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異世界甘味処 木の実  作者: 兼定 吉行
重圧、苦悩、終局
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迷い

 どうしても拭えない不安を覚え、翌日店を手伝いにやってきたエルシーやミルキー達にも試食して貰った。

 すると……。

「秋の涼しさが恋しいこの時期に、ぴったりのお菓子だね! お兄ちゃん!」

「ああ、貴さm……店長は流石ですね。お菓子に関しては剣聖……ナイトロードレベルです」

……ミルキーお前今貴様って言い掛けたな? 

 あと僕が騎士の称号を持ってることは秘密のはずなのに、チェルシーならともかくお前が知ってるのは設定的におかしいだろ? 

……まあいい。

 フィーレも続く。

「これメチャクソ美味いっすねー! マジ卍。あとメッチャカワイイんでぇ、こーゆー髪飾り作ってくれますー?」

 知らん、自分で作れ。

……とまあ、こんな調子で紅葉の練り切りは見た目を含め帝国下劇団三人衆からも大絶賛。

 エルシー曰く「どこの国の王様に出しても恥ずかしくない品だね! 例えばサラーガのイズ王も、きっと喜ぶよ!」とのことだ。

 やけに具体的な発言。

 身分を隠す気あるのか? と疑問に思ってしまうがそれはさておき、エルシー……つまりエリュシカからのお墨付きもいただいたことで、早くも会談の茶菓子が決まろうとしていた。

……なのに、なのにだ。

 僕だけがまだ、納得できていない。

 考える時間も、試作する時間もまだある。

 ここで尚早に決めてしまうのは、手を抜いていることに他ならないんじゃないか? 

 そう思えて仕方なかったのだ。

 この間の高官達をもてなす以上に、今回は国の命運がかかった大仕事。

 ならばあの時以上に相手のことを知り、相手のことを考えるべきではないのか? 

 所詮今僕がやっていることは、教科書通りのことでしかない。

 もっと言えば、手抜きも同然。

 そのことに心のどこかで、気付いていた。

 誰が気付かずとも、自分だけは気付いていたのだ。

 そして気付いてしまったのなら、もう無視は出来ない。

 見て見ぬフリは……自分自身の心を騙すことは出来ないのだ。

 店の営業も終了し、夕食の最中のこと。

「……やっぱり、会談では違うものを出そうと思う」

 正直にそうエレミーに打ち明ける。

 すると彼女は別段驚いた様子もなく、こう言い放った。

「……ナギならそう言うと思った」

「えっ」

「なんか悩んでたし」

「……気付いてたの?」

「顔に書いてある」

「……そっか」

 いつも眠そうに見えて、時々今みたいに鋭いところがあるんだよな……。

 エレミーは続ける。

「あー、あとインサイドアドリーム《夢で逢えたら》で採れる魔力量が減ったから、悩みかなって思った」

「な、なるほど……」

 夜の性活でバレバレだったと……。

 これは敵いませんなぁ……。


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