帝国下(か)劇団
僕がドン引きを越えて怯えているにも関わらず、さすがは姫殿下。
鋼鉄のハートで途切れることなく演技を続けた。
「実は私ね、お菓子は食べるのも作るのも好きでね、将来はお菓子屋さんになりたかったの! だから凄く嬉しいの!」
「あ、ああ、そうですか……」
「でもね、たまにお腹痛くなっちゃうからね、ミルキーと一緒にお店を休む時もあるの」
「公務ですよね? わかります」
「そういう時もフィーレは居るから安心してね!」
「まあ本来の護衛兼お目付け役ですもんね」
「ちょっとお兄ちゃん何言ってるかわからないの! あとなんで丁寧語なの?」
「いや、そりゃ姫殿下ですし」
「姫殿下じゃないの! それに私達はただの店員だから、丁寧語じゃなくていいんだよ?」
「ええ……」
また面倒なことに……。
でもチェルシーとは全く違った、このナチュナルなエルシーとしての振る舞い。
さっき言っていたお菓子屋さんになりたいってのは、エリュシカの本心なんじゃないか?
だから別人のフリまでして、この店で働こうとしてるんだとしたら……。
いや、別人のフリですらない。
エリュシカの方こそ芝居で、こっちのエルシーこそが女帝となったことで閉じ込めていた、本当の性格なのかもしれない……よな?
……なくはない。
よくよく考えればこんな幼女が、あれだけしっかり女帝をやっていることの方が異常なんだ。
女帝エリュシカの方に慣れているから違和感があるだけで、こっちの方がよっぽど年相応に子供らしい。
はてな? と言った顔で、こちらを見上げるエリュシカ。
後ろのレフィーとチェルシーも、察しろと言わんばかりの目を向けてくる。
そういう事情があるなら、僕もこの店の中でだけは彼女をエルシーとして扱おうか。
「……わかったよ。エルシー、フィーレ、ミルキー、三人とも明日からうちで働いてくれ」
「やったー!」と、喜びを分かち合う帝国下劇団三人衆。
これだけ人手も増えればメニューだって増やせるし、Win-Winだもんな。
「あ、あとミルキーは今すぐその高圧的な口調を改めるように」
「ぐっ……はい……」
……よしよし。
ちなみにエレミーは何も疑うことなく、帝国下劇団三人衆とすぐに打ち解けるのだった。
「エルシーはマブダチ。ズッ友」
「やったーうれしー! エレミー大好きー!」
だ、そうだ。
……純粋かよ。




