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異世界甘味処 木の実  作者: 兼定 吉行
重圧、苦悩、終局
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召喚

 常駐勤務のフィーレ。

 来られる時にだけバイト感覚で店を手伝ってくれるミルキーとエルシー。

 彼女達のお陰で木の(このみ)では新たなメニューとして大福餅や、きな粉、ゴマ、小豆餡のおはぎ。

 それから餡団子は小豆餡だけでなく、白餡も選べるようになった。

 ちなみにおはぎやお団子は、店員総出で作っている。

 お菓子作りがしたかったというだけあって、幼いながらも一番筋がよく、整った形を機械のように幾つも作っていくエルシー。

 変に個性を出そうとして、何か余計なものをチョイ足ししては僕からやり直しを食らうフィーレ。

 不器用で細かい作業では使い物にならないが、米粉を捏ねる作業や餅つきに特化した脳筋女子ミルキー。

 自分が食べたいサイズで、一回りおはぎや団子を大きく形成してしまうエレミー。

 問題児ばかりだが、その内まともになっていくだろう……いや、そうであれ。

 更には紅茶ではなく緑茶の提供も始めたため、より他店舗との差別化が顕著となり、ここでしか楽しめない味と空間を求めて客足は増加。

 おまけに単純に人手が増えたことで、営業終了時間ギリギリまでなんとか商品を切らせずに提供することも可能となっていた。

 これによりわざわざ遠くから足を運んでくる客達に、品切れの悲しい思いをさせずに済んでいる。

 同時に客達の悲しむ姿を見なくてもよくなったことで、こっちの精神衛生的にもありがたい。

 そして一番心配していたエルシーの身バレについてだが、意外なことにその正体に気付く者は一人も居なかった。

 それどころか、誰も気にも留めていない。

 まさか自国の女帝ともあろう者が帝都の外れの街の、それも郊外の甘味処にお忍びでお菓子屋さんごっこをしに来ているなどとはよもや思いもしないのだろう。

 そういったバイアスに加え、ハーフツインテールの印象の強さゆえか、なぜかエリュシカだとはバレずに済んでいた。

 それになんと言っても、女帝モードの時には見せない満面の子供らしい笑みと、無邪気な振る舞いが人々の認知や認識を混乱させているのだろう。

 何もかもを知っている身としては、とてもおぞましい光景であるのだが……。

 こうして木の(このみ)が新たな体制をとり、営業力を強化してから早くも二週間が過ぎようとしていた。

 充実した毎日を過ごしていた僕ら。

 しかしある時フィーレが、レフィーとしてこんな言葉を告げる。

「あーナギピッピにエレピッピ、明日辺りお店は臨時休業にして帝都に行って貰っていいっすかー? なんか姫殿下が至急話したいことがあるらしくてー」

「姫殿下が? わかったよ」

……エルシーめ。

 昨日店へ手伝いに来た時にでも、用件を言ってくれたらよかったのに。

 仕事とプライベートはしっかり分けようってことか。

 しっかりしてるなぁ……。

 それにしても至急話したいことって、一体なんだろう……。

 また他国の高官をおもてなししろとか言われるんだろうか? 

……正直やだなぁ。

 やっとちょっと前に、色々悩む生活から解放されたばかりだっていうのに。

 でもまだ、そういう話をされるって決まった訳じゃないじゃないか! 

 もしかしたら、ただ単にパーティへのお誘いとかかもしれないしね! 

 そんなことを考えていたところに、エレミーが話しかけてくる。

「ナギ、またお城で美味しいご飯食べれるな」

「そうだね! レッツパーリー!」

「パーリーイェー」

「パーリーピーポー!」

「パリピ私も混ぜてー」

「酒飲めないし踊れないけどな?」

「食欲は負けない」

「イエー!」

……だが、悪い予感とは得てして当たるもの。

 それも、考えうる以上に最悪な事態が僕に降りかかる。

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