骨折り損
「まあ色々あるっすけど、ザイオンとサラーガが手を組まなかった一番の要因は、サラーガが永世中立を謳ってるってとこなんすけどね。これが本当に厄介なんすよ」
「……どういうこと?」
永世中立なら、自衛戦争はしても侵略戦争は仕掛けてこないんだよな?
それのどこが厄介なんだ?
「永世中立国のサラーガはどことも手を組まずに、独立した国としてやっていくって宣言してるんす。だからサラーガと敵対するつもりのないこの国としては、是非とも友好関係を結んで、お互いにこの国とサラーガを侵略する意思を持つワートナーを押さえ込めたらよかったんすけど……」
「その提案を拒否した?」
「それだけならまだいいっすよ。こっちがその提案を持ちかけたことでサラーガ王のイズは『侵略戦争なんかに加担するもんかー』って激おこのおこ! これまで行っていた貿易すら停止して、この国との冷戦が始まったっす。それ以来、この間の高官を寄越した時までずっと何の交流も無し。向こうは水不足で困ってるだろうから、こっちが川の流れを変えてまで水を提供する意思があるって申し出てるのに会談すら拒否して、本当に頑固なヒキコモリジジイなんすよぉ。引きこもってる間に状況が良くなるとか、マジでお花畑なこと本気で思ってるんすかねぇ?」
……なんてことだ。
そんな厄介な人が今度の相手なのか。
そこまで硬く閉ざされた心の殻を、僕に破ってやることが本当に出来るのか?
絶望感しかない……。
僕が弱気になったことに気付いたのか、レフィーは意地の悪いことを言い出した。
「ホント、ナギピッピは責任重大っすよねー? もし今度の会談が失敗したら、サラーガがワートナーに攻め滅ぼされることはほぼ確定。ナイフォン大陸の東側が統一されれば、いよいよザイオンが挟み討ちにしようと大きく動き出すっすよー? そうなったらもはや手遅れ。この国は蹂躙され尽くされてジ・エンドにゃんって感じっすね!」
「……」
「だから……」
ここで彼女が、真剣な表情で僕の両肩に手を置く。
「えっ、なっ何?」
「……絶対に成功させて欲しいっす! この国のためにも、頑張ってる姫殿下のためにも! これは大マジっすよ!」
いつもはおちゃらけてるくせに、そんなのズルいって……。
でも国家機密も含まれているであろうことをこうやって話してくれたっていうのは、彼女が僕を信じ、期待してくれていることの表れなんだろうな……。
そういう気持ちは、裏切れないよなぁ。
「……わかってるよ、出来る限りのことはやるつもりだ」
「いやー、その言葉が聞けてよかったっす! ウチもバンバン協力するっすから、ガンガンこき使ってくれていいっすからね! ナギピッピ!」
そう言ってレフィーは、バンバンと僕の肩を何度も叩いた。
「痛い痛い痛い!?」
「この程度で何言ってるんすか? ガリガリだし貧弱虚弱っすねー!」
僕が冗談を言っているのだとでも思ったのか、そう言って彼女は笑い飛ばしたが、鍛えられているだけあって本当にモンゴリアンチョップばりに痛い。
「やめて……鎖骨が折れる……腕が上がらなくなる……和菓子が作れない……」
「迫真の演技っすねー! あっはっは! そぉい!」
バキャリ!
「アッ――!?」
この後レフィーから謝罪の言葉と回復魔法をかけて貰った。
まほうのちからってすげぇ。




