エピローグ
この日僕とエレミーはエリュシカに呼ばれ、サラーガ王との会談以来久し振りに皇城へと来ていた。
そして謁見の間へと通され、面倒な勲章授与などの儀式をした後、そのまま新たな指令を出される。
「ナギよ」
「はい」
「お前の作る甘味を、今一番欲している者達がここより西に大勢居る。その腕を振るってくる気はないか? やりがいは私が保証しよう!」
「それはいいんですけど……西のどこですか?」
「……国境付近……かな」
「ちょっと待って下さい!? そこって……」
「紛争地帯だな」
Nooooooooッ!?
エリュシカはなおも、耳を疑うような言葉を続けた。
「最近では衝突の規模や範囲が拡がって、我がイド帝国にザイオン、シーナと三つ巴状態な上に、付近にはドワーフの住む炭鉱とエルフの森と、仲の悪い種族同士の住み処もある一触即発の危険地帯だ。向かう際は細心の注意を払い、くれぐれも亜人達を刺激しないようにな」
「えっ、なぜ僕らが行くことが前提のような口振りでそんな説明を始めるんです? それは別にまだ決定事項という訳じゃないですよね……?」
そう至極真っ当な口答えをしてやった直後、久し振りにあの冷たく鋭い金属の感触が僕の首の皮に接触する。
もちろんチェルシーだ。
「貴様姫殿下の期待に背く気か?」
僕の首は3ミリ穴が開いていて、頭部の付け替えが可能なプラモデルじゃないんだよ?
エリュシカはチェルシーを制しもせずに話を続けた。
「お前の作る甘味の力で、ちょっくら兵達を激励してやって来てはくれないか?」
あれあれ?
これはいわゆる、脅しというやつでは?
「ちょっくら死んでこいと?」
僕がそう訊き返すと、ギロリとした目がチェルシーから向けられる。
同時に刃がより強く喉元に押し当てられた。
「うっ!?」
僕に拒否権は無いんですねわかります。
結局、こうなるのか……。
チェルシーが恫喝する。
「おい! 返事は!?」
このクソチビ姫にイカレ女騎士がぁっ!?
いつかオークに犯されろっ!
僕はこう答えてやった。
「い、行きます……」
……死地へ。
エレミーが僕の服の袖を引っ張ってくる。
「……何かな?」
「大丈夫だ。さいつよの私も居る」
「いや君、夜しかまともに戦えないよね?」
「まあ日中でも色々やりようはある」
「本当かよ……」
にこやかにエリュシカが言った。
「エレミーも乗り気のようだし、存分に働いてくるがいい」
今度の勤務地はまさかの戦場。
でもエルフの森があるってことは、スケベエルフ……つまりエロフもどこかに居るかもしれないしね!
レッツポジティブ!
……はあ。了




