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祝福された黒い血  作者: 梅
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第1話呪われた一族の力

 俺の一族の祖は【道元堂又皆】を名乗り、日本各地にその名を刻んだ後、実家の土地に根を下ろした。

 そこから特異な能力を持つ人間が生まれ初め、今では蜚蠊の様にわんさか増殖して増長している。

 力の大小はあれど、能力を宿していない一族はいない。

 一族の全てが能力者だ。

 その歴史は千年を優に越え、始祖に匹敵する才能を宿してるのが俺ってわけらしい。

 ホントは超えてるけどな。

 始祖の能力は出鱈目だった。

 文献に残ってる限りでも絶大な力で勢力を伸ばし、口伝の内容は凄惨を極める悍ましいものばかりらしい(笑)

 ま、実際は多少脚色してあるが、そんなのはどうでもいいんだ。

 どうせその歴史も俺の代で幕が閉じる。

 興味は特にないが、始祖の能力を奪ってから皆殺しにするからな。

 力を失ったうじ虫どもなんぞ、息をする様に殺せるというわけだ。

 ま、そんなものなくても、一族郎党皆殺しぐらいなら、俺の力だけでもいけるけどね。

 どうせ百とちょっとしかいない。

 多少手傷は負えど、初代を凌ぐ才能に気付かない愚者共

 出涸らしの雑草は引っこ抜いて終わりなのさ。



「大体地元じゃないと力が著しく落ちるって時点でさ、笑えるくらい才能を宿してないってことの証明なんだよな。マシなのは叔父貴ぐらいなもんさ……お前らもそう思わない?」



 投げ掛けた言葉に返答はない。

 そんなのは知ってる。

 辺りに転がる血塗れの人間

 ちゃんと生きてるよ。

 殺してもどうにか出来るが、今はまだデメリットの方が大きい。

 それに殺したい訳でもなし。

 高校生活初日に興味がないから、暇潰しにその辺をぶらぶらしてたらこうなった。

 所謂難癖付けたカツアゲだわ。

 当然返り討ち。

 気持ちは残念ながら晴れない。

 狩り飽きてるからね。

 親の顔より見たぜ。

 コイツらとは初対面だけどな。



「さぁてと、そろそろ起きて貰う、か!」



 霊力を込めた心臓蹴り。

 そう、我が一族は霊能力者

 俗に言う妖怪や幽霊を退治したり、占いや相談など何でも屋として生計を立てていた。

 今は土地に癒着して能力を傘に権力を振り回すうじ虫

 ご先祖様が見たら涙を流すぜ。

 初代は大喜びだけどな。



「──ガハッ! お……ヴェアアァア〜」

「ゴミ屑風情が汚ねぇ声で喘ぐなよ笑」



 死に掛けた男が霊力により息を吹き返したが、相手の痴態っぷりに思わずツッコミを入れた。

 勿論物理的にな。

 芋虫の様に伸びて喘ぐ男の喉を蹴り潰す。

 この先二度と喋れまい。

 そういう呪いを込めたからな。

 俺と同等かそれ以上でなければ解呪は出来ん。

 強者を認識出来ぬ弱者なんぞ生きてる価値はない。

 人間社会のぬるま湯に浸り過ぎだな。

 もっと野生に戻らんとダメだぞ。



「ま、喋れねぇなら、お前は犬畜生と変わらんか。よし、イヌッコロちゃんよ。お前に声を掛けた理由は分かるよね?」

「っ〜!」

「無視すんなやゴミ屑風情がよ」



 俺の沸点は極めて低い。

 怒り浸透になって思わず人差し指を引きちぎった。

 え? お前のせいで喋れないだろって?

 そんなのは承知はしとる。

 それでも服従のポーズを示さん低脳には、肉体言語で精神にまで刻まないと理解してくれないんだ。

 そう、これは愛の鞭

 ホントこんなことしたくない。

 ま、ついでに暇だからね。

 いっそのこと残り19本の指も千切ろっと。



「は〜い、残りの指も全部逝きますからね〜笑」

「ッ〜〜!?」

「は〜い、首を横に振ってもダメですよー笑」



 雑草感覚でぽいぽい引き千切り、指無しだるまが完成しました。

 男は白目を剥いて失神中

 泡も吹いてます。

 まっこと汚くてイライラしたので、ついでに四肢ももぎ取ることにした。

 ああ、霊能力は使わないよ。

 産まれながら身体能力が常軌を逸していた。

 人間を己の身一つで解体なんて造作もない。

 ま、これも殺され掛けた要因の一つだわな。

 身体能力、霊能力、精神性

 どれを取っても人間の常識を超えている。

 そりゃあ身内から化物が産まれたら殺しに来るわな。



「そう、俺は愛情に飢えた獣なのさ。誰かに愛されたいから、社会に紛れて人間の真似をする……ま、ぜんぜーん理解出来んけどなぁ〜笑」



 マジ爆笑

 そんな感情は持ち合わせてない。

 人間の中にそういった感情があるのは識っている。

 理解は出来るけど、共感は出来ないというだけ。

 そう考えたらほんとに無駄な行為ばっかだな。



「おっとと、死んだか。少し力が弱かったな。反省反省」



 思考に耽りながら解体してたら、気が付いた時には男は息をしていなかった。

 当然の結果である。

 寧ろ麻酔なしで生きたまま四肢を捩じり取られて生きてる人間がいたら見てみたいものだ。

 因みに今の所は会ったことないです。



「え〜と、大体この辺かな? あ、違ったわ」



 大なり小なり個体差はあれど、生物の心臓の周りには霊力の流れというものある。

 血液が心臓の力により循環して全身を巡る。

 それと同時に霊力も循環しているのだ。

 違うのは殆どの人間はそれを感じ取れずに生を終える。

 感じたところで何も出来ずに死ぬ。

 霊力を応用して運用出来る奴なんて早々いない。

 だから霊能力者の絶対数は少なく、パチモンも多いのだ。

 それには色んな理由があるけど、一番デッカいとこは、現代の人間が昔と比較して弱くなったことが挙げられる。

 要は土台の基礎が脆弱だから肉体が拒んでるわけ。

 だから、目の前で吊るされてる男の霊道の位置を間違えたちゃった。

 やっぱりこういう出来損ないは、直接脳漿から侵入して掌握するのが一番だった訳ね。

 知ってたけど笑


 ずぶりと掴んでいた心臓から手を離し、血塗れの指で男の頭蓋骨から脳漿へと侵入する。

 骨が砕けて脳汁が飛び散ろうがお構いなし。

 どうせ最後に喉以外は治すしな。



「おーキモいキモい笑 リアル心霊現象として動画にすれば金になるかな?」



 首から下がえげつない動きで脈動する達磨な男

 少々霊能力を強く流し過ぎたみたい。

 霊道が馬鹿みたいに広がって肉体が超活性化してる。

 魂もまだ肉体に在るし、この分だと直ぐに生き返るな。



「やっほー最高にハッピーでハイな悪夢はどうだった? 足りないならお代わりを出してやるけど?」

『許して下さいっ!! もう二度としません! 本当です!!! 貴方様の言うことは何でも聞きます! 私はイヌッコロです! ワンワンワンワンワンワン! 許して下さいお願いしますワンワン』

「あら、霊力と喉を潰した影響か。まさかテレパシーに目覚めるとはねぇ。肉体を少し頑強にした程度だったんだけどなぁ」

『キャンキャン! くぅ〜ん、ゴロゴロニャーん〜』

「ついでに頭も壊れたかな。犬なのに猫まで混じってらぁ。はははは、次汚い声で猫真似したら、こんなもんでは済まさないよ?」

「……わん」

「よし、言葉が伝わる様で何よりだ」



 改造は概ね成功と言えよう。

 今は眼球が飛び出て脳味噌丸見えの肉達磨だが、元の肉体を霊力でくっ付ければあら不思議

 イヌッコロの完成です。



「……お前の面可愛くないな。ただの人間じゃん」



 ついでに犬顔にしてやるか。

 俺は柴犬と秋田犬が好みだから、その辺りに寄せた感じで作り直そう。



「んー思ったより、いや、大分酷い失敗作だな。これじゃ犬面人間だわ」   



 こねこね作り替えること数分

 犬顔の人間が出来ましたとさ笑

 全然可愛いくない。

 やっぱり殺して畑の肥料にでもしてやるかな。



「ま、めんどくせぇからいいや。俺の霊力に触れたから、後は言わなくても分かるな? そろそろ飽きたから帰るわ。掃除と教育は頼んだよイヌッコロ」

『わんわん!』   


 満面の笑顔でお座りをするイヌッコロを尻目に、秘密の廃工場を後にした。

 俺のお友達(笑)が所有する暇潰し場

 電気等諸々のインフラはバッチリ

 足りない物はお願いすれば飛んでくる。

 ほんと、便利な世の中になったもんだよ。



「……もう昼前か。飯買って寝よ」



 別に疲れてはいない。

 眠い訳でもないけど、今更高校に行く気も湧かん。

 新しいペットも出来たことだし、今日の暇潰しとしては悪くないだろう。


 さて、明日は何して過ごそうかなぁ。

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