いざ出陣
全ての調理工程を終え、調理場で一人静かに待っているところへと、セバスが現れてこう告げた。
「ナギ様、出番でございます」
「……はい!」
配膳を頼んだメイド達を引き連れ、セバスを先頭に会談が行われている会議室へと僕は足を踏み入れる。
そこでセバスがにこやかな表情で言った。
「お茶の用意が整いましてございます」
僕はまずエリュシカの方に目を向ける。
顔には疲れが見えているが、その目にはやる気が強く籠っていた。
……そっちも頑張ってるみたいだな。
次に会議のテーブルを挟み、エリュシカと向かい合った相手の顔を見る。
大きな剃り込みを自ら入れたかのように綺麗なM字型の生え際から、後頭部にかけて流れるように逆立った独特なセットがされた白髪。
たっぷりと蓄えた口ヒゲと顎ヒゲ。
太く逞しい眉に、大きな鷲鼻。
目だけで人を殺しそうな程の眼力。
うわ大賢者感が凄いぃぃ!?
僕の事後の賢者タイムなど足元にも及ばないな……。
この人がサラーガ国のイズ王か……。
なるほど頑固そうだ。
ビリビリと皮膚に痛みが走るような、張り詰めた空気感の中、メイド達はテキパキと蓋に隠された和菓子の乗った皿を配膳し、緑茶を注いで回っていた。
それが終わると、エリュシカがイズ王に向かって語りかける。
「イズ王よ」
「何だ?」
ギロリと鋭い目が向けられるも、彼女は臆することなく、むしろ笑みすら浮かべて言った。
「今だけは余計な一切を忘れ、我が国自慢のパティシエが作った至高の甘味をお楽しみ下され」
「ふむ」
ここでセバスがテーブルについている全員へと語りかける。
「それでは皆様、しばしご休憩、ご歓談下さい」
その言葉を合図に、待機していたメイド達が和菓子を隠していた蓋を開けた。
その瞬間――!
「おお!」という歓声が元老院を始めとした両国の高官達から上がり、この場を包んだ。
取り分けテーブルの半分の側……つまりサラーガ側の方がその声は大きかった。




