百合根
「……みんな、ありがとう。お陰でいいアイディアが浮かんだよ!」
ポカンとしたみんなの顔が僕を見ていたが、構わず続けた。
「ミルキー」
「なんだ……ですか?」
「イド帝国の国花がユリってことは、その栽培もこの国では盛んに行われているということだよね?」
「そ、そうです。皇城には常にユリが飾られていますしね。それが何か?」
「よかった……。つまり百合根は欲しい時に、いつでも簡単に手に入るって訳だ」
「百合根? ……とは? 百合の根っこのことですか?」
「うん! ……フィーレ」
「なんすかー?」
「もう今日は君はこの店の手伝いはいいから、代わりにユリを幾つか皇城に行って分けて貰ってきてくれないかな?」
「了解っすー!」
それから本日の営業を終え、レフィーがユリを持って戻ってきたところで、先程思い浮かんだ会談用のスペシャルメニューの試作を開始する。
まずは花弁のように何枚も重なり合った百合根を一枚一枚剥がしては洗い、茶色い部分や黒い汚れ部分を包丁でそぎ切りしていく……のだが、これがなかなかの手間だ。
根気よく丁寧にその作業を終えたら鍋に湯を沸かし、酢を少々加えてから百合根を投入して茹でていく。
火が通ってくると、百合根のフチが透き通ってきた。
そのまま全体が柔らかくなるまで茹でたら、一度ザルにあげて熱い内に裏漉しして鍋に入れ、砂糖、水飴、白ワインを少々入れて焦がさないように練っていく。
程よい固さになったら火を止め、冷ませば百合根餡の完成だ。
更にそこから、この完成した百合根餡を二つに分ける。
片方は手で丸く成型し、もう片方は目の細かいザルに押し付け、細かくした。
そして丸く成型した百合根餡に、細かくした百合根餡を崩さぬよう纏わせれば、真っ白い雪のような百合根きんとんの出来上がりである。
それをエレミー達にそれぞれ差し出した。
しかし、反応はよくない。
エルシーが言った。
「白くて綺麗だけど、ちょっと……つまらない? かな……」
これにミルキーも続く。
「ふむ、私もこれよりは以前の紅葉の方が会談にはふさわしい気が……」
「自分もミルキーに賛成っすねー」とフィーレ。
彼女達の言うこともっともだと僕も頷いた。
この和菓子をこのまま出すとするならば、雪を連想させるため冬が一番だろう。
だが、僕はこれをこのまま出す気などそもそも無い。
安心させるためにも、そのことを伝えた。
「もちろんこれはまだ完成じゃないよ。ここから更に工夫をしていくつもりさ」
なんだそういうことかと、皆納得して百合根のきんとんを試食する。
そこでの感想を聞く限り、味に関してはなんの申し分も無いようだった。
後は見た目のブラッシュアップだが、普通のことをしても芸が無い。
……よし!
色々試していこう!
ここからが本当の腕の見せどころだ!




