒められたことなど一度もない。


もっと頑張れ。

そんなんじゃ貰い手が見つからないだろう。

家の役に立たない。


かけられる言葉といえばこんな内容ばかりだった。

それも全て私が両親に似ていないから。

そして私が出来損ないの“悪い子”だから。


私は家族にすら認められない。




とうとう弟まで生まれ、ますますこの家にペルルの居場所はなくなっていった。


どうせ似合わないからと新しい服は買ってもらえず、さらには弟の勉強の方に重点を置くため、唯一与えられていた部屋もさらに狭い場所へ移った。


それでも決して歯向かったりはしなかった。

この家で暮らしていく以上、従順に生きていくのが利口だと気付いたからだ。


そうすればお仕置きをされることもなく、あの人たちの前で不用意に泣くこともなくなった。もう泣きたくない。泣くのは惨めで可哀想だから。


私は惨めじゃないし、可哀想でもない。


それにいつまで経ってもこの家から出られないわけじゃない。

名ばかりで没落寸前の貴族とはいえ、見栄を張りたがる両親はペルルにもきちんとした縁談をもってきてくれるはず。

そうすればこの家を出て、新しい家族が作れる。


優しさと笑顔に包まれた温かい家庭を夢見て、ペルルは一日一日を過ごしていた。



――――――――――――



10歳を超えた頃からペルルはこっそり家を抜け出すことが多くなっていった。家から少し歩いた先には大きな森が広がっていて、野生動物が暮らすこの森はあまり人が近づかないのだと聞いたことがある。


人が近づかないなら好都合。そもそも一人でいることのほうが多かったし、森に怖いという感情は浮かばない。両親は気づいていないのか、そもそもペルルに興味がないのかは分からないが、昼間家にいないことが増えても特に何も言ってこなかった。


なんて自由な生活だ。


寂しさや虚しさを心の底に押しこんで、ペルルはそういう気持ちに切り替えた。

森の奥に進んでいくと木こりが使っていたのか小さな小屋を見つける。あちこちガタはきているが、少しずつ手を加えていくと雨風くらいならちゃんと凌げるようになった。ここを秘密基地にして、家から刺繍と編み物の道具をこっそり持ち出したペルルは、ここで時間を過ごすことが多くなっていく。


それと同時に弟の為に作られた膨大な書庫から、数冊ずつ本を持ち出すのも忘れずに。


無理やりやらされていた勉強も本当は嫌いではなかった。

それに書庫には勉学の本の他に小さい弟が読む絵本もたくさん置いてある。本を読んでいる間は一人の時間を忘れられ、ここにいれば両親の心無い言葉も聞こえない。


それに可愛くて愛されている妹と、すでに優秀だと騒がれている跡継ぎの弟と、両親に疎まれている自分を比べなくてすむ。


ここだけが私が私であるための唯一の場所だった。



――――――――――――― 



秘密基地からもう少し奥に入っていったところに、小さな湖があった。

凪いだ水面は心を穏やかにしてくれる。空気も澄んでいるし木漏れ日も気持ちがよい。ペルルは天気が良い日はきまって湖のほとりに来るようになっていた。


いつものように切り株に腰を下ろしてぼーっと湖を眺めていると、ガサガサと葉を分ける音がする。


今日は鹿かな?それともウサギかな?

音的に大きな生き物の気がして、心の中で「鹿」と答えを導きながら音の聞こえる方を見ていると、飛び出してきたのは自分より小さな少年だった。


「うわっ」

少年はペルルを見て大きな声を上げるが、驚いたのはペルルの方だった。


「どうやってここに?」

咄嗟にそう話しかけたが、我に返って顔をふいっと逸らす。

あまり人前に出てはいけない顔だ。自分を卑下するつもりはないが、両親の言う通りそれが事実だから仕方がない。


ただ、そんなペルルの思いを知らない少年は無遠慮に近づいてきた。

顔を覗き込まれそうになって慌てて逸らす。

それを何度か繰り替えしてようやく諦めた少年が問いかけてきた。


「この森は人がいないと聞いていたけど……ねぇどうして顔を隠すの?」

「人前に出せない顔だから」

「えっ、どういう意味?」

「だから、き、汚いから嫌なの」


吐き捨てるように言った自分の言葉がそのまま自分の胸に刺さる。


どくんどくん、と心臓の音が体の中でどんどん大きくなっていき、恥ずかしいのか体が熱くなった。少年の顔を見ないように俯いて顔を隠しているとトントンと肩を叩かれる。何度も叩かれるから観念したペルルは両手で頬を隠してわずかに開けた指の隙間から目だけ覗かせた。


「僕のほうが汚いと思わない?」

「えっ」


恥ずかしそうに頬を掻きながらそう言った少年の顔をまじまじと見てしまう。

確かに頭はぼさぼさで葉っぱをつけているし、頬や手には土がこびりついていた。


「い、いや。そういう汚いとかじゃなくて」

「だから君は汚くないよ」

「いや、だから」


会話にならないが、少年がパッとペルルの腕を掴んだ。

すでに力が抜けていたペルルの手はあっさり顔から離れ、そのまま二人で水辺に行く。


「どこに土がついているか教えてくれる?」

「え、っと。ここと、ここ、あとここも」


ペルルが指をさした場所を少年は湖の水をすくってバシャバシャと洗う。「けっこう冷たい」と言いながらも朗らかに笑う少年に固くなっていた気持ちが少し解けた気がした。クスっと笑うと少年もつられて笑う。


他人の笑顔というのはうつるんだ。

だから愛らしく笑う妹の周りは常に笑顔で溢れているのかもしれない。


その光景を思い出してすぐに顔を暗くしたペルルを少年は見つめる。


「汚くなんかない。誰もそんな風に思わないから大丈夫だよ」

気遣ってくれる言葉にペルルは首を横に振った。

「そんなことないよ。だってずっと言われてきたことだから」

「なんでだろう。僕は君のこと可愛いって思うけど」

驚いたような顔をされるが、こっちのほうがびっくりだ。

妹と見比べていないからだろうか。いや、妹が生まれる前だって両親にそんなことを言われた覚えがない。


「だって……こんなにぶつぶつになっているし、それに上手に笑えないから」

「確かに自分自身だと気になるかもしれないけど。でもそれは君のせいじゃないだろ?生まれ持った個性だ。だから僕はそんな風には思わない」


そんな風に考えたこともなかった。

まぁそんな個性なら欲しくはなかったが、彼の言う通り割り切れたら楽になれそうな気がする。


「それに上手く笑えていたよ?さっきの笑顔とっても可愛かった」

「……あ、ありがとう。私はペルル・カーター。そこの村に住んでいるの。あなたはどこから来たの?」

「僕はディアマン。隣町から来たんだ」

「隣町って、あの一番大きな……ここまでよく来られたね」

「この森は隣町まで続いているんだ。だからそんなに遠いってわけじゃないんだけど。……少し迷っちゃって。僕何をやっても駄目だから」


恥ずかしいな、と肩を丸めるディアマンに首を横に振る。


「初めてなら迷いやすいと思う。私は隣町に行ったことないから分からないけど、一度私の住む町まで降りてそこから大きな道をずっと行くと隣町に行けると思う」

「そうなんだ。ありがとう助かるよ」

「それにしたって、ずいぶん歩いたんじゃない?」

「僕、王宮で第八王子の従僕をしているんだ。だからこうみえて体力には自信ある」


王宮、王子、聞きなれない単語が飛び出してきてペルルは目を丸くする。


確かに隣町にはこの国の王宮がある。

賑やかで栄えていて没落貴族のペルルとは比べ物にならない、本当の貴族が住む町。


ペルルも一応貴族の娘だが、隣町から来たと聞いたときは身分が上の貴族のお坊ちゃんかとひやひやした。だから従僕と聞いてほっと胸を撫でおろす。それなら気兼ねなく話せそうだ。


「あ、でも従僕なら王子様から離れちゃいけないんじゃないの?大丈夫?急いで帰ったほうが……」

「ううん。大丈夫、気にしないで。……王子から、この森に生えている黄色の木の実を取ってくるように言われているんだ」

「黄色の木の実?」

「うん」

「そんなの見たことないけど」


気にしたことがないから目に入っていないだけかもしれないが、それでもほぼ毎日ここにいるペルルもそんな物があることは初耳だ。


「まっ、気楽に探すよ。王子も急いでいないみたいだし」

「そうなの?それならいいけど」

「それよりペルルはどうしてここに?」

「私?……あー、えっと特に理由はないよ。向こうに秘密基地を作ってあるんだ」

「秘密基地?」

「うん。だから昼間は基本的にそこにいる」


小屋の方を指さしてそう言うと、ディアマンは一瞬不思議そうな顔をしたが「わかった」と頷いた。


「それならまた僕が来たときに会えるかな?」

「うん、ディアマンさえ良ければ」

「よかった」


王宮で仕事をしているなら、美しい人ばかりみているはずなのに、ディアマンはペルルの顔を可愛いと言ってくれた。そして優しい言葉をかけてくれた。歳も近そうだ。「可愛い」という言葉は信じられないが、それ以外に不審に思うことは何もなく純粋に会話を楽しむことが出来た。



――――――――――――――――― 



それからディアマンの言う通り、週に一度くらいの頻度で二人は森の中で時間を過ごすようになってきた。


一緒に木の実を探したり、他愛もない会話をしたり、王宮からこっそり持ってきたというお菓子をこっそり分けてもらったり、そんな経験が今までの生活の記憶を塗り替えてくれる。


自己肯定感が低いペルルには伝わっていないと気付いたのか、ディアマンは容姿を褒めることより、編み物や刺繍の腕を褒めてくれたり、教養があることを褒めてくれるようになった。


「可愛い」という言葉より、そっちの方が遥かに嬉しい。

ずっと一人で頑張ってきたことや、一度も褒められなかったことが、ようやく認められた気がした。けれど、あまり手放しで褒められるとそれはそれで心に霧がかかる。


「ペルルは本当に何でも出来るし、色々なことを知っていて凄いな」

「……勉強は私が家の役に立てることはそれしかなかったからで。編み物や刺繍も時間があったから続けているだけ。そうやって言われた通りにしても認めてもらえることはないのに」


甘えだろうか。

それとも「そんなことない」と言ってほしいのか。


時折わざと口にする自虐に自分自身うんざりする。


けれどディアマンは簡単に同意するわけでもなく、かといって面倒臭そうに対応するわけでもなく、親身になってペルルの気持ちに寄り添ってくれた。


「相手に言われたことをちゃんと出来るのは、ペルルの気持ちが強いからだよ。その結果自分が傷つくのが分かっていても、相手の期待に応えようとできるんだから。僕にはそれが出来なかった」

「ディアマンも同じことを思ったりするの?」


王宮の仕事。しかも王子付きの仕事というのは選ばれるのも難しいのだろうか。

ディアマンは一瞬口ごもったあと眉尻を下げた。


「そう、だね……何もできない僕はその期待が重くて、申し訳なく思うんだ」

「期待に応えられないのが悪いと思う人は優しいからだと思うな。私は悪いとは思ったことないから。ただ生きていくために従っている。それに……あの人たちに悪いなんて思いたくない」

「……やっぱりペルルは強いよ」


家の事情を話したことはない。

だけどいつもここにいるペルルを見てなんとなく気づいているのだろう。けれどそのことに関してディアマンの方から何も聞いてこないから色々話しやすかった。


こうしてお互い気持ちを通い合わせていたのだが、急にディアマンの足が途絶えた。


はっきりと約束したわけじゃなかったが、だいたい少なくても二週に一度は必ず会っていたのに今月は一度も会えていない。きっと仕事が忙しいのだろう。もしかしたら黄色の木の実がいつまでも見つからないから、叱られているのかもしれない。


もし今度会ったときに何か手助けになるかと、ペルルはディアマンが来ないと分かると森中を歩き回って木の実を探しはじめた。


目を凝らして注意深く歩いていれば、何かしらの木の実は見つかる。

だけど、赤だったり茶色だったり、目当ての色とは程遠い。


ただ時間だけはたくさんあった。

それに森を駆け回ってクタクタになったほうが、あの家ですぐ眠りにつける。

楽しい家族団らんの声を聴かなくてすむ。


そうして一か月程探し回りようやくそれかと思う物に出会った。


大きな木の上のほうが何やら黄色っぽい。

木登りなんてしたことはないが、枝を掴んで足を絡めて、なんとか上へ向かっていき、思いっきり手を伸ばして実がついた枝をへし折った。


ようやく見つけた、喜んで顔の前まで持ってくるがよく見れば黄色というよりオレンジ色。日の光に反射して黄色く見えたのだろうか。期待していた分落胆も大きい。はぁとため息をついたペルルはバランスを崩した。


「きゃあっ!……いっ、たぁ」


運よく下に落ちていた葉のおかげで大した怪我はしなかったが、とっさに伸ばした手が細い枝に引っ掛かり裂けたような傷が出来る。痛みに耐えながらにじみ出てくる血を拭い続けていると徐々に血は止まってきた。


怪我はしたが、それでも枝は無事。


オレンジだが、まぁ見ようによっては黄色く見えなくもない、気がする。

それに何も見つからなかったというよりはマシかもしれない。

ペルルはその枝を大事に抱えて小屋へと戻り、実が痛まないように編んだ敷物の上に置いた。



――――――――――――――― 



それからさらに一ヶ月が過ぎた頃。

秘密基地から出た時に視線を感じたペルルが辺りを見渡すと、木々の隙間からこちらを伺うディアマンの姿を見つけた。


「ディアマン!?」

「ごめんね……ずっと会いに来れなくて、僕のこと覚えていてくれてうれしいよ」

「当たり前でしょ。大丈夫だった?」

「うん、ちょっと王宮の中がバタバタしていて」

「大変だったのね。……そうだ、ディアマンに見せたいものがあるの」


ディアマンを連れて再び秘密基地にもどったペルルはずっと大切にしていたあの木の実がついた枝を差し出した。時間が経ち腐ってしまわないか心配だったが、まだ木の実はきちんと枝にくっついている。

枝を受け取り驚いたように木の実を見つめるディアマンに、にっこりと笑ってみせた。


「なんとなく黄色に見えなくもないでしょう?」

「どこで……っていうかその傷はどうしたの!?」


枝を渡したペルルの手に残る細く長い傷跡。

咄嗟に手をひっこめたが、ディアマンに手を握られてしまう。

血が止まったことをいいことに特に手当もせず放っておいたら跡が残ってしまった。

鋭利なものでつけられたような傷をじっと見つめたディアマンは、ハっと顔をあげる。


「あ、えっと……」

「もしかして枝で?これを取るために……」

「で、でも全然そんな大したことないっていうか、これくらいなんともないし」


咄嗟に弁解するが、ディアマンは顔を歪めながら優しくペルルの手を両手で包み込む。


「傷を残してしまった……ごめんね。僕が変なこと言ったから」

「違う。ディアマンのせいじゃない。私が勝手にしたことだから気にしないで。それにこれを見ていると、あなたと過ごしたことを思い出せて楽しかったから」

「それでもこれは僕のせいで出来た傷だ。これ以上人が傷つくのは嫌なのに。どうして僕はこんなに役にたたない?僕に会わなかったら君もこんな傷を作らなくてすんだんだ。本当になんで僕は……生きていたって周りを傷つけるだけの僕なんて、いっそいなくなったほうが」


今にも泣きそうな顔をしてそう言うディアマンに、そんなことを思わせて申し訳ないという気持ちより、やるせない気持ちが上回った。


「そんなこと言わないで!」


勢いよく手を振り払いディアマンを見据える。

呆気に取られた顔をするディアマンに「いい?」とその顔を指さした。


「それだけは言っちゃダメなの。どんなに辛くても、嫌なことがあっても、生きてさえいればどうにでもなる。だから……こんな私でも生きている」

「ペ、ペルル?」


自分なんていない方がいい?

そんなこと、妹と弟が生まれる前から、何度も何度も、自分に問いかけてきた。


けど「そうだ」と認めたくなくて。

誰も大切にしてくれないなら、認めてくれないのなら、自分だけは自分を大切にしてあげたくて。


何度も思ってはいても、絶対に口にはしなかった。


怒りで体が震えるのは初めてだ。

声も震え頭も真っ白になる。せっかく久々に会えて嬉しかったのに、昂った感情だけで口が勝手に動いてしまう。


「ディアマンの優しいところが好き。温かく笑いかけてくれるところが好き。たくさん話を聞いてくれるところが好き。……私は、あなたに救われたの。ディアマンが言ってくれた言葉が私を強くしてくれた」


震える声のまま激しい剣幕でまくしたてるがディアマンは真剣な顔で聞いている。言葉に詰まりながらも吐き出すように自分の気持ちを吐露する。


自分だけ両親に似なかったこと。

だから愛されなかったこと。

両親を悲しませる“悪い子”なんだと。

可愛い妹と優秀な弟がいて家に居場所がないことも、だからこそ幸せな家庭を作りたいことも。


一度溢れた気持ちは止めることが出来ず、全部、全部、吐き出した。


「だから……グスッ。ディアマンだけじゃ、ないの。私じゃだめかもしれないけど、でも、忘れないでほしいのは、……ひっく。ディアマンは私の役に、立っているんだよ?」


鼻を啜って、一言一言紡いでいると、ディアマンが手を伸ばし指先で頬をなぞる。溢れてしまった涙の跡を拭ってくれているのだと気づいて顔が熱くなるが、涙を拭うディアマンも同じように泣いていた。


泣かないで。

しゃくりあげるペルルと違い、あまりにも綺麗に涙だけ流しているディアマンにペルルも腕を伸ばす。

だがディアマンは差し伸べられた手ごとぎゅっとペルルの身体を抱きしめた。


「……辛いことを話させてごめん。ダメなわけない。僕もペルルに会えて、ペルルと過ごした日がとても幸せだった。ごめんね。本当にごめん」


何度も謝ってくれるディアマンに首を横に振る。

自分でも何がこんなに腹が立って悲しいのか分からない。


「僕強くなるよ。強くなって迎えに来る。だからペルルの夢を一緒に叶えよう?僕と一緒に幸せな家庭を作ってほしい」


慰めたかったのに逆に慰められている。


没落寸前とはいえペルルの身分は貴族。

王宮で働く人間がそう簡単に貴族の娘と結婚が出来るとも思えないし、自分と過ごす時間が彼に幸せを与えていたというのも信じられない話だ。


けれど今ここに真実があるかどうかは問題じゃない。


ありがとう、そう言ってディアマンに抱き着き、この温もりを忘れないようにするのが精いっぱいだった。


それから二人は向かい合って座り、これまでのように他愛のない話を繰り返す。このまま時間が止まればいいのに。無情にも時間だけが過ぎていきディアマンはペルルが上げた枝を手にして立ち上がった。


「さっきの言葉を嘘にしたくないから。その為にもこれからやることがたくさんあって忙しくなる。……本当はペルルと一緒にいたいけど」

「いいの。そう言ってもらえるだけ私にはもったいないよ」

「本当だから。信じてほしい」

「うん。分かっている。ありがとう」


そもそも一か月以上会えなかったときに気づいていた。

だからこうして最後に会えただけでも幸せ。

もう一度ハグをしてディアマンを見送る。


遠くなる後ろ姿を見つめながら両手を口に押し当てて、声を上げずに泣いていたことを彼は知らないだろう。



――――――――――――――――― 



あれから8年。

ペルルの思惑は少しだけ外れた。


見栄を張りたがる両親は確かにペルルにもきちんと縁談をもってきてくれた。

ただ実際やって来る方はペルルの顔を見てあからさまに落胆し、挙句の果てに妹を紹介してくれと言う始末。


幸せな家庭を築く夢は見事に砕け散ってしまった。


両親は相変わらずペルルに冷たく、そんな対応を見ているせいか成長した妹のロベリアはペルルにぞんざいな態度をとるようになった。

弟のハイヤーは母親の方に似た可愛らしい顔をしているが少し変わっていた。せっかく可愛い顔なのに感情を表に出すことはなく愛想の無さはペルルを遥かに凌ぐ。だけどとにかく頭が良かった。両親も跡継ぎが賢いことを喜び彼の態度には目をつむっている様子。


だからこの家でペルルだけが未だに両親に認められていない。


貰い手も見つからない。

跡取りにもならない。

残されたペルルがこの家にいる為には、家のことを担うお手伝いさんのような生活をするしかなかった。


惨めな生活だったが、心の中にあるディアマンとの思い出がペルルを強くしてくれる。

それに自分でもだいぶ強くなったと思う。教養の時間で身についた刺繍や編み物の腕を活かして、自分で作った物を街で売って小銭を集めた。少ない金額ばかりだがこつこつ貯めたお金は大きな額になりつつある。


ペルルの夢は幸せな家庭を作ることより、この家を出ることに変わった。


貴族の身分を捨てた可愛くない私に訪れる未来は、想像するのも恐ろしいが今はとにかくそれしか考えられない。それでもあの日ディアマンに言った言葉だけは裏切らないように生きてきた。こうして諦めず生きていることが小さな誇り。




庭掃除を終えたペルルはロベリアに呼び止められた。


「お姉さま。裾に大きな花の刺繍がしてある黄色のドレスはどこ?」

「ダイロ子爵から頂いたもの?それならロベリアが似たようなドレスがあるからいらないって」

「処分したの?困るわ。やっぱりあれを着ていきたいの。なんとかしてよ」

「なんとか、って言われても……ロベリアならこの前頂いたピンクのドレスも似合うんじゃない?」

「あれはこの前着ていったからダメよ。私は一回着たドレスはもう着たくないって言っているでしょ?お姉さまとは違うの」


年頃になったロベリアには毎日のように貢ぎ物やお誘いの連絡が届く。

それもそのはずで、美しい彼女の噂は地域中に広がっていた。


動きやすさ重視の質素なワンピースに身を包んだペルルを一瞥して、ロベリアはそう言い放つ。


「それなら……昨日いただいた赤いドレスは?」

「赤?あぁ、ビハイン伯爵の?まぁそれでもいいわ。部屋に用意しておいて」

「分かった」

「そういえばお姉さま私の白いドレス持っていってないわよね?」


は?

それってどういう意味?

私が盗んだとでも言いたいの?


疑われた怒りというより、驚きが勝るような、それでいて悲しいというか。

長い間感情を殺して生きてきたせいで、このもやもやとした気持ちがなんなのか自分じゃハッキリ分からない。


「ま、まってよ。私がそんなことするわけないじゃない」

「それもそうよね。お姉さまが私の持っているドレスなんて着てもしょうがないもの」


反論するとロベリアはあっさりと引き下がり、ペルルの姿を上から下まで目でなぞって笑った。


「それは……」

「近頃それと似たようなデザインのカラードレスを頂いたからふと思い出して。でも見当たらなかったのよね。だから一応そのドレスも探しておいて。私の部屋にカラードレス置いてあるから参考にしていいわ」

「でも」


「ロベリア姉さん」


ペルルが言い返そうとしたとき、弟の部屋の扉が開いた。


「どうしたの?」

「俺もペルル姉さんに頼みたいことがあるから、ロベリア姉さんのお願いは後にしてもらっていいかな?」

「なんで、私の方が先だったでしょ」

「でもロベリア姉さんの沢山持っているドレスの内の1枚を探すのと、俺が勉強するために必要な物を探してもらうのだったらどっちが優先度高いか分かると思うけど」

「……じゃ、いいわ。それじゃお姉さま、ハイヤーの用事が終わったら私の部屋に来てね」


この家でハイヤーに口で勝てる人間などいない。

それはあの父であっても。


ロベリアは面倒事はごめんだというように、すぐにその場を立ち去っていった。


頭の良い弟はこの辺りで有名だった。幼いうちから大人も読まないような難しい本を読み、読み書きもすぐに覚えた。あの両親とロベリアを相手にしてもこんな感じで淡々と話す。だから純粋に尊敬もしていた。家族にもあまり興味を示さず、暇さえあれば本を読んで何やら難しそうな勉強をしている。たまに弟宛てに学者の方から手紙が届いたりしていた。ハイヤー宛ての手紙は両親を通さず直接渡してほしいと頼まれている。食事も家族と取ることはなく、ペルル同様自室で食べることがほとんどだった。


愛想がなくてもそういった特別待遇を両親が許しているのは彼の優秀さをかっているから。


ペルルも勉強は嫌いではなかったがハイヤーほど優秀ではなかった。

もし私もここまで優秀だったら、そうしたら……。

とっくに諦めたというのに今でもたまにそんなことを思ってしまう。


ただそんなハイヤーの態度に、ペルルが救われている部分はかなり大きかった。

今だって本人にその気はないのだろうけど、妹の衣裳部屋の整理をすると息が詰まる私には天の一声のよう。……だって、私には一枚も素敵なドレスを与えられていないから。



「ありがとう。それでハイヤーは何が必要なの?」

「……書庫からとってきてほしい本があるんだ」

「これ全部?」


そう言って渡された紙にはずらずらと題名が書かれていた。ぱっと見たかぎりでも10冊は超えている。しかも同じ分類の物ではなく全て違うジャンルの物。


「うん。俺は勉強で忙しいから」

「すぐにはちょっと……少し時間がかかっても大丈夫?」

「間違えたら困るからゆっくりでいいよ。それに家の仕事もあるならそっちを優先してもらってもいい。ロベリア姉さんの用事は大したことないものだし」

「そ、そう?ありがとう。ハイヤーはいつも勉強を頑張っていて偉いね。今日も頑張って」

「別に勉強は好きでやっているだけだから。姉さんは……姉さんも頑張って」


淡々とそう言ってハイヤーは部屋へ戻っていった。

頑張って?

頑張って本を探して来いって意味だろうか。


廊下に取り残されたペルルは、少し首を傾げながら書庫に向かう。


そういえば今日もそろそろ手紙が届く時間だ。

多い時には郵便受けに収まりきらないほどの手紙が届く。定期的にチェックをしておくのもペルルの仕事だった。


書庫に行く前に先に郵便受けを確認しに行った方がいいだろう。外に出ると案の定手紙が届いていた。


数を確認するために何げなくパラパラと見ていると、思わず手が止まった。

大きな翼を広げる鷲のマーク。

この国の王家の紋章だ。


これが王宮からの手紙ということが一目で分かる。


ディアマンは元気にしているだろうか。

久々に王宮という単語を脳裏に浮かべて、まず思い出すのはディアマンの顔。


そして、とうとうロベリアの噂はそこまで届いたのかと驚いた。

中身を確認したいがそんな大それたことはしない。

分かりやすくその手紙を一番上にして、ペルルは両親の元へ向かった。


「失礼します。今日の手紙の中に王宮から届いたものがありました」

「えっ!?」

「なんだって!?」


両親の部屋に入りそう声をかけると、駆け寄ってきた二人はペルルの手から素早くその手紙を取った。


他の手紙に見向きもしないで封をあけた父親は一度内容に目を通し刮目したあと、それが現実か確かめるようにゆっくりと声に出して読み上げる。


「カーター家の娘を王宮に迎え入れたい。家族全員で王宮を訪れるべし……」

「あなた!」

「嘘じゃない!これは本物だ」


両親のあまりの喜びように逆にペルルは感情が覚めていくのを感じた。

嬉しいことなのに素直に喜べない自分が嫌で、気づかれないように小さくため息を吐きながら他の手紙に視線を落とす。


「さっそく支度をしないと……」

「いや、まて……、なんでこいつの名前もあるんだ」


そこで途切れた言葉。

少し顔をあげると両親が苦々しい顔で自分を見つめている。


「な、なにか……?」


恐る恐る問い返すと父親が大きくため息をついて手紙をこちら側に向けてきた。

王家からの手紙には家族5人分の名前が記されている。


「本当は連れて行きたくないが、ここに名前が書いてあるからな。ただお前がロベリアの姉だと王宮の人間に思われるのも困る。当日は顔を隠していきなさい」

「ロベリアはもちろん。ハイヤーの優秀さをお伝えするだけでいいのに、どうしてこの子まで」

「国の決まりなんだろう。……いいな、綺麗な布でもかぶって、何か聞かれたら風邪をひいた、とでも言うように」

「わかりました……他の方からの手紙はどうしましょう」

「そんなの暖炉にでもくべておけ」


父の言葉に頭を下げ部屋から出たペルルはもう一度手紙に視線を落とす。


きっとここには愛の言葉がたくさん綴られているんだろう。

それが読まれもせず捨てられるのはなんだか不憫。

だからといって私が見ても意味がない。


この手紙も、私も、それほどの価値しかないのだから。


嫌なら連れて行かなきゃいいだろう。

それか王族の前で突然この顔を晒すのも悪くない。


鬱憤を晴らすべく想像の中でいろいろなことを思い浮かべる。

それだけで少しは気持ちが落ち着いた。


それに何をいわれても、どんな扱いをされても、王宮にいけるというのなら喜んで従おう。


もしかしたらディアマンに一目会えるかもしれない。

どんな風に成長しただろうか。

あのときは私よりほんの少し小さかったディアマン。

あれからずいぶんと時が経ったのだから、もしかしたら私の身長を超えているかもしれない。


未だに彼のことを考えると心がふわふわと軽くなる。

ペルルは緩んだ顔のまま廊下を走りだした。



――――――――――――――― 



「ロベリア、世界で一番可愛いわ」

「お前は私たちの誇りだ」

「ありがとう。お父様、お母様」


たくさんのフリルやレースをあしらったゴージャスなドレス。それこそ王族が着るようなそのドレスもロベリアの顔には及ばない。愛らしく可憐で美しいロベリアを引き立たせるだけ。


手紙を受け取ってからというもの両親は毎日上機嫌で浮かれていた。より一層大切にされているロベリアを見るのは辛かったが、こうして改めて見ると確かに私の妹は美しい。


それなのにさっきから気を抜くと眉間に皺が寄りそうで顔に意識を集中させる。


「お前はいつまでそんな恰好をしているんだ。早く準備をしなさい」

「え、準備ってなにを……」

「ロベリアの姉がそんなみすぼらしい恰好でいいわけないだろう。少しは考えろ!」


ただ機嫌が良いのはロベリアの前でだけ。

強い口調でそう言われても、ペルルには何のことだかさっぱり分からない。これはいつも身に着けている洋服だ。みすぼらしい恰好と思っているのなら、ロベリアほどじゃなくて構わないから少しは良い物を与えてくれればいいのに。


ほんの一瞬気が緩んだペルルのわずかに寄った眉間の皺を見て父は不機嫌さを露にした。


「なんだその顔は」

「すいません」


条件反射で謝ったペルルに父は舌打ちをするが「お父様!」と駆け寄ってくるロベリアを見てすぐに破顔した。


調子が良いと分かっているがこういうときは妹がいてよかったと思う。

この空気には耐えられない。


「姉さんあっち。呼ばれている」


二人から顔を背けたペルルは部屋に入ってきたハイヤーにそう声をかけられる。正装に身を包んだハイヤーはいつもよりさらに大人びてみえた。あっちと部屋の外を指差したハイヤーに頷き廊下に出ると、ロベリアの部屋から母親が顔を覗かせている。


「これに着替えなさい」


ぐいっと押し付けるように渡されたのはロベリアのクリーム色のドレス。ペルルは可愛いと思っていたが、本人はあまり気に入っていないようで男性の前で着ることもなく一度家の中で袖を通した後クローゼットに眠っていた。


「でもロベリアのじゃないですか?」

「もちろんあの子が着た方が可愛いけど、今回は仕方がないでしょう。背丈だけは一緒なのだからありがたく思いなさい」


暗に背丈以外は違うと言われているが、そんなこと全く気にならなかった。

私もドレスを着させてもらえる。

ふんわりとした手触りのドレスはペルルにとって初めてのドレスだった。


母の言う通り着る者によってこうも違うかと鏡を見て落胆はしたが、それでも美しいドレスは着るだけで心が華やかになる。


迎えの馬車に乗り王宮へ向かう間中、ペルルは被った布越しに窓の外を眺め続けた。


この姿を見たらディアマンは喜んでくれるだろうか。

一目でいいから会いたい。けど比べられたら一目瞭然だから妹と一緒にいるところは見られたくない。


どっちつかずの気持ちに頭を抱えたくなるが、それでも久しぶりに心が躍る。


王宮で家族と離れるタイミングがあるかは分からないが、きゃっきゃっと盛り上がるロベリアたちを横目にペルルはずっとそのことばかり考えていた。



――――――――――――――――――――― 



な、なんだこの緊張感。


「王子が来るまでここで待っていてください」


そう言われ待っていたのはいいが、いざやってきた王子というのは何も言わずただ椅子に座ってこちらを見ているだけ。


ペルルたちはその前でずっと頭を下げている。

あまりに居心地が悪く体を動かしたくなるが、ジッと我慢しているとようやくお付きの男が口を開いた。


「カーター家の娘。顔を上げなさい」

「はい」


ハツラツとした声で返事をしたロベリアはゆっくりと顔を上げる。

その場にいる誰もがロベリアに夢中だろう。布を被っていることをいいことに、少しだけ頭をあげロベリアの様子をうかがう。


自身に満ち溢れている彼女は姉から見てもやはり美しい。

王子の顔を見るのは憚られ、ゆっくりと顔をもとの位置に戻す。


「噂は聞いている。名はロベリアと言ったな」

「はい。ロベリア・カーターです」

「ロベリア、王宮に入るにあたり大切なことはなんだと考える」

「日々政務にお忙しい王子を支え、尽くしていくことだと考えております」

「そうか。立派な答えだ」


恭しい口調の会話が繰り広げられていく。

ロベリアの受け答えもさすがというべきか。

これなら本人だけでいいようなもの。家族そろってこの場にいる意味なんてなさそうだが、だからと言ってディアマンを探しにいけるわけでもない。

ペルルはただ二人の会話をなんとなく聞いている。


「それより、そちらのお嬢さんは何故布を被っているのだ。あなたもカーター家の娘だろう?私は先ほどカーター家の娘と言ったのだが返事をしたのはロベリアだけだったな」


話題が急に自分に向けられた。

口から飛び出すのではないかと思うくらい、大きく跳ね上がった心臓が激しく動く。


言葉に詰まったペルルの代わりに父親が慌てたように答えた。


「申し訳ありません。この子は少し体調が悪いため、失礼かと思いましたが顔を布で覆っております」

「体調が悪い……。そうか、熱があってはいけない。少し確かめさせてもらう」

「い、いや。あの……」


明らかに狼狽える両親だが、布を外されるのはペルルも困る。

どうにかこの場をやり過ごそうと咄嗟に手を差し出した。


「あぁ。熱はないようだね」


近づいてきた従者の男はペルルの手を取り軽く触れた。

家の仕事ばかりして荒れた手を男性に触られるのはドキドキしたが、布を取られるよりはマシだろう。妹の真珠のような肌とは違うことに気が付いたかと思ったが、従者の男はそれだけ言うとペルルの手を離した。


ホッとしてすぐに手を引っ込めたペルルは再び平伏の姿勢をとる。


「質問に戻ろう。それではロベリアにとって家族の存在はどう感じている?」

「私の家族はとても優しくて温かい存在です。両親はとても良くしてくれますし、やりたいことを好きにやらせてくれました。なので私もそういうやさしさや思いやり、寛容な心をもって素敵な家族をつくってい……」

「お前のいう家族というのはこの者たちのことだな?」


まだロベリアが話している最中だというのに、それを遮るように男の声が聞こえる。冬の凍てついた空気のようなその声色が王子の物だと気付いたロベリアは一瞬口ごもった。


「そ、そうです」

「そうか。それなら父にも問う。家族はこの5人で間違いないな?」

「も、もちろんでございます」


突然話を振られた父も慌ててそう答えた。

一瞬流れた沈黙が永遠のように感じられるほど空気が重い。


「お前たちは王家の人間に対して嘘をついたな」


地を這う獣のような強く怒りに満ちた声が重たい空気の部屋に響く。


「お、うじさま?」

「温かくて優しい家族だって?それならそのやさしさと思いやり、寛容な心……それらのほんの少しでも、そこにいる彼女にかけたことはあるのか、と聞いている」

「……っ」


あまりの剣幕にロベリアは喉をひきつらせた。何事かと礼儀も忘れて両親も顔をあげる。隣で家族が顔をあげた動きが分かり、ペルルも少しだけ顔をあげた。


「なぜ答えられない!なぜ……そのようなことが出来るんだ」


徐々に小さくなっていく語尾に、お腹の底が熱くなるのを感じる。その熱は体全体に広がっていき、何故か無性に泣きたくなった。


この王子様は私のことに気が付いて心を痛めてくれているんだ。

遠くに座る王子の顔は見えないが、その優しさにディアマンを思い出した。


こういう王族に仕えているから彼も優しかったのだろうか。


ツンと鼻の奥が痛んで慌てて頭をさげる。

あぶないところだった。久々に感じた人のやさしさに身体はついていかないらしい。泣かないように我慢していると喉の奥がぎゅうっと痛くなる。その苦しさが今はありがたい。


「お、恐れながら……決して蔑ろにしていたわけじゃありません。彼女は」

「黙れ。これ以上お前たちの話は聞きたくない」


冷たく言い放たれた父親は口をつぐみ、わなわな震えながらロベリアは頭を下げた。


王子が立ち上がったのだろう。

コツコツと聞こえてくる足音にみんなが緊張する。

徐々に近づいてきた音はペルルのすぐ近くでピタリと止まった。


「……遅くなってごめん。顔を上げてほしい」

「ぇっ」


頭上から聞こえる声。

喉の奥から呼吸と共に、か細い声が漏れる。

でも、そんなはずない。だって、この人は王子で、だって……。

動けないでいるペルルにもう一度声がかかった。


「ペルル」


今、この人は私の名を呼んだ?

思い切り顔を上げると目の前に立つ王子の手によってペルルの顔を覆っていた布が捲られた。


目がとろけてしまうほど整った顔を間近で見て一瞬たじろぐが、その中にほんの少しだけ懐かしい面影を感じる。


「ディ、アマン?」

「僕のこと……覚えていてくれてうれしいよ」


その言葉はハッキリと覚えている。

たしかあのときも木々の隙間からそんな顔でこちらを覗いていた。


あぁ。泣かないで。

泣きそうに歪んだ顔にそっと手を伸ばすと、その腕を掴まれて体を引っ張られる。立ち上がってぐいっと引き寄せられた体はディアマンの胸にすっぽりとおさまった。


痛いほど注がれる視線に気が付き視線を下に落とすと、両親とロベリアが唖然とした顔でこちらを見ている。なんとも居心地が悪い光景に顔を背けると、ディアマンの手が優しくペルルの背中を撫でた。


「あの時の約束覚えている?」

「えっ。えぇ、もちろん……で、でもディアマンあなた王子だったなんて一言も」

「嘘をついていたことは謝るよ。それに王子って言っても僕の上にはたくさんの兄さんたちがいるから、ペルルを王妃にはしてあげられない。でも……ただ約束だけは守りたくて」

「私、王妃になりたいなんて一度も言っていない。あのときは、幸せな家庭を作るのが私の夢で、そこにあなたがいてくれるだけで良かった」

「うん。知っている。ちゃんとわかっているよ。それにペルルならそう言ってくれると思っていた。ありがとう」


泣いているのか笑っているのか分からない顔で、それでも彼の視線からは柔らかな温もりを感じた。

お礼を言うのはこっちだ。

その温もりにじんわりと浸っているとディアマンが抱きよせる手に力がこもった。


「約束通り、カーター家の娘を王宮に迎え入れる」


ペルルに対してあの頃と同じように柔らかな口調で話していた人物とは思えない、ディアマンの凛とした声が部屋中に響き渡った。


「だが、お前たちがペルルにしてきた行為を私は許すことが出来ない。それにお前たちの家族に彼女は含まれていないような口ぶりだったからな。ちょうどいいだろう。カーター家と私たち王族との関係を作るつもりは一切ない。さっさと出ていけ」


これがあの優しかったディアマンの言葉なのだろうか。

突き放すようなその口ぶりに「そんなっ!」と父がたまらず抗議の声をあげるが、ディアマンは冷たい顔で睨みつける。


「何か文句でもあるのか?自分のしてきたことをよく考えてから口を開け」

「っ……ペルル!お前には散々教育をしてきただろう。お前から何かこの方に……」

「黙れと言ったのが聞こえないのか!」


王子とは話がつけられないと思ったのか父はペルルに対して口を開く。ディアマンの厳しい口調に一度口は閉じるが、名を出されたペルルはビクっと体を震わせた。


「何も言わなくていい」

気遣うようにそう言われるが、ペルルは大きく息を吸ってから「大丈夫」と言った。

ディアマンから体を離し自らの足でちゃんと立つ。


「教育をたくさん受けさせてもらったことは感謝している」

「そ、そうだろ!?」

「でも。私もあなたたちが私にしてきたことを絶対に許してあげない」


一瞬、顔を明るくした父だがすぐに唇をかみしめる。

母親とロベリアは悔しいのか恥ずかしいのか顔を真っ赤に染めて唇を震わせていた。

不思議なことに弟はこんな騒動があってもずっと平伏をしたまま。

ペルルは三者三葉の行動を眺めながら、言葉を選ぶようにしてゆっくりと口を開く。


「自分があなた達と似ていないことは分かっている。だから、愛して、もらえないことも。でも、一度でいいから、優しく……抱きしめてほしかった。ロベリアとハイヤーみたいに家族として。一緒に。暮らしてほしかった」


泣かないように。

震える声を誤魔化すようにわざと声を張るようにして喋った。


「だとしてもだ。誰がそこまで育ててやったと……」

「ただ衣食住を与えていればいいとでも思った?……私にだって感情がある。人間なんだよ」


ディアマンが肩を抱いてくれる。

じわりと滲んだ瞳を手の甲でこすって顔を上げた。


「家族に愛してほしい。と思うのがそんなに悪いことなの?……最初に私を突き放したのはあなたたちでしょ」

「それは誤解よペルル。私はあなたのことをちゃんと愛していました。だから、ね?」


縋るような母親の言葉に呆れを通り越して笑いがこみ上げる。


「あなたたちが愛していたのは可愛い妹と跡継ぎの弟でしょ。……私じゃない」

「ペルル!」


小さい頃はこうして父に強く名前を呼ばれるのが怖かった。


名を呼ばれるのは叱られるときだけだったから。

でも、今はそんなこと思わない。

傍らの温もりが勇気をくれる。


「だから疎まれ子だった私は好きにさせてもらう。大切にしてくれなかったあなたたちとは縁をきります」


力強くきっぱりとそう言うと父が拳を床に叩きつけた。

わっ、と泣き出したロベリアを母親が慰めるように抱き寄せる。


「わかったな。お前たちは王族ともペルルとも何のかかわりもない。今後一切彼女の前に姿を現すことを禁じる。……連れていけ」


ディアマンがそう言うと控えていた人たちが動き出す。


その時だった。

今まで一度も顔を上げなかったハイヤーが急に立ち上がった。


「父さん、母さん。姉さん。俺もあなたたちとは縁を切ります」

「……は?」

「ハ、ハイヤー?何を言っているの?」


その言葉に両親はもちろん、ペルルとロベリアも口をポカンと開けた。ディアマンですら、わずかに目を細め怪訝な顔をする。

ハイヤーは彼らの顔を見ても相変わらず表情をあまり変えないまま淡々と口を動かした。


「ここに来る前に色々と手続きはしてきました」

「お、お前まで急にどうしたんだ。何がどうなっている。……全部お前のせいか」


鬼のような顔でペルルを睨みつけ今にも掴みかかってきそうな父を、控えていた人達が羽交い絞めにした。ディアマンは咄嗟にペルルの前に出て守ろうとしてくれる。


「ペルル姉さんのことは関係ない。そもそも最初から俺は家を出るつもりだった」

「お前はカーター家の跡取り息子なんだぞ。貴族の地位を捨ててどうするつもりだ」

「ペルル姉さんの言う通り。たしかに俺は愛してもらっていたと思う。でもそれは俺が男でこの家の長男だったから。父さんも母さんも“優秀な跡継ぎ”を愛していただけで、俺をハイヤーという個人として見てくれたことは一度もなかっただろ。俺は自分を大切にしてくれない相手の言うことを聞くほどお人好しじゃない。あなたたちが肩書きにこだわるなら、それを利用させてもらっただけ。おかげで十分な知識を得ることが出来た」


こんなに饒舌に話すハイヤーを初めて見た。

呆気に取られていた父が顔を真っ赤にして吐き捨てるように叫ぶ。


「この恩知らずがっ」

「俺は俺を大切にしてくれる人の元でこれからさらに学んでいく。あの人の元で成長していく。だから、そこにあなたたちはもう必要ない」


きっぱりと言い切ったハイヤーを前に三人は呆然とした。

「連れていけ」

黙ってしまった三人にディアマンがもう一度そう言うと、今度こそ部屋の外へ連れ出されていく。


ハイヤーのことはどうする?と目配せしている人たちを見てディアマンが片手を挙げ制した。一歩下がった人たちを横目にハイヤーはすっと息を吸い込む。


「まさか姉さんが選ばれるなんてね。いつの間に王子様と知り合っていたの?」

「えっと、私も王子様だって知らなくて……それよりハイヤーさっきの話は本当なの?」


問いかけるとハイヤーはこくんと首を縦に振った。

あの家で愛されていないのは私だけだと思っていたのに、弟は弟で孤独を感じていたのだろうか。それなら私はそれに気が付かず、自分ばかり辛いと思っていたのか。


ハイヤーの言動に救われていたと思っていたが、本当に私を気にかけてくれていたのだとしたら、何も気付かず過ごしてきた自分があまりにも愚かだ。


「ハイヤー……あの」

「そんな顔をしないで。結局姉さんを助けたのはその人なんだし」


一瞬口をつぐんだハイヤーはすぅっと息を吸い込む。


「トトア・アムライさんの養子になるんだ。ペルル姉さんも、と思っていたけど」

「トトア・アムライ?……もしかして」

「ディアマン知っているの?」

「あ、あぁ。僕が知っているトトアだったら、第二王子の家庭教師をしているはずだけど」

「その人で合っていると思います。俺も今日から王宮で暮らすから」


ハイヤーも王宮に。

あまりの展開に頭がついていかない。頭が真っ白になって「そう」としか言葉が出なくなった。そんなペルルをよそにハイヤーは軽く頭を下げる。


「ペルル姉さんをよろしくお願いします。……俺も王宮にいるからまた会う機会もあると思う。姉さんが嫌じゃなかったらだけど」

「嫌だなんてそんなっ。今まで話してこなかった分たくさん話したいわ。ハイヤーのこと聞かせてほしい」


今度は言葉がすんなりと出てきた。

勢いよくそう言うとハイヤーが少しだけ微笑む。こんな穏やかな笑い方をするのも初めて知った。家族という狭いコミュニティーにいるときは気付かなかった。


「ハイヤーくんといったね。こちらこそよろしく。君のことは歓迎するよ」

「ありがとうございます」


もう一度会釈をしたハイヤーはそのまま部屋を出て行く。従者の人も後を追うように出て行って部屋に二人きりになった。


静かになった部屋に強張っていた身体から急に力が抜ける。


「大丈夫!?」

「ご、ごめんなさい。少し気が抜けちゃって」

「こっちで少し休もう。……僕たちの間にもたくさん話すことが必要だからね」

「ありがとう。なんかディアマンが凄い格好良くなっているのにもびっくりしちゃって。あのときは私より小さかったのにね」


身体を支えるディアマンはペルルの返事を聞いてにこにこと笑っていたが、みるみるうちに顔が引きつっていった。さっきまで肩を抱いたりもしていたのに、ペルルがディアマンを見上げると顔を真っ赤にして目を泳がしている。


「そ、そういえば急に抱きしめたり、肩を触ったり、いやじゃ……なかった?」


恥ずかしいのか消え入りそうな語尾に思わず笑ってしまった。

ペルルに変わって怒ってくれて、両親たちを跳ねのけてくれたディアマンはどこにいったのだろうか。

今、目の前にいるのは自分が知っているあのときのディアマンと同じ。


「ペルル、なんで笑っているの?」


そう戸惑っている様子もおかしくて笑いながら「ごめんなさい」と謝る。


「嫌なわけないじゃない。8年前からディアマンのこと忘れたことなんて一度もない。だって私に愛をくれたのはディアマンが初めてなの」

「それは僕のセリフだよ。本当は僕、第八王子なんだ。母親は僕を生んで亡くなってしまってそれから離れで乳母と二人で暮らしていた。自分のせいで母親がって気持ちと、面倒見てくれている乳母も僕のせいで……。それでなにもかも嫌になって、自分のせいで誰かがって思うのが怖くて、だからあの日王宮を抜け出したんだ」


ディアマンの語る過去に息が詰まる。

優しかった彼の心の痛みが伝わってきてたまらずその手を握ると、ディアマンが優しく微笑んだ。


「そのときにペルルに出会った。そのおかげで僕も強くなれたと思うんだ」


身長も伸びたしね、と冗談っぽく言うディアマンに頷く。

同じか少し下だった目線が、今では首を持ち上げて見上げるほど大きくなっていた。


「王宮ではあまり自由がないんだ。そんな世界に君を迎え入れることを悩んだときもあるけど、それでも僕は一生ペルルのことを守るし傷つけない。僕と一緒に幸せな家庭を築いていってほしい」

「ありがとう……私なんかでよければ喜んで」

「ペルルじゃなきゃだめなんだよ」


後頭部に手を添えられ腰を引き寄せられる。

少し屈んで近づいてくる顔に目を閉じると唇が触れ合った。ディアマンはうまく息が出来ないでいるペルルを誘導するように、優しいキスを何度も繰り返す。


忘れかけていたあの日の温もりを再び思い出した。

今度は忘れないように必死にならなくてもいいんだ。



何度目かのキスをするペルルの目にきらりと涙が滲んだ。



連載作品としましたが本編はとりあえず一段落しました。

続きは本編に収まりきらなかった弟のお話か、王子の過去か、ディアマンとペルルの甘々な日常か、残された三人家族の話にするか。色々悩み中ですがそのあたりを番外編として書けたらいいなぁと考えていますが完成は未定。


短編のつもりがやっぱり長くなってしまいました。ここまで読んで頂いた方。いいね・評価等をして頂いた方。とても嬉しいです!ありがとうございました!

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