さいつよにして、さいかわ
「えっと、ヴァンパイアが最強の夜の亜人種族じゃなかったでしたっけ……?」
「まあそーゆー説もある。でも多分私がさいつよ」
なんだろう、頭痛と眩暈がしてきた……。
「そもそもの僕の認識が間違っていたらそう言って欲しいんだけど、サキュバスの特殊能力って戦闘に使えなくない?」
……そう、名実ともに夜の支配者の種族であろうヴァンパイアならともかく、トリッキーな印象の強いサキュバスではどうしてもこの場を切り抜けられるイメージが出来ないのだ。
しかし、エレミーは自信満々に言う。
「そんなことはない」
「……本当に?」
「いいから、ナギは黙って見てて」
彼女は潤んだ物憂げな瞳で「んっ」という湿った声を出し、いやらしく濡れたような唇へと人差し指を持っていき歯を立て、悶えるように腰をくねらせ尻を突き出した。
するとこれまで以上に強いジャコウの香りが、エレミーの全身から噴き出すようにして辺りを包み込んだ。
うわっ!?
これがサキュバスの、本気を出した魅了の力か!?
まるで空気が桃色に染まったかのように見える程の色気だ……。
その香りに当てられた刺客達は面白いように次々と、腰砕けになってその場に崩れ始めた。
「おおっ!」
僕はその圧倒的な光景に、そう感嘆の声を漏らす。
どうだと言わんばかりに、張り裂けそうな程パンパンに膨らんだ乳房を張り出し、エレミーがドヤ顔を浮かべた。
「これがサキュバスの固有スキルの一つ、フェロモンパフューム《恋する遺伝子》」
「な、なんてポリリズム……いや、チョコレイトディスコ!? 夜限定とはいえ、とんでもなく脅威的なスキルなんだ……」
「凄いだろー」
「うん、今までバカにしてごめん」
「わかればいい」
「……好き」
「ナギまでチャームに掛かってどうする。バカ」
「ご、ごめん!? 免疫があんまりなくて……」
……そうなのだ。
完全にチャームの巻き添えを喰らって、もうずっとさっきから僕の頭はクラックラ。
立っていることすらやっとの、腰も足もガクンガクン状態なのだ。
……まあ、アッチはヤバイくらい元気に勃っているんですけどもね、うふふ。
呆れ顔で嘆息したエレミーが、こちらを侮蔑に満ちた顔で一瞥だけして言う。
「まったく、これだから童貞は……」
「な、なぜそれを!?」
「語るに落ちたな」
「やられたー!」
くそ、チャームのせいでこっちの知能まで落ちてるみたいだな……。
今脳内メーカーで僕の頭を覗いたならば、間違いなくS〇Xの三文字に埋め尽くされていることだろう。
ってそんなことより――!




