ナイッスー
帰宅するなり僕は、頭よりも先にまずは手を動かした。
そこで白餡とこなしを作ったところで、ようやく思案する。
難しく考える必要は無い。
練り切りで季節のものを出すことまでは決定だ。
秋も近いことだし、季節を少し先取りして、紅葉を模したものを出そうか。
……でも、本当にそれでいいのか?
そんなに安易に決めてしまって……。
……迷うな。
作らなきゃ何も始まらない。
時間もあまり無いことだし、まずはやってみよう!
シソやクチナシ、緑茶葉の粉末を使って赤、黄、緑にこなしを着色。
そのそれぞれの色で白餡を包んだ。
赤いものは三角棒を使って四つの大きな切れ込みを入れ、まずは猫の手のような形にするニャ。
その猫の手の指の部分を、背と腹を左手の人差し指と親指で挟み、気持ち扁平させながらも、右手の人差し指と親指を使い、左右から摘むことで先を尖らせたニャ。
それを五回繰り返すことで葉の先端の尖り具合を表現。
最後に葉脈を三角棒を軽く押し付けて作れば、もみじの完成だ。
緑色に着色したこなしも同様の工程を経て、青い楓が完成する。
そして黄色いこなしは丸く伸ばし、二回表情を付けながら折れば、それだけで立派なイチョウが完成した。
黄色いイチョウ、赤く染まったもみじ、青い楓。
この三つで、十分に秋を表現した作品となる。
特にまだ青い楓と黄色いイチョウを混ぜたことで、色合いのバランスの美しさだけではなく、紅葉の変化も表し、季節の移り変わりが一皿……つまり一目見て視界の中に収められているため、分かりやすく感じられるという狙いもあった。
出来上がったものを見たエレミーも「あ、秋の山だ」と、僕が誘導した通りの反応を示す。
「これが今度の会談のメニューとして考えた最初のお菓子なんだけど……どうかな? エレミー」
「秋って感じで綺麗だしー」
「うんうん」
「どれもおいひぃーふぁらいいとおもふー」
「おいひぃ……ん?」
見ればエレミーはまだ「よし!」も出していないのに、練り切りを三つとも全て平らげていた。
「……いや、もっと味わえよ」
「今あじふぁってふよー」
「今味わってるよじゃないよ!? 目でも見て味わってよ!?」
「……わふぁっふぁ」
「へ……? わかった……?」
そう言って彼女はあーんと口を開け、中身を皿に出そうとしたので急いで口を塞いでやる。
「おバカ!」
「らっふぇ、ナギがー」
「だってナギガーじゃない! もう口に入れちゃったんだから仕方ない、出したところで目で見て楽しめないでしょ? ただのキラキラだよ?」
「そらねー」
何がそだねーだよ。
ウエイトいいよーラインは完璧ーってか?
ィヤーーーップ!!
ウォウォウォーーーッ!!
ユーミー!
ナイッスー!
……まあどうやらエレミーは、本心からこの和菓子を楽しんでくれているみたいだ。
でも……。




