さぁ、探索者になってみよう! ①
「…………いや、まだ諦めるには早すぎる。マジの最終手段として残していたのが1つだけあったな。」
お金と共に置かれていたスマホを手に持ち上げ、画面には細かく書かれている文末から少年は迷いなくタップした。
もちろん、そこに書かれていたのはただのメールではない。『藤原光星様。「探索者」になってはみませんか? (以下略)』と、要約するならばダンジョンで一稼ぎしないか? の文章がそこにはびっしりと書かれていた。
「………登録料無料。アイテムのランクに応じて買取額がup。まぁ、ここら辺を聞けば最高の仕事にも思えるが───他の仕事と違って下手したら死ぬ可能性があるんだよなぁ……。
…………はぁぁぁぁぁ。まぁ、しょうがねぇか。このままでは『詰み』になってしまうからな。………だったら、時は金なりって言うし早速一攫千金を目指すとするか!!」
『ピンポ〜ン♪』
さぁ、心の決心が付いたから前へ進もう! と思った矢先、KY(空気が読めない)なチャイムさんが玄関先から光星の耳へと響いてきた。
「えぇ〜と……すみませんが、家は新聞をお断りしているんですけど……………すみませんが、今は用事があるので夜にでもいいですか?」
玄関の扉を開けた先には、ワ〜オ! くそババ───おっと口が滑った。まるまる太った豚みたいな人(一応は女性)がそこには堂々と佇まいていた。
「とっと家賃を払え、クソガキが」
『…………ガチャ(玄関の扉を閉める音)』
「家賃を払えって言っているんだよクソガキがァァァァア!!」
玄関の扉の前に立っていたこのアパートの大家は、近所迷惑になる事を気にせず玄関へ怒鳴り散らしていた。
〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜
ちっ、今日のくそババア(笑)は前回以上にうるさかったな! 別に家賃は確実に払うって言うのに、あんなに怒鳴り散らす必要は絶対に無かっただろ!!
光星は心の中で悪態を付きながら、全財産の『2万580円』が入っている傷だらけのやっすい財布を大事に持ちながら目的地へと向かって行った。
『次は左方向です。そして、目的地終点です』
「へぇ〜、2日前にこの町に初めて来たが………この町も他の町に負けず劣らず景気がいいな。
まぁ、それも当然の事か。何たって、この町は『ダンジョンがある町』だからな」
朝の10時。
携帯からのアナウンスに従って前へ進んでいくと、目の前にそびえ立っていたのはタワー型のダンジョン。……通称【秋影ダンジョン】。そしてその少し先に建てられていたのは、本部ではないにしろデカデカと「探索者ギルド」と分かるような建物が1本道から見えていた。
主人公の持っている携帯は、『1年間通信料無料!』の最強プランを味方に付けているので、お金の事はあまり気にしていない様子です。